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外の世界

#10年前の南極越冬記  2009/6/4

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

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6月7日放送のTBS「情熱大陸」に、僕ら50隊の篠原洋一シェフ、麦沢京介シェフの二人が登場する。僕らがまだ日本に居たときから今日まで、約1年もの長きに渡って二人を追い続けた、その集大成だ。僕も昭和基地側の撮影で少し協力させてもらった。きっと僕も知らない二人のシェフの姿が見れると思う。ぜひ番組を見てもらいたい。

閉鎖された環境の中での食事が果たす役割が、どれだけ大きいのかはここで生活をすると良く分かる。味や栄養ももちろんだが、真っ白な南極で一番色彩を感じるのは毎日の食事の中だ。極夜期に入り、生鮮食品も尽きて来たこれからは、ますますその役割は大きくなる。

ディレクターの高橋暁とは、僕と同い年だったせいもあって気が合い、仕事を超えた男同士の関係を築かさせてもらった。今回南極観測隊に参加したことで、彼と出会う事ができ、同じ時間を共有できたこと、それだけで僕にとっては十分に価値があることだ。30分という放映時間の中には、この1年間の、彼の情熱が凝縮されているに違いない。二人のシェフ、そして50次隊の一番のファンは彼であり、そして彼も50次隊の一員だと、僕は思っている。

高橋暁がどんな番組に仕上げてくるのか僕も楽しみだ。

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隔離された小さな世界のなかで生きる隊員たちにとって、外の世界へ「発信する」「発信される」ことは大きな意味をもち、ときにリスクもある。そして「編集」もまた、外の世界と内の世界の間にあるギャップを「埋めるのか」「拡げるのか」大きな意味とその責任をもつ。

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