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雑記6 最近観たホラー映画6ーー「フェノミナ」「13日の金曜日」ーー

 ダリオ・アルジェント監督「フェノミナ」はわりと面白かったが、ロック調の曲が怪奇な雰囲気をぶち壊している印象がある。インストゥルメンタルだけなら、まだよかったかもしれないが、歌詞が入ると中々キツイ。ただ、虫と交信する少女による探偵劇という設定は新しいし、画面の構成もうまい。7点。グロテスクシーンも怪奇描写も多くなく、ホラーではあるものの、ミステリー要素が強い。ヒロインのジェニファーは虫を愛する少女だが、同じように虫好きな女性といえば、『堤中納言物語』所収の「虫めづる姫君」が思い浮かぶ。他人とうまく馴染めない点も両者に共通する。「風の谷のナウシカ」のナウシカも王蟲と関係があり、ジェニファー同様、虫を操る女性だが、こちらはコミュニケーション能力が高い。三者とも虫好きな、地位の高い女性だが、並べてみるとかなり違うものだ。本作で最も活躍する虫はニクバエで、作中ではサルコファガスという学名由来の名前で呼ばれる。ジェニファーは他のキャラクターから、悪魔ベルゼブブのようだ、と言われているが、そのような忌避される存在が殺人事件を解決するところに本作のアイロニーがある。力自体に善悪はなく、使用法が肝心だと主張しているのだろうか。ベルゼブブは聖書に登場する悪魔で、『失楽園』では悪魔軍の副司令官を務めている。名前の由来は蝿の王を意味するヘブライ語だと言われ、七つの大罪の暴食を司っていることでも知られる。数ある蝿の中から死肉を食らうニクバエが選ばれたのは、暴食のイメージと重ねるためだったのかもしれない。
 「13日の金曜日」の一作目は、ジェイソンが登場しないことで有名で、ヴィランは彼の母親、パメラ・ボーヒーズである。スラッシャー映画には珍しい女性殺人鬼で、作中のそこかしこに犯人は男性だと誤認させる演出があるためラストシーンは中々衝撃的。とはいえ、スラッシャーの魅力は奇怪なヴィジュアルにもあると思うので、最後まで姿を見せなかったのは悪手だったかもしれない。実際、二作目以降、悪役はジェイソンにバトンタッチしている。出来は普通と言うほかない。5点くらい。ただ、擦れた短い吐息が何度も繰り返されるような音楽はとてもよく、映画全体に病理的な雰囲気を与えている。この音楽と似たようなものを最近聞いたなと思いながら観ていたが、鑑賞後に、それが「アス」だったと気がついた。この作品でも同様のBGMが繰り返されているのである。「アス」と「13日の金曜日」の類似性を指摘したものは既にあって、主人公家族の末っ子が被っているマスクとジェイソンのそれが似ている点や母親が全ての元凶である点などが挙げられている。そういえば、「アス」の舞台も湖近くの観光地だった。どうやらジョーダン・ピルは「13日の金曜日」をかなり好いているようだ。

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