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Bounty Dog【清稜風月】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2023年12月の記事一覧

Bounty Dog 【清稜風月】247-248

247

 甘夏は、また麗音蜻蛉の羽音を聴いた気がした。此の世で最も美しい音色。己が愛する此の東洋の島国にだけ住んでいる、此の島の宝で、神でもある亜人。

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Bounty Dog 【清稜風月】245-246

245

 ヒュウラが其の場を離れて十数分後に、その人間は其の場に到着した。

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Bounty Dog 【清稜風月】241-244

241

 同じ星の上に存在しながら、東洋と西洋ではあらゆるモノが非常に大きく異なる。自然環境や、自然と共に生きながら日々進化している多くの生き物達の種類に加えて、人間という同じ種の1生物ですら、東洋と西洋ではまるで別々の惑星に住んでいる存在であるかの如く、何もかも違う。
 例え理不尽な脅威が無い安全な土地で生まれ暮らしやがて死ぬ人間同士であっても、東洋の人間と西洋の人間では常識という基本的価値観

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Bounty Dog 【清稜風月】240

240

 余計な事をもうすべきでは無いと悟ったのだろう。それ以来、此の島に充満している摩訶不思議な力は『届ける』事を止めた。
 あらゆる命の寿命までの時を進める歯車の取手を握って好き勝手に回す『運命』の妨害を、生き物達に委ねる。魔犬が人間達に警告した通り、死せる存在が生者達の世界に干渉する事は法度(はっと)である。一度でも死した存在がどんな形でもエゴで蘇って生者達に干渉する事は、命が頻繁に死して

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Bounty Dog 【清稜風月】238-239

238

 生涯、幼馴染や子供の頃に親しくなった存在と縁が切れずに最期まで”友”として深く関り合いながら命の時間を終わらせる事が出来る存在は、極めて少ない。大抵の存在は時の経過と共に、繋がり合っていた縁の糸が切れる。縁という名の糸は極めて脆い。些細な出来事がキッカケで切り落とし、切り落とされる。運命が切る事もある。死別がそのひとつである。
 友と友が繋がり合う縁という名の糸は、余りにも脆く切れやす

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Bounty Dog 【清稜風月】236-237

236

 自然は偉大で、余りにも恐ろしく強大だ。此の世界でも我々の世界でも覇権を握りし生き物・人間すらが全く制御出来ない存在であり、己達の生き死にを左右する”鍵”までもが、時に理不尽な猛威を振るう『自然』という存在に四六時中握られて圧力を掛けられ続けている。
 我々人間も、自然の一部である。自然と共に生き自然の空気を吸わねば生きられず、自然の生み出す食物を食べねば生きられない。時の経過という自然

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Bounty Dog 【清稜風月】233-235

233

 狼の唸り声は聴こえない。聴こえる筈が無かった。今居る此の東の島国では、遥か遠くの昔に存在していた動物の狼は他の多くの生き物と同じく人間によって、寿命を全うするという自由を全ての個体が奪われた挙句、死に絶えている。
 西洋の山々で生き残っていて東の島国にやって来ている人間に姿が酷似している1体の狼も、唸り声というモノは産まれてから一度も出した事が無かった。グルルルという唸り声を良く出して

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Bounty Dog 【清稜風月】232

232

 弓矢は、そのままの状態だと人間が作った武器の中で最弱ともいえる程に殺傷能力が極めて低い。矢尻に毒や麻痺作用がある薬液、または火を纏わせると武器としても充分使えるようになるが、手入れと装填だけすれば直ぐに使える他の武器達と異なり、一度撃てば使い物にならなくなる矢の1本1本に面倒な前処置を行う必要がある。その一方で此の最弱武器は、櫻國のみならず世界中の様々な地帯で遥か昔から戦の持ち物として

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