【脳科学と映画】その16 不眠症
タイムトラベル映画大好きのりゅうさんです。
「脳科学と映画」シリーズ。今回のテーマは「睡眠障害」あるいは「不眠症」について深掘りします。
誰でも眠れない夜というのはあるものですが、それが長期的に持続すると、正常な身体、精神、生命、社会活動を妨げるほど深刻な問題となります。
「不眠症」になると、長期間にわたり疲労感、注意力の減少、不快感といった症状が現れます。また、「不眠症」は、しばしば鬱の進行につながる懸念もあります。
「不眠症」は大きく、「入眠が困難なケース」と、「睡眠持続が困難なケース」の2つに分けられ、それぞれが異なる原因と治療法を持っています。
脳科学的に「睡眠障害」は視床下部、扁桃体、前頭前野の機能不全と関連しており、これらのエリアの異常は睡眠パターンに直接影響を及ぼします。
視床下部:
視床下部は睡眠と覚醒のサイクルを管理する主要な役割を担っています。この領域には、睡眠を促進するオレキシン(ヒポクレチン)という神経ペプチドが含まれていて、適切な睡眠覚醒リズムの維持に欠かせません。
扁桃体:
扁桃体は感情を処理し、ストレス応答にも関与しています。ストレスによる扁桃体の過活動は睡眠障害を悪化させることが知られています。
前頭前野:
前頭前野は意思決定、問題解決、衝動制御に関与する脳の部分です。この領域の機能不全は、本来レム睡眠中に起こるべき身体の麻痺が不完全になり、夢の中の活動を身体的に実行してしまう、いわゆる「夢遊病」(睡眠時遊行症)を引き起こします。
脳幹:
脳幹も睡眠の制御に重要な役割を果たしています。特に、脳幹内のペデュンクロポンティン核とラテロドルサルテグメンタル核はレム睡眠の調節に関与していて「夢遊病」のような症状を引き起こす可能性があります。
その他にも睡眠の調節には、いくつかの重要な神経伝達物質やホルモンが関与しており、これらは睡眠の質やリズムを大きく左右します。これには睡眠を促すものと、逆に睡眠を妨げるものの2種類があります・
睡眠促進物質
メラトニン:
メラトニンは、暗くなると松果体から分泌されるホルモンで、体内時計を調節し、睡眠を促進する役割を果たします。メラトニンの分泌が増えると眠気が生じ、睡眠につきやすくなります。夜間の光や加齢によってメラトニンの分泌は減少するため、これが不眠の一因になることもあります。
GABA(ガンマアミノ酪酸):
GABAは主要な抑制性神経伝達物質で、脳の活動を落ち着かせることによって睡眠を促進します。不安やストレスが高いと、GABAの活動が低下することがあり、これが睡眠障害を引き起こす原因になることがあります。
アデノシン:
日中の覚醒時間が長くなるにつれて脳内に蓄積されるアデノシンは、睡眠圧を高める作用があります。アデノシンのレベルが高まると、人は眠りにつきやすくなります。
睡眠阻害物質
コルチゾール:
ストレスホルモンとして知られるコルチゾールは、体を覚醒状態に保ちます。通常、朝方に最高値を示し、一日の活動を支えますが、ストレスが続くと夜間でも高レベルが維持され、睡眠を妨げることがあります。
カフェイン:
アデノシン受容体のアンタゴニストとして作用するカフェインは、アデノシンの自然な睡眠促進作用をブロックします。カフェインはコーヒー、紅茶、コーラなどに含まれ、摂取すると数時間睡眠を妨げることがあります。
これらの物質のバランスが崩れると様々な睡眠障害が引き起こされます。
「睡眠障害」を扱った映画も結構多くて、以下のような作品があります
『マシニスト』(2004)
1年間眠っていない男が体験する悪夢のような世界
『タクシー・ドライバー』 (1976)
不眠症のタクシー運転手の破壊的な人生。
『フローズン・タイム』(2006)
失恋のショックで不眠症になった主人公が、時間の観念を失い、周囲の世界がフリーズしてしまう。
『アウェイク』 (2021)
地球を襲った異変により、人類の眠りにつく能力が奪われてしまう。カオスと化した世界で、元兵士は愛する家族を救うために奔走する。
『君は放課後インソムニア』 (2023)
不眠症に悩む高校生が、学校の天文台で 同じ不眠症の曲伊咲と出会う。
りゅうさんでした。
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目次
序章: 映画と脳科学の交差点
第一部: 脳の基本機能と映画
1.1脳が映画を認識する仕組み
1.1.1 脳の情報処理メカニズム
1.1.2 映画音楽が脳へ与える影響
1.1.3 映画における脳の時間認識
1.1.4 大スクリーンが脳に与える影響
1.1.5 「吹き替え版」と「字幕版」の脳への影響
1.1.6 人はなぜフィクションである映画を楽しめるのか?
1.1.7 面白い映画とつまらない映画の違い
1.1.8 人はなぜ青春時代に観た映画や音楽に親しみを感じるのか?
1.1.9 早送りで映画を観る時の脳状態
1.1.10 サブリミナル効果
1.2 五感と映画
1.2.1 視覚と映画の表現
1.2.2 聴覚と映画の表現
1.2.3 触覚と映画の表現
1.2.4 臭覚と映画の表現
1.2.5 味覚と映画の表現
1.3. 感情と映画
1.3.1 感情の脳内プロセス
1.3.2 脳は観たい映画をどうやって決めるか?
1.3.3 男性はなぜポルノ映画を観たがるのか?
1.3.4 人はなぜ暴力映画を観たがるのか?
1.3.5 人はなぜホラー映画を観たがるのか?
1.3.6 人はなぜミュージカル映画に惹かれるのか?
1.3.7 人はなぜつまらない映画を見ると眠くなるのか?
第二部:人工知能と映画
2.1 AIが映画に与えた影響
2.2 バーチャルリアリティと脳科学
第三部:脳科学から見た映画
3.1 サヴァン症候群
3.2 認知症
3.3 記憶喪失
3.4 前向性健忘症
3.5 夢
3.6 恐怖症
3.7 心的外傷後遺症
3.8 言語障害
3.9 植物人間
3.10 多重人格
3.11 依存症
3.12 アスペルガー
3.13 摂食障害
3.14 サイコパス
3.15 うつ病
3.16 睡眠障害
3.17 妄想癖
3.18 知的障害
3.19 LGBTQ+
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