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スポーツ法学@オンライン第1週 東京2020延期の背景や就職戦線異状あり?

4月からの3学期はスイス西部のヌーシャテルという街を拠点とする予定でしたが、現在は各自が自宅ないしは別の場所からオンラインで受講することに。束の間の春休みを終え、いよいよ卒業までのラスト3か月半がはじまりました。

法律の世界でも"It depends"の精神

初日に行われた概要説明では「犬お断り」という張り紙があるお店に金魚を連れて入ることは可能かという問いがありました。「犬ではないから問題なし」という意見と「犬とは書いてあるけど、その意図は動物NGということなのでは」という意見に分かれました。

私は「いやいや、そこは空気を読んでもちろん後者でしょ」と思ったものの、回答は「It depends(場合による)」とのこと。マネジメントやビジネスについて学んだミラノでも「It depends」だと説明されることが多かったので、クラス一同「またかいな」とのツッコミが。なんとも言えないオチでしたが、何事も多角的かつ柔軟に捉えた上で判断しようという理解に落ち着きました。

東京五輪が延期となった背景とこれから

元オリンピアンで現在はIOC委員をも務める教授は当初の予定を変更し、東京五輪が延期となった背景を話してくださいました。

まず、大会延期のみならず中止という選択肢もあったが、IOCとしては中止は避けたかったので日本側に大会運営や資金面などを含めて「延期」は可能なのかを確認。ここで「確認」という言葉が使われましたが、スイスや日本的な「空気を読む習慣」を考慮すると「要請」と捉えられるのかなと思いました。

そしてIOCは日本側から「最善を尽くす」という返答を受けたので、大会スケジュールの調整に入ります。ここで強調されていたのがパートナー企業や放送局など多額の協賛金を支払っているために影響力が強いと「思われる」ステークホルダーの事情はもちろん考慮するが、参加選手のことを最優先に考えて1年の延期にしたとのこと。

参加選手を最優先に考慮しての判断なので、追加費用、パートナー契約の延長可否、競技会場、宿泊施設、メディアセンター、世界中のスポーツ大会などなど調整ごとのハードルは想定以上に高くなっているようです。全ての経緯が公表されるわけではありませんが、状況がいかに推移するのか自分の意見を持ちながら観察してほしいという言葉に学生の身分だからこそできること、そしてしなければならない任務を再認識しました。

マタイアス・ベルグ氏が体現する「可能性は無限大」

サリドマイド児として生まれたマタイアス・ベルグ氏の講義には心を動かされました。パラリンピックのアルペンスキー競技で27個のメダルを獲得し、多くの世界記録を樹立。さらには法律家、音楽家、パラリンピック解説者としても大車輪の活躍をし、現在は視力低下の病と闘いながら自身の経験を生かしてコーチングや講演会などを中心に活動されています。

幼少期から何度も心無い扱いを受けてきた経験から、世の中の不条理を前向きに受け入れらる広い視野こそが必要という言葉は、今の私たちにとって大きな支えとなりました。コロナウイルスの影響で様々な制限がかかっている現在ですが、未来は今の自分たちの行動次第、という大阪府知事の吉村洋文氏も仰っていた心の持ちようと行動がより重要となっています。だからこそ最大限の力を発揮できる、最も情熱を注げられることを見つけてほしいという言葉にクラス一同が背中を押してもらった感覚でした。

オンライン講義でも胸を打たれたので、ぜひ教室で直接お会いし、授業の後ももっと話をしたかったと思いつつ、今できる最大限のことをしてくれた学校側にも感謝の気持ちでいっぱいとなったベルグ氏の講義でした。

ベルグ氏の公式サイト(英語)はこちら。

国際スポーツ界の今後の注目点

他にもFIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)などサッカーの大御所組織だけでなく、ASOIF(オリンピック夏季大会競技団体連合)やWorld Leagues Forumという日本のJリーグを含む世界40か国のサッカーリーグと共に数多の課題解決に取り組んでいる団体の方が講義をしてくださいました。その中でも印象的だった話をお伝えします。

まず、競技団体が大きく発展した際には、会長など組織のトップに立つ人物や、パートナー企業との関係を確認すること。資金の出所が怪しい人物は大規模組織だとその資金力を必要とされず門前払いとなることがあれど、そうではない組織だと入り込みやすく、受け入れる側も苦渋の決断を迫られるケースが今後も多発するであろうとのこと。これはラグビーW杯、東京五輪、さらにはワールドマスターズゲームズなどでスポーツビジネスが盛り上がってきている日本でも同じことが考えられそうです。

続いて国内リーグが事業として自立するためには、同国の競技連盟から独立した運営であることが望ましいとのこと。競技連盟の影響が強くなると、政治的な判断を迫られることが比較的多くなり、事業の成長にとって最善の判断がし難くなるとのこと。そのためには放送権収入やチケット収入など、経済的に自立できることが望まれるが、国の経済が発展段階である国のリーグにとっては現状では難しい話であることも事実。

その反面、競技連盟の影響力が強ければ代表チームとの調整もしやすくなる、など広い視野を持って上で理解してほしいとのことでした。リーグと協会は対立する必要はなく、むしろいかに協調できるかも大切です。これは日本で例えると、JリーグがJFAと協力し、ACL制覇のために協力体制を整えることなどが考えられます。いがみ合うよりも仲良くした方が仕事もやりやすいですもんね。

Zoom会議で思ったこと

日々の授業や週1でクラスメイトたちとの遊びでZoomを使っているのですが、授業の様にある程度の進行形式を参加者が共通理解できている会はZoomでも満足度が高く実施できるかと思います。しかし、わちゃわちゃと雑談をする際には大人数の場合だと直接会う時以上に口数が多い人が主導権を握ってしまい参加者の温度差が広がってしまうかな、とも思いました。これが4人ぐらいまでなら問題なくさばける気がするものの、やりながら最善の形を見つけたいです。

また、友人が2つの端末を駆使して同時進行で2つのZoom会に参加していた時に本人の集中力のみならず、別の会の音声が漏れてきてしまって全員の音声が聞き取りにくくなる弊害も実感。全てに最高の集中力でガッツリと参加する必要は無いにせよ、せっかく各自が時間を割いて参加してくれているので、全員の満足度を可能な限り高めたいのも事実。これが5.1chサラウンド音声とかになると状況は改善できるのかもですが、まぁ万能ツールでないことを認識してより楽しく活用していきたいです。

就職戦線異状あり

3学期の第1週は規模が大きな組織の講義が続き「すっげー」と圧倒されたり、これまで抱いていた憧れがさらに強まる場面が多くありました。その反面、現実に目を向けると3か月後に迫った卒業後の就職先を見つけなければという焦りも出てきました。

様々なスポーツ関連の企業や団体の採用状況は今までとは異なっています。採用側からしたら1年後に延期となったオリンピックに向けた各所との調整や、国内リーグがいつ再開されるのかなど目の前のことで手一杯なので、人事採用にお金と時間をこれまでとは同じように力を注げないのはどうしようもできない事実です。

それでも学校側がキャリアアドバイザーを手配してくださったり、卒業生がオンラインでの就活イベントの準備など最大限のサポートをしてくださっています。ベルグ氏の講義で学んだことを胸に、引き続きガンバります!

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