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#16 おじさんストレス発散する

鬱憤晴らしには古今東西多様な形態があるはずだが、おじさんにとって最も効果的なストレス解消法はおしゃべりである。おじさんは非常におしゃべりで、2~3時間なら相手が地蔵でもしゃべり倒すことができる。しかしながら当然それは無為であり、やはり相手が欲しくなる。友人たちも年々時間が取れなくなる中、数時間トークするさながら番組収録のような時間を作ることは難しい。無料だし。そう考えると、中年男性がキャバクラにはまる心理とはしゃべる相手のいない悲哀なのであろうか。

続いて有効な手段は料理である。おじさんはもともと料理が好きだが、近年は気が狂ったように新たなレシピを開拓し振る舞う予定のないパーティー料理を覚えたりしている。これも無為ではあろうが、料理を学び、食事が完成し、なにより成果物を食べて楽しめるというのはなかなか良い言い訳になる。食欲と知的好奇心、加えて節約やダイエット、複数の欲求を満たすことができる。その上、毎日チャンスがあるのがありがたい。

おじさんは作り置きをよくする。大量に調理することはストレス解消に多大な効果があり、特に副菜は日々の食卓を健康的かつ満足度の高いものにする。

今回の作り置きは自家製チャーシュー、鶏ハム、鶏むねせんべい、もやしとニンジンのナムル、エリンギの梅かつお和え。最近ビタミンB群とタンパク質が不足気味のおじさんは買い物の都合と合わせてこういったメニューを選択した。

チャーシューは#6のゆで豚をタレに漬けるだけ、鶏ハムはチャーシュー用の豚と同じ鍋に時間差を漬けて茹でる。鶏むねせんべいは時間がかかるので先にレンジへ、その間に野菜たちと調味料を準備し、それらをレンジ加熱して和えれば完成。

ダラダラやりながら所要時間はおよそ90分。これで1週間豊かな食生活を送れると思えば安いものである。待ち時間に洗い物、片付け、雪かきを行っているので自分がスーパー人間になったと錯覚して自己肯定感の高まりを感じる。しかもコンロ上にはあと3食分の野菜スープがあり、冷蔵庫には先日作り置きした切り干し大根の煮物とひじき煮がある。もう盤石である。

コーヒーを淹れて一息つきながら、ストレスのない脳でストレスについて思索するおじさんである。


ストレスとはなんなのか


おじさんはおじさんなので、生まれた頃からテレビで「ストレス社会」という文言を浴びながら育った。いわばストレスネイティブである。おじさんでさえそうなのだから、年少の人間は全員ストレスネイティブなのだろう。

いざ「ストレスとはなにか」などという既成概念を言語化しようとすると大づかみで漠然としたものになりがちで、しかしWEBでさっと調べてわかった気になるのも危険である。いつだって真理にたどり着くには自分自身が必要であり外部情報はその補助に過ぎない。

おじさんの仮定としては、ストレスとは「感情の排泄不全」であると見なしている。

感情とひとくちに言ってもその発露は多岐にわたり、喜怒哀楽・好き嫌い・恐怖・安堵・驚嘆・感傷・絶望・恥辱など細分化していけばきりがないほどだが、それらはすべからく体内から発生し体外に露出しようとする。多くは言葉や動きによって。

すごく喜んでいるのに、それを表に出してはいけない状況となるとその喜びは押さえつけられ出どころがない。排泄を我慢している状態のように、感情を押さえつけるのには多かれ少なかれエネルギーを浪費し心身に疲れが生まれる。これが負荷(ストレス)となるのである。

世間のストレス解消法

数年前に「涙活」という言葉が散発的に流行した。泣くことでストレスを発散しようという発想で、おじさんはなるほど、たしかに有効そうだと膝を打っていた。「涙ソムリエ」とかまで行かれるとわけがわからないが。舐めるのか? 怖いな。

そして近年発見したのが「ものを好きに壊せるサービス」である。室内にあるもの(ガラス・機械・食器・エトセトラ)を投げるなり蹴るなりハンマーでぶっ叩くなりしてバキバキにぶっ壊してストレス発散しよう! というサービスである。

これらに共通するのが「感情を解き放とう」というアプローチで、サービスとして成立するまで需要があるということは解き放たれずに沈殿している感情がそれだけ普遍的に多いということでもある。前者は感動や悲哀、後者は怒りや衝動を発散していると分類できる。

ストレス解消としてポピュラーな「カラオケ」も、歌によって叙情な道筋を作り大声を出して開放するという点で同じ枠組みに分類できるので、この仮定は多少の有効性があると思われる。しかし急ぐ結論なんてものはゴミ同然なので、今後も時間と手間をかけて思索していく。これは贅沢なストレス解消法かもしれない。また仮定が生まれた。検証が必要だ。

おじさんは「なにか考えたい」「なにか作りたい」という欲求が尋常ではないので、最初に述べた2つの方法を取るのである。

ここまで読み上げた奇特な方は、自分のストレスの正体を探り、それに適した解消法を探してはいかがか。


さておき、おじさんはスパイスを駆使してストレスを解消する。


おじさんの大根ドライカレー


湯気がすごい

材料(2食分)

大根    200g
トマト缶  0.5缶
玉ねぎ   0.5玉
合いびき肉 100g

にんにく  小さじ1
生姜    小さじ1
バター   大さじ1
ソース   小さじ1
ケチャップ 大さじ1
カレー粉  大さじ1
カレールー 1片


作り方

1.玉ねぎと大根をみじん切りし、透き通るまでバターで炒める。
2.にんにく、生姜、トマト缶、挽き肉を加え火が通るまで炒める。
3.残りの調味料を入れ、水分を飛ばしながら好みの粘度まで炒める。

※ゆで卵があるとなお良い。


大根ドライカレーについて


やってしまった。おじさんは北の民にもかかわらず油断し、玄関に置いてあった大根を凍らせるというミスを犯した(北の大地では冷え込む場合は野菜を冷蔵庫に入れる)。

半端に凍った大根は内部がスポンジ状になり、味噌汁やおでんにするには不向きな状態。しかも大ぶりな大根のため量が多く処理に困った。「そういえば大根を入れたドライカレーがあった気がする」と思い、カレー粉の誤魔化し力(ちから)への信頼もあって作ってみることにしたのだ。

これがびっくりするほど美味しい。なぜだ。大根を入れただけでドライカレーが美味しくなるなんて聞いたこともない。なんだお前。大根がかさ増しとカロリーオフ、食物繊維の役割だけじゃなく美味しさまで担保してくれるのか。働きすぎじゃないか。

おそらく挽き肉の脂肪分やこってり感を大根が中和してくれているのだと思うが、それにしたって理屈抜きにうまい。おじさんはおじさんなのであまり使わないようにしていたが、リピ確定である。ぴえんはもう逆に使えない。

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