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映画『メランコリア』と破滅願望 ラース・フォン・トリアーが描く鬱の世界

一番好きな映画監督の一人がラース・フォン・トリアーです。
監督にあまり詳しくない人でも、とりあえず、「ダンサーインザダーク」を撮った人と言えば伝わるのでしょうか。

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どれだけ「最低最悪の鬱映画」だと言われようと、僕はマジで愛しています。

人間の悪意(と光り輝くような優しさ)の描き方が素晴らしく。暴力、残虐描写も過激。容赦の無いハードな物が多いのです。
そのあまりの陰鬱さゆえに、「鬱映画監督」の烙印さえ押されてるのです。
映画撮影後に精神に不調をきたす女優も多いのですが、それでも多くのスター達が志願してくるのだとか。

僕自身、鬱病診断されたことがあるのですが。感性的にも一番近い作家がラースフォントリアーなのかなと思う。
実際に似ているかどうかはともかく、目が離せない。

僕が初めて見た彼の作品はキルスティンダンスト主演の「メランコリア」でした。

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これが僕のラースフォントリアー初体験です。
オープニングでは、壮大な映像で始まり、宇宙や惑星が迫ってくるイメージが流れるのですが。
本編は物語的な起伏は少なく。
正直、ちょっと退屈を覚えてしまいます。
うつ病の女性が周囲から蔑まされているという映像が延々と続いていく……。見ていてあまり気持ちの良いものではない。

しかし、ある段階を超えると、映画の雰囲気が変わってくるのです。俗っぽい物語から一転。
「メランコリア」と呼ばれる惑星が地球に迫ってきていることが判明するのです……。
つまり、世界の終わりそのものが迫って来ている。

当然みんなはパニックに陥ります。自分のことを疎んできた、義兄が絶望のあまり、自殺してしまっている。姉も、死の恐怖から取り乱して憔悴しきってしまっているのです。
それでも、元々強い破滅願望があった、ヒロインだけは精神的に救われていくのです。情緒不安定だった彼女が、しっかりした言動を取るようになってくる。
そして、縋り付くように救いを求めてくる姉を、冷たく突き放してしまうのです。それは、かつて日常で行われていた光景の歪んだ再現でした……。

正直、精神障害者と健常者の立場が逆転していく……という解釈はあまり乗れなかったのです。
彼女が掛け値無しの狂人だからこそ、救われてるわけで、僕だったら途中で怖くなると思う。
正直言って、完全には感情移入出来ないキャラ。

それでも、破滅的な映像の美しさには、もうどうしようもなく惹かれてしまうのです。
全てが終わって、その先に救いがある……。
うつ病という頭の中の地獄を消し去るためには、世界が滅亡するしかないのです。それが例えみんなを巻き込むものであったとしても。
そして、その願いが叶った時の静けさ……。それはきっと監督の願望なのでしょうか。

そのラストシーンにものすごく癒やされるのです……。本当に心の底から愛してる……。そんな幸福な映画が「メランコリア」なのです。

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