出不精旅日記 台湾5日目 嘉義のフェス、そして台中へ
花畑で遊んでいたら、美しい歌声が聞こえてきました。
急いでステージの近くへ。
立ち見です。
熱心なファンが前方をぎっしり固めていて、近寄れませんね…。
あ、でも隅っこに入り込めました。
シンガーソングライターの王さんの声はお花畑の中で聴くのにピッタリ。
自然体で心地いいのです。
抑制のきいたギターもすごく上手。
MCもお客様との間合いを臨機応変にとっていて、なんというか「呼吸上手」な方なんですね。
彼女がリラックスしているから観客ものびのびと楽しめる。
その空気を察してか、屋台の食べ物に夢中になっていた人たちもわらわらと集まってきて、すごい人だかりに…。
ずっと聞いていられるな…と思いましたが、大盛況のうちに彼女の出番は終わり。
次は夫が楽しみにしていたバンド「溫蒂漫步」です。
こちらも隅っこスペースを確保。
溫蒂漫步さんもステージ中央はファンが固めていてとても入り込めない、からですが、
正直に言うと私は人混みがちょっと苦手で、軽いパニック障害というか、子供の頃から混雑が苦手なのです(HSPと言われることもありますが、よく分かりません)。
なので少し空いたところで満足して見物します。
ちなみに
「集団行動がきわめて苦手」なので、こういうバンド活動をしている人たちも「すごいな~」と感心します。
大人数での活動は、私にはとても無理です(だから朝はライター、昼からは家族経営の小さな蕎麦屋で働いているわけで)。
いやまあ、溫蒂漫步さんも
そこを感心されても(^▽^;)
と思われるでしょうが…。
あ、はじまりました!
何層にも重なった音が響き合い、それが風に運ばれ、自然の中で聴くとなんとも言えない広がりが生まれます。
ライブハウスでも確実に盛り上がると思いますが、ここで聴けるレア感!
バンド内の連携も緊密で、ハーモニーに独特の一体感がありますね。ここちよくうねって、クルーヴィ!!
この写真だとよく分かりませんが、照明も細やかな工夫があって、見ても楽しいステージです。
静かめの王さんの時と違って、音量があるせいか、どさくさに紛れて割り込みが多いです(笑)。
子供を肩車したりするので、後ろが見えなくなるって(笑)!
だけどなんだか微笑ましい!
すごく盛り上がって、観客は野外ライブならではの音を全身で楽しんで、パフォーマンスが終わりました。
夫も大満足だったようで、満面の笑み。
この人は音楽が栄養源の生き物なので、これでしばらくは元気でしょう。
できたら余韻を味わいつつ屋台をぶらぶらしたいところてすが、電車の時間もありますからね…。
私達はバスの列に並び、イベント専用バスで嘉義駅へ。
駅前で荷物を無事回収して(お兄さん、一瞬疑ってごめんね!! ありがとう)。
台湾鉄道で一路台中へ。
台中は相変わらずの賑わい。
民泊を予約してあるので、そこを探します。
念のため駅から電話しましたが、出てもらえませんでした。
タイミングが悪かったのかも?
まあ今まで何回も行っている市場の方向だし、迷うことはないはずだけど…。
とことこ歩いていきます。
民泊のある場所は街中から少し外れたところ。
夜に、街灯があったりなかったりする薄暗い路地を歩くのはちょっと怖いな…。
ネズミもいるし…。
「うーん、このあたりなのは確かなんだけど、というか多分ここなんだけど、開いてないね。民泊だから看板もないしね。
この時間に着くことは伝えてあるんだけど…。
お金も振り込んでいるし、口コミの評判もすごくいいんだよ。おかしいなあ」
私も付近をキョロキョロしてみますが、真っ暗な家ばかりで人の気配すらしません。
かなり離れた場所に電気のついたうちがありますが、
そこの方に聞いてみるのは流石に迷惑だし(夜ですしね)。
第一、民泊はホテルと違い近隣の人もご存知ない可能性があります。
「インターホンすらないからなあ」
電話しても通じません。
えーーっと、これは…詐欺の疑いはないでしょうか?
お金を振り込んでいて、到着時間も了解しているのに、そして明らかにその住所のところに来ているのにドアは閉まっているし(というかシャッター? みたいのが閉まってる)、真っ暗だし、人の気配は全くなく、電話は通じず…。
「うーん、困ったな。荷物重いよね? 」
重いです。
「お腹空いたね?」
空きました。
とにかく近くのファストフードに入ろう、ということで多少お店のあるエリアに戻ります。
途中にきれいなホテルがありました。空いているか分からないけれど、場合によってはここに相談しないといけないかも…。
クレープっぽい外見のピザを出している店がありましたので入ります。
ここは夫の中国語がなぜか全然通じなくて、英語でオーダー。
注文が入ってから焼くので、あつあつです。
「あ、美味しい(≧▽≦)! そっちも食べさせて」
夫はいつもの調子ですが、私は不安と疲れからちょっと、いやかなり頭に来ていました。
なんで今、ピザの味が分かるかな!?
