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昔話をするのは年寄りだけ?

いつも一緒にリモート飲み会したりコンサートをするグループのうち2名が大学院時代の同期生とコンサートをするというので今回はカメラマンとして撮影に行きました。
多重人格というわけではないけれど、私の中では歌手、指導者、フォトグラファーという違う顔を心のスイッチで入れ替えているので、撮影モードでリハーサルの終わった会場でカメラを仕込んでいると
「すみません、ここ避難経路になるので、道を開けてください」とステージマネージャーさんが飛んできました。
「あ!お久しぶりです」と挨拶すると向こうが一瞬びっくり!
「え?あーーー!ひさしぶり!あなただったんだ」

今を去ること40年前、かつて代々木の小田急線は新宿駅直前の踏切からすぐのビルにあった二期会(オペラ振興会)で、私が研究生をしていた頃から知っている当時の事務局のマネージャーHさん。
当然一緒に歳をとっているはずなのに、なかなか昔のままの声に変わらぬ素早い身のこなしですぐにわかりました。研究生時代からオペラの仕事を始めて新国立劇場に至るまで、業界でお世話になりました。

Hさんも私のことを思い出したものの、数々の時代の私がどこに属しているのか?同期にはどんな歌手がいたのか?から始まり、一つ一つ思い出を辿っていくうちにお互い懐かしい名前と顔が次々と思い浮かんで、2人ともだんだん声高になってきました。
代々木にあった二期会の稽古場は1階が事務局。そして梯子のように細くて急な階段を上がっていくと、会計事務所と更衣室、その横に稽古場がありました。
研究生の授業もオペラの稽古もいつも通っていた稽古場は、思えばボロくて古い空間でしたが、当時の名歌手たちのオーラと先輩と演出家の厳しさに満ちた聖地でした。
それから40年 思い出の人たちは刻々と旅立ってしまいます。つい死んじゃった人たちの話になってしまいますが、セッティングしてから開場までのわずかな時間、Hさんは、仕事の合間に懐かしい話を続けていました。
「代々木の時代が一番活気があったよ」
確かに、あの頃は立川清登さん島田祐子さん 佐藤しのぶさん錦織健さん
オペラ歌手がテレビにも頻繁に出演して人気者になっている時代でした。
頭の中をあの頃の場面がくっきりと蘇ります

昔話するのって年寄りくさいなあ

と若いころは思っていましたが、実際60年以上生きてみると、話して懐かしむ昔があるのは、それだけ生きていた証だし、良い人生だと思えるからなのだと感じます。

さて本番のコンサートも40年前の同期生が集まって学生時代の思い出話をしながら歌で紡がれました。そしてずっと一緒にコンサートができると思っていた仲間の中には、世を去ってしまった人もいて、その人を思って涙したり。

ついこの前教室に集まった高校生でさえ、思い出話は懐かしいのに、我々60代。その何倍もの人生の中で出会った人とその思い出はどんなものより自分を励ましてくれるのです。

コンサート終了後 会場は「久しぶりー!」という声と笑顔でいっぱいでした。


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