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『あんのこと』/映画感想文

大注目女優の河合優実さん。
日本社会の底辺の底辺の暗部をさらけだす、足立区もびっくりの底辺鬱作品。

1. あらすじ

クスリで捕まった主人公。
本来なら身柄拘束されるはずなのに、素っとん狂な取調べをしてなぜか釈放する刑事(佐藤二朗)。
その後刑事のツテで社会復帰プログラムに参加し、徐々に社会の階段を登っていくかと思ったのもつかの間、コロナと虐待毒親と捨て子の影響で再び底辺へ引っ張り込まれ。。。

2. 点数

76点

社会の暗部をえぐる作品がすきなので高得点。
こういった環境から抜け出せない人たち、直接かかわることはないけれどたくさんいるんだろうなと。

コロナ以後はドキュメンタリーを観ているような感覚。
結末は予想通りではあったが、ドキュメンタリー調なので不問。

3. 感想

底辺の闇鍋

貧困、家庭崩壊、病気、性犯罪、薬物。。。
これらは一見独立した事象のように見えるが、実は関連性が深い。
なにか一つが発火すると、周りのウィルスがセットのように付いてくる。
ハッピーセットならぬアンハッピーセット。

これを防ぐためにはどうすればいいのか?
という問いは社会経済、行政の問題になるので深追いは避けるが、
根底にあるのは教育だと思う。

しっかりとした教育を受けていれば、貧困は避けやすく、アブナイクスリの危険性もしっかり認識できる。

で、教育を受けさせるのは親の役割なので、結局親ガチャかよ。。
親の年収帯と子の年収帯に相関関係がある(統計があった気がする)のはそういうことでしょう。

本作でもいわゆる『毒親』たる母親が登場し、娘にウリをさせて売上を巻き上げる。母親自身もウリをしているっぽいので、親子は似るんですね~と冷めた悲しみがこみあげる。

やさぐれのリアリティー

クスリが抜けていなくて朦朧とした時期、社会復帰をしかけた時期、不本意ながらも母になった時期、とそれぞれの状態に合わせて河合優実のビジュアルに変化が加えられている。

目の下のクマだったり、唇のかされ具合だったり。
映画演出として当たり前ではあるが、売れっ子若手女優にしっかりと『処置』をしていたのは好感。

『ミッシング』の石原さとみは地方の鬱メンヘラの役だったが、キラキラ女優オーラが消しきれていなかった。
だからこそ、今作の河合優実の『落ち具合』は上出来。
ぱっと見で顔のつくりが地味であることもプラスに作用している。


共感性が高すぎる人は観賞後に気分が落ち込んでしまうみたいだが、そうでなければ道徳の授業映像として観ておけばいい。
演出や演技はハイレベルなので、おすすめです。



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