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スポーツ法学@オンライン第2週 持続可能な企業づくりを疑う?からのフットボリスタデビュー

2月下旬に授業が完全オンライン化してから約2か月が経過しました。今週はUEFA(欧州サッカー連盟)やFCバルセロナなどの有名どころだけでなく、欧州クラブ連盟などこれまで知らなかった組織の法務担当の方々がゲストスピーカーとして講義をしてくださいました。そして表題の通り、サッカー専門誌「フットボリスタ」のWeb版にてデビューしました。詳細は後ほど。

地元のクラブ"も"応援しよう

「European Leagues」という欧州のビッグクラブだけでなく、中小クラブも含めた「競技水準が高い魅力的な国内リーグ」の実現に向けてFIFAやUEFA、さらには各クラブチームとも協議している団体の事務局長を務めるAlberto Colombo氏が講義をしてくださいました。

そもそも全クラブにとって最適な大会カレンダーを提言する業務が、現在はコロナウイルスの影響で大会が中断・中止されています。いつ再開するのか全く目途が立たない状況に陥っており、数年先の大会にまで影響を及ぼすため、数年先までを含めた多くの日程パターンを考案しているとのこと。

しかもコロナウイルスが沈静化してからは世界中がさらに大きな景気悪化に陥ると思われる中、どれほどのクラブが存続できるのかという根本的な問題に直面しているそうです。ビッグクラブと中小クラブの資金力格差の改善に努めてい中で、今に至っては底上げどころか消滅の危機から救うことを考えなければいけないとのこと。

コロナショックから生き残るのが資金力のあるビッグクラブだけとなると、中小クラブの選手やすtなど多くの失業者が生まれます(これはもちろんサッカー界だけの問題ではありませんが、ここではサッカー界に焦点を絞ります)。まさにJリーグの村井満チェアマンが今季は「競争」から「共存」に舵を切り替えたことを思い出しました。

また、ミラノでの会計の授業にて企業体力の評価基準である資産の流動比率や債務の支払能力などを計算した際に多くのビッグクラブですら悲惨な数値でした。ビッグクラブは経営難に陥ってもその知名度を欲するホワイトナイトが登場することがありましたが、経済の先行きがより不透明な現状においては同様のケースは考え難くなります。

これまで当たり前に存在していた地元のサッカークラブが来シーズンは活動していないかもしれない。「今こそあなたの街のクラブ”も”応援してください」というコロンボ氏の言葉の深みを考えさせられた講義でした。

FFPは産業の発展を遮っていないか?

週の後半はファイナンシャル・フェア・プレー(以下FFP)について学びました。2月頃にミラノでその概要は学んだものの、今回はFFP違反のケースなどを通じて規則の意義を議論し合いました。

そもそもFFPは持続可能なクラブ経営の実現を目的としているため、ざっくりとですが、急な大型投資に対しても制限が設けられています。その規約をすり抜けようとした疑いでマンチェスター・シティ(以下マンC)やパリ・サンジェルマン(PSG)が大問題に。しかし、一方でFFPが投資を制限してしまうがために、マンCやPSGなどのように巨大資本の協力を得てサッカー界の新興勢力になることが難しくなっているのも事実。

そして、架空のクラブチームのケーススタディを行っていた際にクラスメイトの「音楽や映画などサッカー産業の競合であるエンタメ産業は無制限に投資されて発展を続けている状況で、サッカー界はFFPによって自らの首を絞めているのでは?テレビ離れはもちろんのこと、インターネット上での動画視聴時間すら短くなっている世の中の流れを考慮すると、90分間もの試合を視聴してもらうには投資を制限しない方が良いのでは?」という発言の視野の広さに感激しました。

発言した本人はFFPがあることで無謀な投資の失敗によるクラブ消滅を抑制できたり、欧州サッカー界の経営状況の改善は数字も見た上で理解しているものの、中小クラブだけでなくビッグクラブのさらなる成長(=エンタメ産業に追随)のためには制度自体を見直す必要があるのではと主張しました。

まさに「時代に合わせられるものが生き残る」ということでしょうか。今の時代にとって何が最適解なのか。経営状況はチームによって千差万別であるリーグ側の視点に立つと頭がプシューとなりそうでしたが、とても充実した講義でした。そして授業後に近所のパブで議論の延長戦ができない現状への悔しさも募った講義でした。

今学期一発目のテストでした

スイスでのスポーツ法学は10の単元に分かれており、序盤の短い4つの単元を終えたので試験が実施されました。出題内容と私の解答は以下の通り。

国際スポーツ組織の規約づくり

新たな国際スポーツ組織を設立するにあたり、3ページ以内で規約を作成せよ。

多くの国際スポーツ組織の規約は数十ページに及ぶため、3ページに収めるには組織として活動するために必要な箇所を抽出する必要がありました。一団体だけでは判断できないので、様々な競技の規約に目を通して共通箇所を抜き出しました。

それらは主に組織の目標、資金源、役員理事の選出方法、使用言語、会員資格の取得・脱会、など。最後に競技は既存のものでなければ何でもよしだったので「国際かくれんぼ連盟」としました。

