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言葉の読み解き方~是々非々

今回は、人間の考え方としてはとても重要な事でありながら、多くの人が巧くできないことを表している言葉を読み解いていこうと思います。

「是々非々」の辞書的意味

まずは辞書的意味を見てみましょう。
実用日本語表現辞典によると、次のように書かれています。

是々非々とは、立場にとらわれず良いことは良い、悪いことは悪いと判断するという意味のこと。是々非々主義はそういった思想の人を指す。是々非々は、英語では fair and just と表現する。

是々非々の「是」には道理にかなっているや正しいという意味があり、「非」には正しくないという意味があり、是は是、非は非とするのが智であると中国の思想家荀子が述べたのが語源である。

実用日本語表現辞典

まさにこの語源以上の意味もない言葉です。
自分の立場や状況、思想や嗜好に関わらず、良いことは良い、悪いことは悪いと判断することを意味します。

例えば、明らかに正しいことを言っているのにその人のことが嫌いだから私は賛成しない、というのは是々非々では考えられていません。
逆に自分が特に毛嫌いしていて二度と顔も見たくもないと思っているコメンテーターがテレビで正しいことを言っていた場合に、あなたは大嫌いだが言っている事は正しい、と言えるのが是々非々です。

そもそも正しいってなんだろう

ここで問題になってくるのが、「正しい」とは何かという事です。

世の中の真理であり、決して誤っていないことは間違いなく正しいでしょう。
例えば、地球を同じ方向に移動すれば元の場所に戻ってくるとか、
太陽は地球の大気圏の外にあるとか。

では、学問として正しいことは全て正しいのでしょうか?

実は、そうとは限りません。
学問的に正しいのは、現在知られている範囲ではそれが正しいと思われていることであって、新しい事実が判明したらそれは誤っていることになるかもしれないからです。

なので、学問的に正しいことを主張する場合、現在判明している限りでは、と付け加えなければ正しいとは言えません。

では、自分が正しいと思っている思想は全て正しいのでしょうか?

これは、ほぼ確実にそうではないと言い切れます。
よく言われる言葉で、正義の反対は逆方向にある正義、なんて言葉あります。
この言葉と同様で、思想は自分が正しいと思っている事であり、それが世の中の正解であるとは限りません。
ましてや、多数派であればみんなが言っているのだから正しいのだ、というのは少数意見の弾圧でしかありません。

同時に、少数意見は大切にすべきだという意見もまた正しくはありません。
少数意見に全く耳を傾けないというのは多数派の問題で述べた通りですが、少数意見は常に取り入れよというのも多数意見の無視であり形を変えた弾圧です。

ではどうすれば正しくなるのだろう

そう考えていくと、何も決まらないことになります。
……というのは、全てが白か黒で分けられるという誤認から来ています。

この世界はそんなに単純に二つに分けられるものではありません。

特に、思想からくるものは人の数だけ存在すると言ってもよく、だからこそお互いの思想を尊重しなくてはいけないわけです。
ただし、自分の属する国家の法を犯さない限り。

犯罪でないことを主張するのであれば、その意見は一度耳に入れるべきですし、入れた上で私はこう思う、と意見を返すべきです。
返された意見は同意であれ反論であれ必ず一度耳に入れて、そういう意見もあるのか、と自分の中に入れるべきです。

自分の思想と違う思想があるのだという事を理解して、いずれの思想も尊重することで初めて解決策が見えてきます。
この際あくまで理解するのは、自分とは違う思想が存在するのだ、という事まで。
その思想の意味まで理解しようとする必要はありませんし、多分違う思想を正しく理解することはできません。
ましてや、違和感を持ったり、反論したいしそうならばなおさらです。
でも、自分とは違う思想があることは理解して、尊重しなくてはなりません。犯罪でない限りは。

この考え方ができない限り、ダイバーシティは達成できませんし、SDG’sも達成できないでしょう。
LGBTQが住みやすい世界にもなりませんし、男尊女卑や女尊男卑と主張し合うだけ主張して、落としどころは見つからなくなります。

しかし、この考え方を意識することでこれらは達成できるかもしれません。
あくまで、かもしれない、です。
かもしれない、ですが、ほんの少しだけ優しい世界にはなるんじゃないかなとは思いますし、そうあってくれることを切に願っています。

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