【深海】
忘れ去られた深海の中
少女がそっと手を伸ばす。
翼のようにしなやかな白皙の腕が蒼を纏う。
優しい波にさらわれて、僕は海底と同化する。
潜り込んだゆりかごの世界 僕は大地に背を向けた。
重力が刻を飲み込んで水圧の中に消失した。
海中に響くアルペジオが螺旋階段を形作る。
音の粒子は光を放ち 歩みの世界を彼女に示唆する。
少女は陽射しに導かれ大地を目指して海を舞い
いかなる白より嫋やかに彼女は太陽と同化した。
あぁ、待ってくれ!!君よ、行くな!!!
透明を僕に注いでくれ!!!!
ファウストの声が響き渡り
僕はゲーテを了解した。
僕が胎児の真似事をするなか、彼女は母を抜け出した。
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