見守る_ラングホブデ

フィールドアシスタント見習中

#10年前の南極越冬記 2009/9/10

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

◇◇◇

ラングホブデから無事に帰って来た。心配していた悪天候の予報も外れ、気持ちの良い陽気の中、計画していた全てのミッションを終えることができた。それにしてもここまで予報が外れるのも珍しい。

定時交信の中でも向こう2日間の天気情報を教えてもらうのだが、それまでずっと崩れるとの予報が出続けていたのが、前日の晩の定時交信で「明日が崩れるとの予報は無くなっちゃったよ!」と聞いて、皆で思わず顔を見合わせて笑ってしまった。というのも、この日は別パーティである「とっつき岬旅行隊」への補給ミッションが予定されていて、その廻送を担当するのが「50次隊イチの晴れ男」と噂される機械隊員。「でも、さすがに今回は無理だろうなあ」と皆で言っていた矢先のことだったからだ。ちなみにMWFの前にもその隊員にお祓いをしてもらっていて、無事に3日間を乗り切ることができたのだ。

さて、タイトルの「Field Assistant(FA)」。これは観測隊の担当のひとつで、南極で使う装備と野外での隊員の安全を守る仕事だ。50次でFAを担当するのは、北海道で山岳ガイドや雪崩事故防止の普及活動をやっていた樋口和生隊員だ。僕みたいにさほど山に詳しくない人間が、今回のように旅行隊のリーダーをやっていけたのも、樋口さんのような野外活動のプロがいてくれるおかげ。

その樋口隊員にバーで二人で飲みながら「ふだん日本でやっていた山岳ガイドの仕事と、南極での今の仕事にはどういう共通点があるの?」と訊いたことがある。樋口さんは「自分が山を登るシチュエーションは二つあって、ひとつが山岳ガイドとしてで、もうひとつがよりハードな山を目指してチャレンジャーとして登るとき。南極観測隊の仕事はどちらかというと後者に近いかもなあ。」と答えてくれた。

樋口さんがそう答える理由は、南極観測隊には「観測を行う」という明確な目的があって、それは山の頂を目指すという同じ目的を持ったメンバーだけで山を登るのと一緒。確かに隊員それぞれの山スキルのレベルだけを考えれば、ガイドするお客さんの方に近いのかもしれないけど、山岳ガイドの仕事はあくまでお客さんに山を楽しませるためのもの。それに山スキルのレベルは低くても皆それぞれの分野のプロだし、高い目標を持って山を登るときは山スキルのレベルだけじゃなくて、それぞれの性格や行動のパターン、相性や適正までを見極めた上で、パーティの中でのそれぞれの役割をマネージメントする。それは南極で旅行隊が出すときに考えることと全く一緒だ、と云うことだ。

その樋口さんは、12月になると一ヶ月以上の日程で内陸のドームふじ基地に行くことになっている。その間のFA代理(?)には樋口さんから僕が指名されていて、目下樋口さんの下でサブFA研修中だ。今回のラングホブデ・オペの最中も「自分はこう考えてあのルートを通った」とか「あそこは自分だけじゃなく周りも見てあげた方が良い」とか教えてくれる。

11月半ばには51次の先遣隊として、樋口さんの代わりに51次のFAが飛行機で昭和基地入りすることになっているので、FA代理といっても別に大したことをする訳では無いけれど、僕は隊の野外行動の多くを樋口さんと共に経験して来たので、それなりに南極のことや50次のメンバーの野外での動きのことを分かっているから、といったところだろうか。

山を歩くトレースや、判断が一致した時などは「おっ、成長したなあ!」なんて冗談を言われながら研修はまだまだ続く。

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宇宙や南極、ヒマラヤなど、厳しい環境にある美しい暮らし方を探すために、様々な極地の生活を踏査してきた極地建築家。特定非営利活動法人フィールドアシスタント代表。www.fieldnote.net

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