ググっていたらイタリアで「Nascondino World Championship」という大会が開催されており、規約文は「Nascondino(イタリア語で「かくれんぼ」の意味)」という単語だらけにしました。単語自体はカッコいいと思ったものの、英文の中に見慣れないイタリア語が頻出することに違和感を感じたため英語の「hide and seek」に修正。

透明性ある組織の実現

7期目(各期4年)という長期政権に突入した某連盟の会長が、勝手に事務局長に就任させた親戚と共に組織の活動計画や資金の使用用途をこれまた勝手に決めています。その権力を悪用した不正選挙なども囁かれる中、スイス当局の取り調べが行われた直後に会長と事務局長は辞任しました。この組織の問題点を5つ、規約の改善案を3つ挙げよ。

まず問題点には透明性や連帯感の欠如を問題文に挙げられている実例に合わせて指摘しました。ここは現代文の試験みたいだったのでスラスラと回答できました。

しかし、改善点が多々ある中で3つしか提言できないとなるとその優先順位も述べる必要があります。しかも問題点の指摘と改善案を淡々と述べるだけでは文字数が足りない(800~1,000語)ので、他団体の実例を交えました。

改善点の1つ目は、1993年からの総会議事録を公開しているアーチェリー協会や、2015年に汚職問題で信頼が地に落ちた国際サッカー連盟(以下FIFA)の事例を紹介。特にFIFAは透明性のある組織に生まれ変わっていることを印象付けたいであろうがため、会計だけでなく組織全体のガバナンスなどの活動内容も公表しています。

2つ目は組織の意思決定が公正に行われているかを監視する体制が整い、かつ正常に機能していると文面上では評価できる国際テニス連盟や国際バレーボール連盟の規約を紹介。

最後にそれでも不正行為が行われていた場合には隠蔽されないように内部通報窓口の設置について国際自転車競技連合とワールドアスレティックス(陸上)の例を紹介。

上記の通り透明性を重視して、段階的に対応策を考えました。長期政権や詳細を公表せずに身内を役職に登用することが問題となった例は多々あれど、規模の小さな組織であればワンマン体制の方がよりスピーディーな発展も考えられるため「透明性」を重視しました。

お小遣い制から見たファイナンシャルフェアプレー

欧州連盟に所属する某国のチームXはFFP違反を犯したものの、猶予が与えられました。しかしそのセカンドチャンスを生かせなかったため、1年間の欧州カップ戦への出場停止を課せられることに。チームXは自国の通貨危機など不可抗力があったと反論して罰の軽減を訴えます。欧州連盟とチームそれぞれの言い分を踏まえた上で、最終的な罰則を述べよ。

まず欧州連盟の主張は「チームXには既にセカンドチャンスを与えており、かつチームXは通貨危機の影響を詳しく説明していないので情状酌量の余地は無し」としました。

続いてチーム側からは「通貨危機というクラブとしては対処しきれない未曽有の事態が発生した。しかも高額賞金が見込まれる欧州カップ戦への出場権をはく奪されると経営状態の改善はさらに困難になる」と主張。

余談になりますが、給料日前にお小遣いが尽きてしまい、妻に資金援助を申し出た経験を思い出しました。しかし、今回は資金援助を申し出る側だけでなく、相手側の視点も考慮した上で公平な裁定を下す必要があります。

連盟側としては三度目の正直を認める甘々な前例を作ってしまうと、チームXだけでなく同様のケースに陥る可能性のあるチームにも隙を与えてしまう恐れがあります。そのため厳しく罰する必要があると思ったものの、上記の実体験から情が入ってしまい条件付きで欧州カップ戦への出場権を与えることにしました。

「フットボリスタ」デビューしました

ガンバサポ仲間のこ~さんにお声だけいただき、「(以下引用)世界のサッカーの戦術・経営・文化……などピッチ内外の最新トレンドを伝えてきた」サッカー専門誌フットボリスタのWeb版にFIFAマスターでの模様を掲載頂きました。

こ~さんとの原稿修正のやり取りはまるでテレビ番組を作る時に編集担当の方とのやり取りを思い出して楽しかったです。そして当noteの目的と同じく、FIFAマスターについてより多くの方に知って頂くきっかけをくださり超感謝です!

ちなみにフットボリスタのサイト上で記事全文をお読みいただくには有料会員になる必要があるのですが、私自身が授業やクラスメイトとの会話の中でも話題として使わせて頂いたことが記事も多々あるほどサッカーにまつわる世界中の様々な情報に溢れているので是非!

今週の就活

学校がプロのキャリアアドバイザーを斡旋してくださり、履歴書の添削を含めた1時間の面談を実施してもらいました。そこで指摘してもらった部分を修正し、履歴書を再送しては再チェックしてもらえます。

英語圏のスポーツ業界の求人サイトにもいくつか登録しているのですが、このような面談を無料でしてもらえて、しかも引き続きやり取りができることはとても心強いです。

ちょくちょく求人は出てきてはいるものの、5月上旬に予定されている求人フェアに向けてまずは準備をガンバります!

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