糸賀寛

安部公房研究。映画・アニメの感想や自分の研究について書きます。よかったフォローお願いし…

糸賀寛

安部公房研究。映画・アニメの感想や自分の研究について書きます。よかったフォローお願いします。 #アニメ映画

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  • 2024年アニメ映画評

    自前の2024年アニメ映画感想文。

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実写版「リトル・マーメイド」批評――溶け合う世界の物語――

拾うこと 「リトル・マーメイド」では、拾うことに意味が与えられている。アリエルの趣味は人間の落とし物を拾い集めることで、拾う行為は彼女の性格を端的に示す。彼女とエリックの邂逅も広く見れば拾う行為で、彼女が海に落ちたエリックを助ける=拾い上げることで二人は運命の出会いを果たす。トリトンが復活する契機は、アリエルがトライデントを拾い上げることだし、アリエルはマックスに代わって、エリックの投げた棒を拾う行為はアリエルとエリックが結ばれる前振りとして機能する。再会の時に彼女が着るのは

    • 2024年アニメ映画評13・「映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ」

       3月最後は子供向け推理アニメの映画化。二幕物で、前半は「なんでも解決倶楽部VSかいとうU」というショートムービーである。テレビアニメはシーズン8までNHKで放送され、中々の長寿アニメだ。本作は「東映まんがまつり」の短編三本を含むと、五作目の映画にあたり、長編としては二作目。2025年にも新作長編をやるらしく、人気なんだなあと思う。まあ、小学校低学年くらいまではケツとかオナラがすごい好きだしね。ミステリーとは言っても対象年齢が低いので、半分パズルみたいなものである。悪辣で惨た

      • 2024年アニメ映画評12・「私ときどきレッサーパンダ」

         コロナのため劇場公開されなかったピクサー作品。厳密には新作ではないが、劇場初公開ということで感想文を書くことにする。コロナで流れた他の二作品も今年劇場公開された。本作の予告は微妙だったが、観てみたら意外と面白かった。7点くらい。  ピクサーなのでCGのクオリティは言うまでもないが、特にレッサーパンダの毛並みが本物みたいにフワフワでよかった。人間は少しフィギュアっぽいが、ピクサーやディズニーのCGはそういう芸風なのであまり気にならない。伝承を語るシーンは凝った絵だったが、手描

        • 2024年アニメ映画評11・「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション前章」

           浅野にいお原作のアニメ映画化。前後二篇構成で前篇は3月公開で、後篇は4月に上映予定だったが、5月に延びた。前章を観た段階では原作未読、正確には部分的にしか読んだことがなかった。アニメのスコアは7点くらいかなあ、といった感じ。  絵はかなりキレイで、特にCGの宇宙船は見応えがある。パッと見、手描きにしか見えないのでは? Production I.Gってすごい。あと、これは前篇を観終わってから原作を読んで気づいたけれど、アニメのショットは漫画のコマを再現したものがかなり多かった

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        実写版「リトル・マーメイド」批評――溶け合う世界の物語――

        • 2024年アニメ映画評13・「映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ」

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        • 2024年アニメ映画評
          13本

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          2024年アニメ映画評10・「FLY!/フライ!」

           イルミネーションの新作。この会社は夏に「怪盗グルー」シリーズを公開予定で、稼働しているなあ、という印象。有名作と言えば、「怪盗グルー」「ミニオン」の他に「ペット」「SING」があるが、この二作は日本だとそれほど跳ねていない気がする。「スーパーマリオ」は大ヒットだったがね。  通俗に振り切った滑稽作品を作るスタジオで、作品は全般に楽しい。これと比べると、同じ3DCGスタジオのディズニーやピクサーは、何らか重みを作品へ加えていて、ある程度の文学性を感じる。どっちがいいというので

