Guilty Braves Truth 2:谷間の町ソーラ/魔導戦争が遺したモノ【2−1】

 ーー東世界・岩山地帯。中部にある「荒廃の街フィオラ」で、『幸せの土地』を探して旅をしていた姉さんの帰りを待っていた私、メロン・フルールは、同じく『幸せの土地』の旅をしているカマックさん、トカライ君、レナさんの三人に出会い、街に潜んでいた大国・アルカディス帝国の軍の残党兵から救って貰いました。
 その中で、私はセファー姉さんの行方の真実を知り……。他人に頼ってばかりで立ち止まっていた私は、待っていても失うしか無いのだと気付き、そして、自分の道を、自分の足でこれからは進んでいくと決めました。
 この先にどんな事があっても、姉さんやカマックさん達のように希望と、未来と、自分を信じて。
 たとえ私が忌み嫌われる『魔導士』であったとしても、この力を必要としてくれる人達がいる限り、”私達”がこの世界に生まれてきた意味はきっとあるのだと信じて。
 私は私の力で、仲間の皆さんと一緒に、この世界「フィルアース」で走っていきたいです。ーー


Truth2:谷間の町ソーラ/魔導戦争が遺したモノ

 2-1


 ーー数日前にカマックさんに誘われて、彼らの『幸せの土地』を探す旅に加わった私ですが、現在は岩と苔で覆われたこの「岩山地帯」の一角で、カマックさんの車、オープンカーの「流星号」さんの後部座席で、トカライ君とトランプゲームをしています。
 カマックさんとレナさんは、車から少し離れた場所で、地図を見合いながら進路の確認をしています。空は雲ひとつない晴天。青い空の中で、『幸せの土地』の目印である帯のように真っ直ぐの虹は、勢いよく何処までも遠くに向かって伸びています。
 この綺麗な景色を、姉さんも天国から見ているのでしょうか……。ーー
「のだのだ。次はメロンの番なのだ、早くカードを取るのだ」
 トカライはボーっと空を眺めているメロンに呼びかける。飛んでいた意識を戻した少女が驚いて小さく飛び上がると、目の前にトランプの束が突き出される。
 裏面を見せて扇のように広げられたカード達の奥で、トカライが眉間に皺を寄せて口を膨らませている。慌てるメロンに対して左右にゆらゆら揺れ始めると、不機嫌そうに唇を尖らせながら行動を促した。
「のだ!早く1枚取るのだ!メロンが試合放棄したと見なして、のだの勝利にしても良いのだ?」
「わわわ!ごめんなさいトカライ君!今すぐ取るのです、はい取りました!……あ!!ジョーカーさんですね。あれ?私の手札にもジョーカーさんが2枚。なんでジョーカーさんが2枚あるのですか?」
 指に挟んだジョーカーのカードに、自分の手札にあったジョーカーのカードを並べて絵柄を見せる。不思議そうに首を傾けたメロンに、左右に大きく揺れ踊りながらトカライは解説を始める。
「のだ、これはババ抜きじゃなくてジジ抜きなのだ。ババ抜きはジョーカーを1枚にして遊ぶけどなのだ、ジジ抜きは全部のカードを2枚ずつ揃えてシャッフルして適当なカードを1枚抜いて伏せておくからなのだ、抜けている数字がゲームを終わらせるまで分からないのだ。スリリングなのだ」
「あー、成る程です。じゃあジョーカーさんは、さようならです。はい、トカライ君の番です」
「のだのだ。のだの、神が宿りし指が唸るのだ」
 満面の笑顔でトランプの束を向けたメロンに、トカライは右手の全ての指をくねくね動かし始める。奇妙な指踊りを数十秒披露してから、メロンのカードに手を伸ばして真ん中の1枚を挟むと、
 背後を、高速で少年がぶっ飛んでいった。

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