見出し画像

南極教室

#10年前の南極越冬記  2009/7/21

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

◇◇◇

昨晩、昭和基地のネット回線が一時ストップした。原因は、山口県にあるインテルサット衛星のパラボラ・アンテナの不具合によるもの。集中豪雨の影響で受信が上手くいかなかったようだ。山口県で起こった集中豪雨は、1万4千キロ離れたここ昭和基地にも影響を与えている。ちなみに、このパラボラ・アンテナの設置場所に山口県が選ばれている理由は、地震や台風の影響が少ないということ、インド洋と太平洋上空の衛星を同時に見渡せることができるからだ。

明日は北海道大学で「南極教室」というのが行われる。「南極教室」は国立極地研究所の広報活動の一環で、昭和基地と日本とを、前述のインテルサット通信によるTV会議システムで繋いで、主に小中学校を対象に隊員たちが先生役になって授業を行うというものだ。まだ日本と南極とのやりとりが電報しか無かった時代に、ある隊員の奥さんが精一杯の気持ちを込めて南極へと送ったラブレターが「アナタ」の3文字の電報だった、というのを聞いたことがあるけれど、今はTV会議までできるようになっている。

今回の南極教室は、47次隊の隊員が北大で講義を持っているという縁で実現したもの。相手は大学院生なので、いつもの南極教室とは違った雰囲気になりそうだ。僕も「博士過程に在籍しているし、歳も隊で一番近いだろ」という理由で講師役をすることになってしまった。また週末には、横浜市立菊名小学校との南極教室も控えている。菊名小学校との南極教室は、横浜市に住んでいる僕と調理の篠原隊員がメインで先生役をすることになっている。

僕より若いひとたちに「何かを伝える」という資格が、僕にあるのか正直自信は無い。僕がそうであったように、誰かの言葉を聞いて、その後の夢や目標が変わることもあるかもしれない。でも今さら格好をつけてもしょうがないので、迷ったり、遠回りしてばかりの僕の30年分の経験を、自分の言葉で伝えて、「こんな人、こんな生き方もあるんだ」という位に感じてもらえればいいかな、と思っている。まぁ、少しくらいは格好の良いことも言わせてもらおうかな。

最後まで読んで頂きありがとうございます。頂いたサポートは次の遠征などの活動資金に使わせて頂きます。