スキゾフレニアワールド 第三十八話「結婚」

 僕は涼子を守り抜く。そう決めた。この先何が有ったとしても、この気持ちに変わりなど無い。仕事も何もかも順調そうだし、其処に他意など無い。最近のマイブームは詩人の戸田智裕らしい。まあ細かい事はどうでも良くて、涼子も僕のラブコールを快く受け止めてくれる。こんなに嬉しい事は無い。有難う、涼子。傍に居てくれて。僕と出会ってくれて。この世界に生れ落ちて来て。総ての目に映るものが僕等を祝福する様で成らなかった。此の世界は愛で出来ていて美しい。僕は彼女の為に出来る事なら何でもする、当たり前の事だ。此れから先何が起ころうとこの気持ちだけは絶対変わること無い事実であり真実であり明白であり確信だ。僕は彼女の事を想えば思う程強くなれる。何時しか時を一緒にする時間も増えてお互いが愛を欲していた。擦れ違いの日々だって勘違いの日常だって僕が僕である以上大丈夫なのだ。もうそういう系だ。そうだろ、涼子? 毎夜寝る前に僕は涼子を想ってる。障害なんて二人で乗り越えて行こう。精神障害者? 統合失調症? 弱すぎる。そんな物ちっぽけなんだ。例え矢が降って来ようと地震でこの大地が崩壊しようとこの心の強さに敵う物など存在しない無なので有る。僕の心は涼子で出来ている。壊せる物ならどんな手を使ってでも壊して見せてみろ。僕は屈しない。愛の強さこそ無限なんだ。僕は涼子の誕生日である二月二十三日にプロポーズをした。ある真冬のとある高級レストランでの事である。背伸びしたスーツと大人びた佇まいと雰囲気で涼子をエスコートした。その為お財布には手強いダメージを受けたけど優雅な新調したての真赤なドレスを着た彼女は優しく微笑んでくれた。そして僕が差し出した給料三ヶ月分叩いて買った結婚指輪を填めてくれた。その光景は彼女に似合っていて最高の出来事だった。有難う。僕は嬉しい。君が居るだけでハッピーなんだ。言葉にすれば何て陳腐な物なんだ、と自嘲してしまう。まあ、何はともあれ、次は御両親に挨拶かな? 良かった。本当に良かった。翌日二人で婚姻届を役所に出して愛を誓った。結婚式? そんな大金無いけど、細やかな幸せならポケットから溢れ出す程持ち合わせている。僕等は新しい門出の祝福を何時迄もその温もりと光の中で只浴びていた。段々と彼女の体も上り調子になって来たし、言う事無いかな。夫の僕がしっかりしなきゃ。うんうん。仕事なんて為せば成る。遣れることを遣るだけじゃないか。それが人生ってもんだろ? そう思うだろ、あんたも。

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