Fieldism Live Report Vol.7 KEEP AND WALK 15th Anniversary -Osaka Edition- (05-06-2022)
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いつもお世話になっております。Ryotaです。
東京遠征のライブレポ三連発が終わったばかりではありますが、ゴールデンウィークの締めくくりとして先日KEEP AND WALKの15周年記念ライブに行ってきました。
松尾駿介氏が主体となって活動しているKEEP AND WALK、あるときはレーベルとしてHer Name In Bloodやto overflow evidenceの音源リリースをサポートし、またあるときは首都圏を中心にパンク・ハードコアバンド中心とした魅力的なイベントを開いており、新宿のディスクユニオンにあったイベントスペースDuesの運営にも携わっている(現在は営業終了)のですが、今年は15周年ということもあり約5年ぶりの大阪での開催が実現しました。
会場は大阪のハードコア・パンクシーンを語るには外せない火影と新神楽の2会場サーキットイベントでの開催になります。しかも各地から14バンドも集結したお祭りで休めなかった人も多いと思います。実際凄い楽しい一日でした。
筆者は14バンドのうち、12バンドを観ました。いつものライブレポよりも気持ち分量控えめで当日の様子を備忘録としてまとめたいと思います(客観的に控えめとは言ってない)。
※各出演者の名前は敬称略になること、予めご了承ください。
waterweed
新神楽のトッパーは大阪発メロディックハードコア・パンクバンドwaterweedでした。2003年の結成以来、まだ日本に「ラウド」という言葉もなくポスト・ハードコアやスクリーモというジャンルが認知される前であるからシーンを牽引してきた存在で気づけば20年近くのキャリアを積んできているこのバンド、変なわざとらしさがない自然で愚直な感情を、メロディアスな疾走感と泣きのエモーショナルメロディに乗せて放出する楽曲とライブパフォーマンスが魅力で、昨年リリースされた ''Deep Inside'' は、TVアニメ「キングダム」のEDに抜擢されたことでも話題になりましたね。
このバンドがトッパーに選出されたこともあって、既にライブハウスにつながる路地には多くの人が並んでおりました。実際に早い時間から新神楽には狭いフロアが人の熱気に覆われていて実際のライブはそれ以上の熱量に包まれていましたね。
筆者はこのバンドを約2年半ぶり(確かWill You Rememberの解散前ラストツアー)に観たのですが、簡潔に言うと一番目から「今日絶対いい日になる」って確信が持てるほど滾りました。「ハードコアのマインドを持ってメロディックなことをやっている」一貫した作風が前面に押し出された疾走感とメロディ、不器用で泥臭くもまっすぐな姿勢がうかがえるBa. Tomohiro Ohgaの熱量あふれるパフォーマンスでフロアは早速シンガロングに包まれていました。
OLPHEUS
火影側のトップバッターは大阪を拠点に活動している若手メロディックハードコアバンドOLPHEUS。硬派なメタリックサウンド+繊細でエモーショナルなメロディがくみ出すドラマ性や、Vo. 弾の激情的なシャウト・ありのままの感情を吐露するように語り掛けるスポークンパート・伸びやかで儚げなクリーンを用いた巧みな感情表現の押し引きが魅力です。一時活動休止をやメンバーの上京など幾度の節目を迎えながらも、マイペースながら実直に活動を続けています。
関西での公演において、フルメンバーでライブするのは本当に久しぶりのうえ、曲間のMCでVo. 弾が「waterweedやbacho、学生時代からずっと聴いていたバンドとやっと一緒にやれるところまで来れた」と語る通り今回のライブには並々ならぬ気合に満ち溢れておりました。一昨年末出した「ターミナル」、コロナ禍に入ってから同世代の解散ライブ(AFTERGLOW, Blessing In The Nameのときはまさにそうでしたね)に呼ばれることが度々あった彼らなりの手向けの唄ですが、バンドを続ける力強さを改めて感じました。
最後には未発表の新曲を初披露したOLPHEUS、久々に観ましたがやっぱり良かったです。