          2024年アニメ映画評10・「FLY!/フライ!」

          2024アニメ映画評9・「映画しまじろう ミラクルじまのなないろカーネーション」

           ベネッセのイメージ・キャラクターのアニメ映画。同じ看板キャラのコラショとは待遇が雲泥で、TVアニメ化されている分、この虎はかなり優遇されている。コラショにも一応アニメ映画があるが、一作だけだし、知名度では、しまじろうの足元にも及ばない。ランドセルの擬人化がダメなのかなあ。あるいは対象年齢がミソなのか?   スコアは5点くらいだが、これは大人が見るとしんどいというだけで、幼児が見るなら7点はあるのでは? ただ、同じ幼児向けだと「アンパンマン」が格段に面白いので、そっちでいいと

          2024アニメ映画評9・「映画しまじろう ミラクルじまのなないろカーネーション」

          2024アニメ映画評8・「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」

           3月最初の映画は老舗アニメの劇場版で、恒例作の一つ。現在、毎年上映されるアニメ映画は、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」「プリキュア」「アンパンマン」くらいで、「きかんしゃトーマス」や「パウパトロール」も最近は毎年やっている気がするけれど、観てないから少し自信がない。それはともかく「ドラえもん」映画は近年不調で、そんなに面白くない。子供の評価は分からないが、大人が見るに堪えないものになりつつある。今回も微妙でスコアは5点。つまらない寄りの普通。前作があまり

          2024アニメ映画評8・「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」

          2024アニメ映画評7・「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」

           ゼロ年代に人気を博した「機動戦士ガンダムSEED」・「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の続篇。完結から二十年ぶりの作品で、映画化までこんなに間が空いたアニメは他にないんじゃないか? スコアは7点くらい。「ハイキュー」と同じく予習必須で、一見さんお断りとなっている。「SEED」は設定や話の流れがファーストガンダムによく似ているが、「DESTINY」がゼータに似てるかは知らない。  映画はTV版と比べてやたら絵がキレイなものの、ショット毎にキャラの顔が別人みたいになる

          2024アニメ映画評7・「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」

          2024アニメ映画評6・「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」

           人気ジャンプ漫画の映画化でテレビシリーズの続篇。「ハイキュー」も連載が終わって結構経つが、なお人気らしく、公開日翌週の木曜くらいに観に行ったら、もう入場者プレゼントがなくなっていた。欲しかったんだけどなあ。2.5次元舞台が時折やってるし、根強いファンがいるんだろう。スコアは7点くらいだが、原作かテレビアニメの予習が必須なので、鑑賞のハードルは高い。  ジャンプのスポーツ漫画は結構魔境で、打ち切り本数が桁違いだったりする。ヒット作の内、真っ当なスポーツものは「SLAM DUN

          2024アニメ映画評6・「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」

          2024アニメ映画評5・「大室家 Dear Sisters」

           よくある日常系アニメの映画化で、二部作の前篇。観に行った時は「ゆるゆり」のスピンオフと知らなかったが、特に問題はなかった。鑑賞後、「ゆるゆり」は全部観たが、日常系なので、どれが一番いいとかはないかも。個人的には「大室家」の方がいいようにも思うが、まあ、両方見たらいいのでは。スコアは5点くらい。ちなみに、これを書いている時点で既に後篇も観ているが、後篇の方が面白いです。  絵は普通というか、すごくいいわけでもなければ、ヤバいわけでもなく。感情表現はかなり露骨で、これはキャラの

          2024アニメ映画評5・「大室家 Dear Sisters」

          2024アニメ映画評4・「映画 ギヴン 柊mix」

           2月一発目の映画は「ギヴン」の完結編前篇。投稿してる時には、既に後篇を観ているのだが、この記事ではそっちに触れるつもりはない。スコア的には5点くらい。ファンなら観てくださいという感じ。前回の「映画ギヴン」の時くらいから、何か合わんなあとは思っていたが、今作で、へえ、そうなんですか、という感じが一層強まった。まあ、オチが中途半端だったせいもあるんだろうけど。  とにかく、真冬と上野山君のドラマを置いてけぼりにし過ぎである。全般に柊と玄純の話にフォーカスしすぎて、先に挙げた主人

