『トニオ・クレーゲル』と日本の昭和青年像
『トニオ・クレーゲル』は日本の文学シーンや日本の現代史にも関連が深い。山室信高『「教養市民」であることの困難――トーマス・マン『トーニオ・クレーガー』再訪――』を参考に、北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』も合わせてまとめてみたい。
日本で『トニオ・クレーゲル』が翻訳されたのは、1927年、つまり昭和2年である。同年に岩波書店から刊行された日野捷郎訳『トオマス・マン短篇集』に『トニオ・クレエゲル』という表題で含まれていた。現在、国会図書館にログインするとこの書誌は検索できるが