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発掘良品『理由』3大サイコ俳優

 わたしは、「復刻シネマライブラリー」と並んで、もう一つ長期にわたる仕事に携わりました。それが「発掘良品」です。映画ファンでレンタル派だった方はもうご存知かもしれませんが、2010年から始めた企画で、この年度の第四四半期、つまり2011年3月11日に東日本大震災が発生したので記憶に残っています。
 まあ、コンセプトは「映画通がお薦めする面白い映画」ですから、あんまり知られていない作品の中からおすすめ作品を選ばないといけないなというのは最初からありました。プロジェクトのリーダーになって、どういう編成をするかについてはすぐに頭に浮かびました。
1.『ゴッドファーザー』『ジョーズ』といった名作を紹介するのではない
2.知る人ぞ知る作品、あまり知られていない作品がよい
3.率先して仕入れることでメーカーさんがどんどんDVD化してくれるようにしたい、採算が双方合うようにしたい
4.よく知られていても廃盤や在庫が足りていないものもこの企画で充実させよう
 まあだいだいこういった感じで頭の中でまとまり、2010年7月にスタート、「復刻シネマライブラリー」と並んで楽しい仕事でした。このことは折々触れていくとして、その中で今回は1本、自分の中でどうしても映画ファンに届けたいと思った作品を紹介します。それが1995年のワーナー作品で、ショーン・コネリーが主演した『理由』(原題:Just Cause)です。
 この作品はわたしが社会人6年目にして出会った作品で、当時公開規模はわずか10館という、メジャー配給にしては小さな規模でした。試写で観て以来すっかり惚れ込んだわたしは、ことあるごとにこの作品を取り上げました。

 ハーバード大学の法学教授で死刑廃止論者のショーン・コネリーは講演の後、一人の老婆に声をかけられます。彼女の息子はある殺人事件の容疑者として収監されているが、無実で自白を強要されたといいます。その息子は黒人で、事件が起きた町は黒人差別が色濃い場所。コネリーが調査を再開すると黒人警官のローレンス・フィッシュバーンが自白を強要した疑いが濃厚でした。刑務所で容疑者の黒人青年と面会すると、真犯人を匂わせるような発言をする男が同じ刑務所に収監されているので調べてほしいとコネリーに告げます。そしてコネリーはその死刑囚と面会して話を聞こうとします。
 その死刑囚がエド・ハリス。

このエド・ハリスはすごい

 エド・ハリスといえば『ライトスタッフ』『アポロ13』『アビス』が代表作で、みんないい役です。わたしの大好きな『プレイス・イン・ザ・ハート』では共演したエイミー・マディガンと撮影中に結婚しました。マニアックな筋では、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイトライダー』でライダーたちのリーダー役でしたね。マイケル・クライトンの『コーマ』にも出ていたみたいですが覚えがありません。最近では『トップガン マーヴェリック』にも出演していました。
 で、このエド・ハリスが相当にやばいサイコを演じているのです。わたしはこれまでに見たサイコ演技で強烈に記憶に残っている俳優は、『サイコ』のアンソニー・パーキンス、『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンス、そして『理由』のエド・ハリスです。これを3大サイコ俳優と呼んでいます。他にも名演はありますが、俳優ではこの3人(女優は別です、女優の方はベスト3とか5では収まらないくらいやばい演技の人がたくさんいます)がベストですね。
 とにかくこのエド・ハリスをもっと知ってもらいたい。その一心で『理由』を何年にもわたっておすすめしてきました。まあ、怖いです。ストーリーはこれ以上書きません。まだご覧になっていない映画ファンの皆様は、『理由』をどこかのタイミングでお楽しみください。「まだこんなレベルの知られていない作品があったんだ」と驚かれると思います。


 以下、無用のことながら。

 『理由』を観終わった後、「もっとこんな感じの、あまり知られていないミステリー・サスペンス映画が観たい」と言われたら、次に何をお薦めしようか、ということをいろいろ考えていました。発掘良品をやっていた当時は、この作品と同じくくりに置いたのは『デストラップ/死の罠』と『愛という名の疑惑』でした。懐かしいですね。これから初めてご覧になる方がうらやましい。何も情報を入れずにご覧になるのが一番な作品です。

 『愛という名の疑惑』という邦題とジャケットからは内容は想像できないでしょう。これはキム・ベイシンガーとユマ・サーマンの美人姉妹というのを堪能する作品でもあります。

 ここから発展して『真実の行方』『レイジング・ケイン』という流れでしょうかね。どんどん描写もどぎつくなりますね。どちらも当時評判になりました。サイコは演技力が命、というのを教えてくれる作品です。

 
これは80-90年代でのチョイスですが、50-60年代に遡っていくなら『ハネムーン・キラーズ』ですね。この映画は本当に怖い。終盤につれて殺人場面が怖くなっていくのです。邦題で敬遠している人が多いと思います。廃盤で入手しにくくなりましたね。

 サイコ映画になぜか惹かれてしまうのはきっとわたしの中にソシオパス的な後天性のドグマのようなものがあって、それを排出してくれるからなのかもしれません(?)


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