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スポーツ法学@オンライン第4週 人気学生アスリートは賃金をもらえるべき?スポンサーと選手の契約交渉を疑似体験

3学期の授業も残り1か月ほどとなりました。6月中旬からは卒業研究に専念すると思うとあっという間です。そんな第4週では主にアメリカとヨーロッパのスポーツ産業の違いについて(ざっくりとですが)学びました。リバプール大学フットボール産業MBAのMikiさんがそして欧州スポーツビジネス系の大学院で学んでいる日本人の方々を紹介してくださいました。

学生アスリートだって賃金を得るべき?

アメリカの大学スポーツ界では大きな収入を生んでいる競技もあるので、それだけの価値を生み出している選手たちは相応の金銭報酬を得てもよいのかという議論を行いました。

講師の方はアメリカ人で、ざっくりとですが男子バスケとアメフトが大半の収益を生んではその大金の恩恵を他の部が受けていることを説明してくださいました。このような状況で稼ぎ頭の男子バスケやアメフト部の学生たちに報酬を支払うとなると、他の部の活動資金が減り、アメリカの大学スポーツ界が瓦解してしまう可能性があります。

とはいえトップ校にもなると演出も華やかで観客動員もン万人であるならば「プロの興行」と言わずに何と呼ぶのかという意見が出ます(ここでの「プロ」は厳密に定義しません)。また、例えば部活生ではない学生が自身の活動で対価を得ること(音楽ライブ、画家、インフルエンサー等)は可能なのに、なぜ部活生は対価を得てはいけないのかという意見も。

そしてこの授業の数日後、学校とは関係のない第三者とのスポンサー契約による報酬は得ても良いという方向とのニュースが発表されました。

時間の制約もあり現状の仕組みを維持すべきという意見と、価値相応の報酬を受け取るべきという意見が噛み合わずに議論は消化不良となったことは否めません。とはいえ一方的に「こういうもんだから」で終わなかったことが救いでした。

「戦力均衡」の正体とは?

イタリアのサッカー1部リーグ「セリエA」はユベントスが8連覇中、そしてフランスのリーグ1は先日シーズン終了が決定したことでパリ・サンジェルマンの7連覇が決定しました。ドイツのブンデスリーガもバイエルン・ミュンヘンが7連覇中で、スペインのラ・リーガは長年バルセロナとレアル・マドリーが覇権を争っています。

このような「試合をする前に勝者が分かっているどころか、シーズン開幕前の段階で優勝チームがほぼほぼ分かっているからワクワクしない」というこの「ワクワク」という感情は「不確実性」にもたらされるとのこと。しかし現時点での研究では「戦力均衡」は過去の試合結果からでしか定義できていないそうで。むしろ実績以外の何から「不確実性」を感じ「ワクワク」できるのかと思ったら頭が回らなくなりました。

で、今週の主題である「欧米比較」の視点から見ると、アメリカのリーグに参加しているチームの競技面での目標は下部リーグとの昇降格が無いため、大リーグのワールドシリーズやNFLのスーパーボウル優勝しかありません(例外としてサッカー界は中南米CLがある)。対する欧州サッカーはCL優勝、国内リーグ優勝、CL出場圏内、1部リーグ残留など様々な「目標」がある時点で「戦力均衡」が成り立たないのかも、という仮説もあるとのことでした。

何はともあれ本件も消化不良のまま時間切れとなってしまったものの「サッカーで燃える国 野球で儲ける国」の著者ステファン・シマンスキー氏が戦力均衡について熱い研究を多々されているそうなので勉強します。そしてこの本はたぶん大学時代に購入したまま本棚に眠っていたので近々読みます。

フェデラーとロレックスの交渉を疑似体験

選手側とスポンサー側に分かれてのスポンサー契約の交渉を疑似体験しました。選手側はテニス界の生きる伝説ロジャー・フェデラーで、可能な限り契約期間を長くし、かつ契約金も高額にすることが目標です。私は企業側のロレックス社のグループとなり、可能な限り契約金を低く抑えて様々な権利を取得することが目的でした。

昨年までは教室で全員が対面して実施されていたようですが、今年は授業がオンラインのためビデオ通話で実施しました。フェデラーが歴代シングルス大会の優勝回数1位になるまであと7大会なので、その際に記念ウォッチを作って販売してはその利益を全額フェデラーのチャリティ活動に寄付するから保証金の減額を提案するなどネタを考えたりするのが楽しかったです。

交渉時間も45分しかなかったので劣勢さを感じたら話を小難しくしては話題を変えてみたり、あくまでも疑似体験だと思うと良くも悪くも緊張する必要が無かったので強気の姿勢を貫くなど楽しめました。学生アスリートと戦力均衡という個人的にもかなり気になっている話題の講義を消化不良のまま終えてしまったので、グループワークを楽しめたことで一週間をスッキリ終えることができました。

また、お互いの物理的な距離が離れていたので交渉中はグループチャットで作戦会議をしていたことが教授にとっても新たな発見だったようです。たしかに同じ場所に集まって交渉する場合はヒソヒソ話をするのすら難しいものの、全員がオンラインだと以下写真のように交渉中も別窓で仲間内での相談が可能です。

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ちなみにフェデラー陣営もグループチャット上で作戦会議を行っていたそうで、実際のビジネスにおいてもステイホームが長引けば、複数人同士による交渉の席はこのようになるかもしれないと思いました。

そして以下の記事によるとフェデラーとロレックスの契約金は現在年間8.5億円とのこと。また、教授からは授業の最後に「交渉とは相手と戦うのではなく、いかにしてお互いにとってのメリット、つまりは最大公約数を共同作業で見つけ出すかを意識すれば冷静さを保てます」との金言を頂きました。

欧州スポーツ大学院に留学中の日本人を紹介

「退職からの海外留学という貴重な経験を何かしら形にして発信し、かつ悩んでいる方への後押しになれば」的な企画をリバプール大学フットボール産業MBAに通うMikiさんが形にしてくださいました。まず前編では各自の経歴や留学までの経緯を紹介しています。

そして後編では実際に入学してから感じた魅力やギャップなどを授業内容の紹介も交えて紹介。韓国人のクラスメイトによると、同国における海外のスポーツ系大学院に関する情報量や奨学金などの支援体制が日本よりかなり充実しているようなので(かつ過去の留学人数も韓国の方が圧倒的に多い)、今回の企画が日本人の方々への後押しとなれば幸いです。

何よりも留学したからこそ同じ志を持った方々との出会いにつながったので、この縁を大事にし続けたいです。

第5週は5/8(金)にオンラインのスポーツ系の就活イベントが開催されるので、履歴書のブラシュアップと面接時のネタの準備に努めます。

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