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四月の教会

思い出してみると、今まで冠婚葬祭の時くらいしか宗教と関わることはなかった気がする。それも形式だけで。

宗教に関する歴史や建築、思想や哲学には興味があるが、宗教そのものには正直なところ関心は無い。
旧約聖書も読んだことはある。読み物としては非常に面白いし、映画やアニメに引用されるような節は印象的で覚えている。


さてそんな自分が、まさかミサに行くことになるとは思いもしなかった。


それはイースターの週末であった。

普段と違いスープやパンといった軽めの食事に理由を尋ねると、サンタだから肉は食べないのだとマリアが言った。
夕方になり生まれて初めてミサに参加したが、町の小さな教会に人集りができており、中に入りきれずに外で歌や朗読を聴いて終わった。

外まではほとんど聴こえていないのだが、バウレスの住人たちは皆一応に外に立って教会の中を覗き込んでいた。

先日会ったマリアの友人(バウレスの市長)に、日本人もキリシタンなのかと尋ねられたが、答えようとする前になぜかマリアが「そうそう」と返答していた。


こうして皆の日常に、知っている日本人として存在できていることを嬉しく思った。
このコミュニティーの中にいることが重要なのだ、この村のカカオを使うのだから。


その日、教会付近では子供たちが夜遅くまで遊んでいた。

次の日はオムレツが出され、マリアママはまたサンタだから肉は食べないと言った。

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