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仕事で稼ぐ力をつける その1:自分が勘・経験・度胸の世界に生きていることを認識しよう

第二幕 2-7 レディネス③ 労働収入:仕事で稼ぐ力をつける その1

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私たちはKKD強制社会を生きている。
KKDというのは、「勘」「経験」「度胸」の略である。業界によっては、ここに「握り」が加わり、KKDNという派生形もある。

KKDの対立概念としては、データドリブンが挙げられる。データドリブンでは、「勘」の代わりに「アルゴリズム」、「経験」の代わりに「データ」が用いられる。なお「度胸」には代わるものはなく、KKDでもデータドリブンでも「度胸」は必要であり、かつ重要である。「男は度胸、女は愛嬌」ということわざもあるが、このダイバシティー&インクルージョンの時代にこれを使うと怒られそうな雰囲気もあり、いまは男も女も、度胸も愛嬌も必要である。KKDAの時代であろうか。

話を元に戻す。KKDとデータドリブンをあえて二項対立で示すと、非論理 vs. 論理となる。KKDは非論理なので、いろいろと納得できないことが出てくる(非論理なので、そもそも納得できないのは当然であるが……)
たとえば、下記のようなことである。

●先例は100%正しい。先例がないことはなかなかやらない。(先例主義)
●逆に、「それって本当にやるんですか」という明らかにやばそうなことをやる。(博打主義)
●変だなーと思うことを言っている上司に従わないといけない。(経験主義)

ただ一方で、一旦成果を出して上に上がった人には、とても居心地がいい。
「俺の言うとおりやればいいんだ」
「それは私の経験上、違うわよ」
勘と経験は上に立つと最強である。ここにデータドリブンはメスを入れようとする。客観的なデータとデータから導き出された統計的有意性の高いアルゴリズムを使おう、ということである。

ただ、抵抗は強い。その抵抗係数は、もっている権力の大きさにキレイに正比例する。

ここで具体例として、KKDの権化である「常務執行役員」データドリブンの申し子である「大学院を出たばかりの新入社員」のバトルを見てみよう。

<役員会にて>
常務執行役員「今回は案Aでいく。異論はないな?」
大学院を出たばかりの新入社員「統計的には、明らかに案Aより案Bのほうが成功の確率は高いです」
常務執行役員「はっ、何言ってるの?」
大学院を出たばかりの新入社員「ですから、あくまで統計的な見地ですけど、統計的には明らかに案Aより案Bのほうが成功の確率は高いです」
常務執行役員「ビジネスは、勉強の世界とは違うんだよ。確率とかじゃないんだよ」
大学院を出たばかりの新入社員「わかります。そんな甘い世界じゃないと思います。ただこれだけ明らかな結果を見ると、どうしても案Aで行くのはどうかなと私は思っています」
常務執行役員「あなたの個人的な意見なんかきいてないんだよ。今日は、あれだろ、役員のシャドーイングで来てるだけなんだろう。誰が彼女を連れてきたんだ?」
研究所長「すいません……私です」
常務執行役員「話が進まないから、余計なことを言わないようにしてくれ」
研究所長「すいません。ただ常務、彼女の言っていることは正しいです。私も一緒にデータを検証しました」
常務執行役員「何言ってんだよ」
研究所長「ですから、統計的には明らかに案Aより案Bのほうが成功の確率は高いです」
常務執行役員「そんなこと言って、じゃあお前は責任取れんのか?」
研究所長「誰が責任取るとか、そういう話ではないと思います。我が社の将来がかかっているプロジェクトを、本気でみんなで考えることが大切と私は思います」
常務執行役員「急にどうしたんだよ。いつも何も言わないのに」
研究所長「私はビジネスのことはわからないから、意見を言う権利はないと思ってました。でも、言いたいことはこれまでもたくさんありました。今回のプロジェクトについて、彼女と検証をしたときに言われたんです。案Aになりそうだって話ですけど、統計的に見て明らかにそれはおかしくないですか? それに対して、私はちゃんと反論できなかった……同じ意見だったからです。ビジネスというのは学問とは違うとは言えなかった……学問がビジネスに役に立つことがたくさんあると思っているからです」
常務執行役員「……」 心の中(なんかいいこと言ってるけど、それを認めたら俺の判断がいらなくなるじゃないか。俺の30年の経験はどうなるんだよ。いっそのことAIに最終判断までさせればいいじゃん。どうなっても知らないけど。ビジネスの決定ってそんな簡単なことじゃないからな)

「常務執行役員」と「大学院を出たばかりの新入社員」のバトル

極端な例ではあるが、大なり小なり、このようなことがビジネスの現場では起きている。

こうしたKKDの世界に、データドリブンの世界を取り込んでいく活動を、私自身2010年ごろから10年以上、合計50社以上の企業と一緒にやってきた。そこで実感したことは、思ったよりもその抵抗が強いことである。10年や20年で変わる世界ではない。

これらの状況を踏まえ、まず我々はいま、KKD強制社会を生きているのを認識することが大切である。ただ、KKD強制社会のルールに従っていくと、労働収入を増やすことがなかなかできない。経験を積むには時間がかかるし、よい経験を積めるかには運が必要だし、さらに上につく人により将来が大きく変わるからである。

運に左右されずに自分の力で未来を切り開いていくためには、KKD強制社会に武器を持って立ち向かうことが必要である。それがデータドリブンであり、それを具体的に問題解決に活かすことである。

企業全体や社会全体をデータドリブンに変革していくには時間がかかるが、個人が自分の武器として備えることはいまの時代可能である。次節以降で詳しく解説する。

アクション:あなたが普段働いていて納得できないと思うことを、列挙してください。

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