20年前のインド(初海外一人旅)〜デリー→バラナシ移動編~

夜行列車の席に腰を下ろし、ホッと一息。
インド名物の自席に知らんおっさん座ってる、は無く一安心。
2等寝台、だったかな。
間もなく列車が動き出し、窓の外を見るとなかなかに外が見えない。
暗いとかではない。窓が汚れすぎているのだ。
汚れというよりかはなんでそうなったというくらいの断末魔の掻きむしりかというくらいのキズで真っ白になっていて外が非常に見づらい。
車窓を眺めるのも楽しみだったのに残念。
まぁ朝になったらもう少し見えるかな。

なんて事を思いながらも実は非常に不安だった。
まずバラナシに着いてちゃんと降りられるのかが分からない。
駅の看板に英語表記も無ければ車内アナウンスもヒンディー語で全く理解不能。
到着時刻もアテにならないし、繰り返しになるが当時はスマホも海外SIMも無い。

周りを見渡すと自分より少し年下風の日本人ぽい一人男子がいた。
日本ではナンパはおろか自分から積極的に友達を作るような性格でもないが
この時ばかりは勝手に身体が動いていた。
声をかけ、目的地も同じだということが分かるとそこからは自然と会話がはずんだ。
大阪出身で、今をときめく近ツリ(失敬)に就職が決まっている大学4回生とのことで就職前にインドを一人旅してみようと来たとのことだった。
似たもの同士じゃーん、と思ったが彼は既に以前姉とジョードプルだかどこだかに行ったことがあるとのことで同時に俺は謎の敗北感を感じていた。
心の中で「センパイ」と思いながらカネダ君(適当、名前忘れた。カネが付いた気がするんよね)と今後の旅の予定や将来の事などを話す。
当時の俺はドラマーを目指していたので先行き不透明、しっかりした企業に就職して将来を考えている彼にさらに謎の敗北感を味わう。

「チャーイ、チャーイコーヒーチャーイ!」
車内の売り子の声は非常によく通る。
試しにチャイを1杯購入して飲んでみるとこれが非常にウマい!
以後滞在中何杯飲んだか分からないチャイデビューである。

夜行列車の中ではちょっとしたハプニングもあり、
ドイツ人が列車の柱にワイヤーで荷物をくくりつけて南京錠で施錠したはいいが鍵を失くしたという。
どんだけどん臭いねん、と思いつつ周りの旅行者で思案していたところ
大量の蚊取り線香を持参していた俺はライターも持っていることを思い出す。焼き切る作戦である。
ワイヤーはそこまで太くないのでこの作戦が功を奏し、見事にドイツ人の荷物を救出。
この旅唯一の蚊取り線香持参が役立った瞬間であった。
何を喋ったかあまり覚えてないが、とにかくひとしきり感謝され盛り上がったことだけは覚えている。
今だったらSNSや連絡先のひとつでも交換してたのかな。

・・・

なんやかんやとあった後に就寝、早朝に目が覚めると列車はインドのど田舎を走っていた。
おー、こういう景色が見たかったんだよ。。。
遠くに昇る朝日、朝日に照らされる田畑、川。
既に神々しい。

ふと目線を遠くから近くに移すともうひとつ朝日に照らされているものが並んでいた。

人間のケツである。

線路と並行して流れてる川だか畦に向かって住人がケツを出して並んでしゃがんでいるのである。
つまり全員列車にケツを向けて並んでいる。
朝のウ●コか・・・
神々しいと感じていた景色が途端に俗なものとなり、
これもインドかと可笑しくなってきたが
旅をしている実感が沸いてきて一気にはっきりと目が覚めた。

しばらくすると車内がざわつき始めた。
間もなくバラナシに着くようだ。

とりあえず初日はカネダ君と一緒に行動することにしていたので共に下車の準備をする。

バラナシの駅に着くとチップ狙いの強制荷物持ちのポーターが雪崩れ込んできて、勝手に荷物を持って行こうとするのでいきなりバトる。

どうにか荷物を死守してホームに降りる。
あー、ここがバラナシか。。。
感慨に耽る余裕もなくどこに行けばいいのかわからない。

今思えばどこをどうやって宿までたどり着いたのかも思い出せないが、
荷物を置いたらカネダ君と宿の前で待ち合わせにしていた。
海外SIMもない見ず知らずの土地でよく合流できたものだ。

勢いで来たインドの本丸とでも言うべきバラナシ。楽しみである。

次回へ続く。

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