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【デジタル時代のリスキリングの大本命】データをビジネス・投資に応用する型① 変動:ビジネス編

①変動

ビジネスでも投資でも、変動は敵である。常に平均的に物事が起こっていれば、その対処は平易である。平均の値だけを見ていればよい。ただ残念なことに、ありとあらゆることに変動はつきものである。

そしてなぜか、より魅力があるもののほうが、その変動は激しくなる。たとえるなら、「女心と秋の空」であろうか。魅力的な女性ほど、その心が変わりやすいと感じるのは、男性読者の多くに賛同いただけるのではないかと思う。

その変わりやすいものを、統計を用いてどう対応していくかを見ていこう。まずはビジネスの舞台として、品切れで大混乱しているレストランに着目する。事業の責任をもつ常務執行役員と、大学院でデータサイエンスを学んだ新入社員・綾小路美来が、どう対応するかを見てみよう。

◆ビジネス編「品切れもリスク、廃棄ロスもリスク」

常務執行役員「うちの子会社のレストランで、最近品切れが頻発してて、お客さまからのクレームがマズイ状態なんだよね」

綾小路 美来「あのレストランって、ハンバーグ定食と焼き魚定食の2種類しかないですよね?」

常務「そうなんだよ。ハンバーグはいいんだけど、焼き魚がやばいみたいだ」

美来「ちなみに、それぞれ1日に何食くらい出るんですか?」

常務「どっちも400食くらいって聞いてる」

美来「へー、平均は同じくらいなんですね。じゃ、ばらつきの問題ですね」

常務「そうだな、ばらつきだよな……ばらつきってわかるの?」

美来「はい、もちろん。標準偏差です。定義とかは、この前お渡しした、めっちゃやさしい統計の本で、あとで確認してください」

常務「こういう、標準なんとかっていう感じの言葉が嫌いなんだよね。ちょっと待って、標準偏差が必要なんだろ。電話でレストランの担当役員に聞いてみる」

・・・

常務「わかったよ。ハンバーグ定食は標準偏差20、焼き魚定食は標準偏差100って言ってたよ」

美来「そういうことですね。これは焼き魚定食、大変ですよ」

常務「たしかに、数字大きくてなんか大変そう」

美来「端的に言うと、ハンバーグ定食は95%の確率で、360食~440食が1日に売れます。一方、焼き魚定食は95%の確率で、200食~600食が1日に売れます」

常務「なるほど。ということは、ハンバーグは440食分用意しとけば大体大丈夫だけど、焼き魚は600食分用意しないといけないってことだね」

美来「おっしゃるとおりです」

常務「いやー、焼き魚定食、リスクあんな」

美来「さすが常務です。そのとおりで、標準偏差というのは、ビジネス上のリスクを示すものなんです。焼き魚の場合、もし600食分用意して、200食しか出なかったら、400食分が廃棄ロスになってしまいます。とはいえ、少なく用意すると、今のように品切れでクレームの嵐になってしまう。ビジネスマネジメントがハンバーグより断然難しいですね」

常務「よしわかった。焼き魚定食はやめさせて、もっと標準偏差が小さそうなものにするわ。なんかいいのある?」

美来「私、そういうのダメなんです。データがないとわからない……」

常務「そうか、こういうときは、現場の勘と経験のほうがいいってことだな。レストランの担当役員に指示出すよ」

ビジネスの現場においては、平均だけで議論するケースが多く見られる。ただ、平均だけではリスクの判断ができない。ビジネスのリスクは標準偏差を用いて表現できる。レストランの例でわかるとおり、同じ平均でも、標準偏差が大きいことでビジネス上のリスクは増大する。

集団の統計値を見るときには、平均と標準偏差をセットで見ることを心掛けよう。


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