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コロナ禍を経験している新卒社員の育成のポイント

先日、ある企業人事の方とお打ち合わせをさせていただいていた際に、「今年の新卒の立ち上がりが遅い」というお言葉がありました。「立ち上がりが遅い」と言う感覚が、具体的にどのような新卒の言動から感じられたのか、改めて丁寧にお伺いしたところ、こう言語化されました。


〇 報連相ができない(適切なタイミングでしてこない)。

〇 業務外での飲み会参加は控えるように伝えているが、参加してしまいコロナを患う社員がいる(ルールが守れない)。

〇 時間の概念が甘く、期限内に提出物を出さない。


勿論、人を一括りにして決めつけて見ることは良いことではありませんが、確かにこれらは、複数の企業人事の方々からぽつぽつと伺う内容にも思えます。では、これらの事柄が現場で起きた時に、人事または現場の管理職として、どう認識・対処したら良いのか、を私なりに書いてみたいと思います。


「そうするにはそれなりの理由がある」

まず初めに、人が起こす言動には「それなりの理由がある」という前提で関わることが大切だ、と私は常々思っております。言動とは、その人が過去してきた経験や、育った環境、受けた教育、関わった人々等によって形成してきた価値観(思考パターン)だったり、その人の心の状態だったり、によって引き起こされるものです。従って、「立ち上がりが悪くて困る!」と判断する前に、彼らがどんな大学生活を送ってきたのか、どんな経験をしてきたのか、に少し視点を向けてみることも大切でしょう。


その後、ある上場企業の新卒社員の方と個人的に会話をする機会がありました。彼との会話から、人事の方々や受け入れ側の管理職から新人社員がこのように見えている可能性があるのでは?と想像しました。そう感じる背景に彼らにどんな経験がここ数年であったのか、を考えてみました。この経験によって、現場でどんなことが起きる可能性があるのか、も併せて書いてみます。


〇 時間管理が甘い:
【どんな経験から?】授業の5分前に起きて、PCにログインする生活(リモート授業)を2年あまりしてきており、ゴールに向けて時間を逆算して動く経験をあまりしてきていない。(2年余り、朝11時に起きて、夜中になるという生活をしてきている人も多い。)
【現場でどんなことが起きる可能性がある?】期限内に仕事を終えるという意識が弱くなる。報連相が納期ギリギリになる。

〇 自己主張が弱い:
【どんな経験から?】リモート授業で一方的に講義を受ける期間が長く、また部活やサークル活動、飲み会が制限されており、「個」ですべてが完結、自分のニーズを発信したり、互いのニーズをぶつけ合う経験が不足している。
【現場でどんなことが起きる可能性がある?】チームメンバーと主体的に繋がりながら仕事をするために必要な発信が出来ない。周囲に助けを求められない、1人で物事を完結させてしまいがちになる。

〇 物事のメリハリ、のつけ方が分からない:
【どんな経験から?】大学に向けて様々なものを我慢しながら頑張ってきたにもかかわらず、大学時代に思いっきり自分の望みや欲を満たす経験をしきれていない。
【現場でどんなことが起きる可能性がある?】学生と社会人の境目が分からなかったり、仕事のメリハリのつけ方、自分の中の気持ちの折り合いのつけ方が分からない。(またはエネルギー高く頑張ったり、力を抜いたりの緩急が付けられない。)


本来我々(私は40代半ば)がある時期に経験してきたことを、経験していない新入社員世代が、異なる経験をして育ってきた他世代の社員と折り合いをつけながら、組織で成果をあげて行けるようになるためには、2つのアプローチが大切だと考えます。


【1点目】人事、管理職層が、現在の新人の傾向を正しく理解し、彼らに共感を持ちながら、彼らの未来に向けた成長を全力で支援していく体制・組織風土を作ること。具体的には①組織で成果をあげるために必要な社会人としての基本は繰り返し諦めずに信じて伝え続けること。②個々の強みや魅力を引き出し、伸ばす関わりを意識して気にしていくこと。

【2点目】新卒社員に対する、細やかな対話・フォローアップの機会を設ける。様々な不安を抱えている彼らが、研修やワークショップなど同じ新卒社員同士で集う場を設け、互いに悩みを吐露し合う。(人事にとっても新卒の現状把握のための大切な機会になります。)


超少子高齢化の今、自社の未来を担う社員一人一人は宝のような存在です。「自分で勝手に育て」ではなく、自社と共に幸せに成長できる新人を育てていく、温かい目線を持ちながら、次世代に求められる組織の形を作って行くことが大切になりそうです。


因みに、話は少し変わりますが・・・、思春期である中高生の時期に長いマスク生活を余儀なくされている世代が大人になる頃は、どうなっているのでしょうか。(我が家には高2と中2の子供がいます。)今や、人前でマスクを外すことが出来ない(=ありのままの自分を曝け出せない)心が揺れ動く女子中高生世代も増えているようですが、どうやって「目」だけで人の心を読み、互いの感情のキャッチボールをするのやら、心配になります。彼らが社会人になって、人と健全な関係性を築けるような人に育つためにも、マスク生活に関しては一日も早く終焉を迎えることを願ってやみません。

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