          2024アニメ映画評4・「映画 ギヴン 柊mix」

          リスト 私的ホラー映画ベスト・暫定版

           個人的に気に入っているホラー映画のリスト。まだまだ鑑賞数が足りていないし、新しい映画は常に作られ続けられるため、今後変化する可能性はある。とはいえ、作品が追加されることはあっても削られることはないと思う。なお、数字は順位ではなく、ただの年代順。 本多猪四郎「ゴジラ」(1954年・日):今では信じられないが当時はホラーと見做されていた。というか、怪獣は本来ホラーの産物なのだが、円谷と東宝のおかげというか、せいというか、気づけばマスコット的ヴィランになってしまった。現代SFの

          リスト 私的ホラー映画ベスト・暫定版

          2024アニメ映画評3・「ペルリンプスと秘密の森」

           出町座で観たブラジルのアニメーション映画で、1月最後の作品。まあ、7点か、8点くらいか。アニメーションだけなら、かなりレベルが高いのだが、筋が少しなあ、という感じ。  絵本のようなやや奥行きに乏しい平面的なイラストと、パステルカラーによる柔らかな色彩表現が特徴で、抽象的な色の奔流のようなシーンや森のファンタスティックな描写は、ポップでありつつ、美的感覚に訴えかける。  作品の大筋は、太陽の国と月の国のスパイが、魔法の森を荒らす巨人を倒すため、ペルリンプスなる謎の存在を追い求

          2024アニメ映画評3・「ペルリンプスと秘密の森」

          2024アニメ映画評2・「BLOODY ESCAPE――地獄の逃走劇――」

           意外に面白かったのが、この「BLOODY ESCAPE」で、7点くらいの価値はあった。谷口悟朗とポリゴン・ピクチュアズの新作である。「エスタブライフ」という2022年のテレビアニメと世界観を共有する作品で、話に接続性はない。  「エスタブライフ」の方は凡作で、こちらの映画を観た後、全部観たが、何も残らずに散っていった。この作品を観ても分かるが、設定はかなり作りこまれており、その点はよくできたSFなのだが、話がちょっとね。  と悲観的な前振りをした後でアレなのだが、「BLOO

          2024アニメ映画評2・「BLOODY ESCAPE――地獄の逃走劇――」

          2024アニメ映画評1・「傷物語――こよみヴァンプ――」

           2024年に劇場公開された新作アニメ映画のレビューでスコアは10点満点。9点は歴代アニメ映画の中でもかなり面白い。8点はとりあえず観るべき秀作で、7点は通常料金でも元が取れる佳作。6点は割引価格なら満足できる。5点は暇潰しにはよいが、人を誘うべきでない。4点は駄作。サブスクなら我慢できる。3点は無料なら観てもよく、2点は仕事なら観るレベル。1点は最悪で、もう言葉にならない。だが、あまりにダメ過ぎて逆にいいこともあり、それは0点とする。評価の目安はこのようだが、筆者は大体の映

          2024アニメ映画評1・「傷物語――こよみヴァンプ――」

          文学研究 「安部公房「少女と魚」の素材と主題」の要旨

           投稿論文「安部公房「少女と魚」の素材と主題」が学術誌『國語國文』93巻2号(二〇二四年二月)に掲載されたので、要旨を記す。 論文要旨  本論は、安部公房(以下、公房と略)の戯曲「少女と魚」の材源と主題を考察するものである。本作の知名度は高くないが、現在劇作家としても著名な公房の処女戯曲であり、彼の作風を理解する上で、分析する意義はある。  まず、公房のエッセイや対談などを参照に彼の読書歴を調査し、読了した作品と本作の本文を比較検討した。その結果、「少女と魚」は、『竹取物

          文学研究 「安部公房「少女と魚」の素材と主題」の要旨