『鶴梁文鈔』巻4 訳
謄本「胡邦衡 の高宗に上 る封事」の序
南宋の名臣で、天地間にみなぎるばかりの忠義心にあふれていた人物といえ ば、胡邦衡であろう。当時の貴人たちは、皆気息奄々として、ろくに発言することがなく、畏縮し、たじろいでいた。そして、君主に媚を売って安楽をむさぼろうとし、天下国家のことをまったく考えようとしない姦臣がいるばかりであった。あぁ、なんと不忠不義のはなはだしいことであろうか。そこで邦衡は勇を奮って封事を奉った。心ある人はこれを、才能の人が運に巡り合って世に出ることができたと