詐欺にあったというのに、振り込んだお金がパーになり、これからまたホテル代がかかるというのに、
どうしてそんなに呑気なの?
台中中(たいちゅうじゅう)のホテルが予約でいっぱいの可能性もある。
そうしたら最悪、また駅のベンチで一晩明かさなくてはいけないかも。
いや、駅は終電が終わったら閉鎖するだろうから…野宿?!
いくら台湾が暖かいと言っても今は冬だし、たとえ夏でも野宿は絶対イヤ!!
この際、空いているならどんな高級ホテルでも構わない、とにかく部屋を押さえてもらいます(もちろん「夫の」ポケットマネーで)!!
そう心に決めると、私はねちねちとお説教をはじめました。
「あんたそもそも民泊を信用しすぎ」
「ネットの書き込みや星なんて買えるらしいよ(私も詳しくないけど) 」
「こうしているうちにもどんどん時間が経って、部屋は埋まっていく(高雄でもそうだったでしょ)。さっさと方針を決めないと」
「ああいらいらする! 疲れた! もう台南に帰りたい!!(我ながら意味不明)」
夫は、私の説教と愚痴を一通り聞くと、大きくうなずき
「分かった、住所は合ってると思うし、もう一回だけ見てくる。それでだめなら別のところを探そう」
食べかけのピザを残して、再び民泊方向に歩いて行きました。
「お皿、片付ける?」
という店員さんに
「まだ食べるの。悪いけど、もう少しいさせてね」
というと
「全然かまわないよ。むしろいてくれた方が嬉しいかな?」
ああ、そうなのよね。
外で待っている人がいるならともかく、営業時間中は店が閑散としているより誰かいてくれると嬉しいよね。
私も蕎麦屋だから分かるよ…ということを英語で話す元気もなく、ぼんやりと夫を待ちます。
夫は私がどんなにキレたり、ねちねち説教しても、
「キレたりねちねちしたこと」
に怒ったりせず、
「泊まる場所がない」という事実にのみ対応してくれる。
考えてみれば、素晴らしい性格です。
なんか…すごく偉いな…。
打たれ強すぎるから同じ間違いを繰り返すのでは…と思うこともあるけれど、
トラブルの時に冷静でいてくれるのは本当に有難いことだ…。
あ、動き回っていたからすっかり忘れていたけど、今日は結婚記念日だった!!
やれやれ、そんな日にピザを片手にキレてる私って一体…
そこに夫が戻ってきました。
「入れたよ!!
ダメ元で物陰にあるなんかのスイッチを押してみたら、それがインターホンだったんだ!
民泊のおばさん、親切だった。俺の携帯に電話もしてくれたらしいんだけど、うまく通じなかったったって。
泊まれるよ。荷物持ってい行こう!!」
ピザを完食し、店員さんにバイバイして店を出ると、道路におばさまがいてこちらを見て手を振っています。
「あの人だよ、英語もしゃべれるって」
おばさまはにこにこと挨拶してくれ、自分でデザインした洋服屋を営みつつ、空いた部屋で民泊を経営していると自己紹介。
今日は他の泊り客がいなくて、だから私達が来るまでシャッターを閉めていたそうです。
「日本も行ったことあるわ。大好きよ!」
夫は
「シャッターが上がった時、本当に嬉しかったんだよね。
スターウォーズの『ジェダイの復讐』でR2D2とC3POがタトゥイーンのジャバザハットのところに行くんだけど、ジャバの宮殿に入れなくて、C3POは諦めて帰ろうとするんだけど、帰ろうとするとシャッターが開くんだよね。
まったくあれと同じ気持ちだったよ…」
入ってみると、私達の部屋は驚くほど広くて天井が高く、清潔。
これは…入口のインターホンが見つからない以外は、大当たりなのかも…。
夫は
「あ、お風呂もあるね。お湯をはって…。その間に明日の天気を確認しよう」
テレビをつけようとしましたが、つきません。
「リモコンかな?」
夫はおばさまを呼びに行きました。
彼女は新しい電池を持ってきてくれましたが、やっぱりつかない。
おばさま「うーん、困ったね。あんた直せない?」(中国語)
夫「できるかなあ」(中国語)
夫は電池じゃないなら配線かなあ…とごそごそやっていて、しばらくするとテレビがつきました。
おばさま「助かったよ。じゃあ、下の台所の使い方を教えるよ」
2人は階下に降りて行き、私は疲れがピークでうとうと…。
「あ、でもお風呂は入りたい。なんとしてもお風呂に入らないと…」
お湯がたまるまで少し眠り、少ししてからお風呂に入ります。
あ~、これは、あ~
天国かも…。
お風呂から上がったら興奮した夫が戻ってきました。
「下のキッチンも自由に使っていいって。食器も貸してくれるみたい。
ここは、いいね!!
今回は時間がないけど、次回もここに泊まって、市場で食材を買って調理しよう。台湾の食材でカレーを作りたかったんだよ。おばさんが安い市場も教えてくるっていうし…」
他にも何かいろいろ言っていましたが、このあたりから私は寝ていたようです…。
(つづく)
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