中島敦『光と風と夢』

(モンテーニュを読んだ後)
 斯うしたどえらい書物を読んだ後では、どんな作家も子供に見えて、読む気がしなくなる。それは事実だ。しかし、それでも尚、私は、小説が書物の中で最上(或いは最強)のものであることを疑わない。読者にのりうつり、其の魂を奪い、其の血となり肉と化して完全に吸収され尽すのは、小説の他にない。
(中島敦『光と風と夢』)

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