DAM
新神楽側の二番手は、大阪を拠点に活動しているエモーショナルロックバンドDAM。ポストロック・激情ハードコア・エモなどの影響下を感じるサウンドながらも、ダイナミックな爆発力と繊細な感情の変化の対比が美しい展開、なによりと心揺さぶられること必至なVo/Gt. 駿平の紡ぐリリック・メロディがグッとくることで知られています。結成から15年以上活動しているベテランで知人も「DAMのライブは昔からずっと良い」と言ってたので、以前から興味はあったのですが今までタイミングが合わず今回が初見になります。
元々は3ピースで活動しているとお伺いしておりましたが、最近の公演ではサポートギタリストを加えた4人体制でライブしております。今回出演した近しいジャンルのバンドもそうですが、エモ・激情ハードコアは生で観てこそその迫力や感情の開放が伝わるのですが彼らも例外ではなく、Vo. 駿平の最後の「俺らは生きてる...!」とオーディエンスに問いかけるMCは観ていて興奮を隠すことが出来ませんでした。また、これはYoutubeでのライブ映像でもそうですが、シンプルながらも力強さが伝わるドラミングをひしひしと感じます。
THE MAYTH
火影側の2番手は香川県高松市を拠点に、潮騒フェスの主催やコンピ参加など香川を盛り上げるべく活動を続けるメロディックハードコアTHE MAYTH。香川のレーベルImpulse Recordsとのつながりで、先日出したEP ''Into the Dawn'' のリリースツアー大阪編として今回のKEEP AND WALKに出演が決定したそうです。メロディックハードコアと銘打ってますが、メロディックパンク/エモ/メタルコア/など様々なバックグラウンドを感じさせるハイブリッドなバンドです。
前回の新曲紹介でも取り上げた ''Into the Dawn'' からも何曲か選出 / さらにはまだ未発表曲とされる ''Stella'' もセットリストに取り入れた、メタリックな要素を入れながらもBPM早めに駆け抜ける疾走感が特徴的な曲調、Vo. Hassieのエネルギッシュな歌声と楽器隊のシンガロングコーラスの掛け合いには拳を掲げっぱなしでした。音源聴いているときはあまり気づきませんでしたが、メジャーキーの楽曲が多いのかところどころイージーコアリスナーには刺さりそうなところあるかもしれません。
Dr. Atsuki始めメンバーの何人かと実際会って話しましたが、今回の新譜の紹介記事を読んでいただけているようで「見事にバックグラウンド見抜かれてます...」とのお言葉をいただきました。本当にありがとうございます。
BEKSIN DA KULT
東京を拠点に活動するハードコアバンドBEKSIN DA KULTが初めて大阪に上陸。昨年9月に始動したばかりのバンドで、下北沢で始動企画を行った時にはダークハードコアOtusやデスメタリックハードコアHORSEHEAD NEBULA & KRUELTYも出演していた記憶があります。また、エモーショナルロックバンドsethやハードコアバンドHOTVOXで活動しているメンバーも掛け持ちで在籍しており、それらのバンドの作風とは全く違う印象を持っています。
筆者は1st Demo「濁世にかかる月虹」を持っていないうえ、全く予備知識ゼロでライブを観たので素朴な第一印象で間違っていたら申し訳ないのですが、ポストブラック影響下のブラストビート / 高摩擦トレモロリフ ~ ニュースクールハードコアでも見られるメタリックな単音リフを用いた楽曲陣はハードコアキッズがぶち上がること間違いないと思います。ハードコアバンドと評されているものの、ジャンルを問わずライブしている印象があるのでメタル・エモリスナーにもアプローチできる要素もあるかもしれません。
Embrace The Wings
Embrace The Wingsも大阪初上陸でした。盟友IRISのラストライブになった ''Today Is Yesterday's Tomorrow Vol.4'' でその情熱あふれる初ライブの様子を見ることができますが、日本のメロディックハードコアではいま最も注目すべき存在かもしれません。活動から半年経ってませんが、Vo. プロテイン太郎 & Dr. Masato(Ex. Nimbus)以外のメンバーはHopeless Ravenやmakeshiftなどの叙情ハードコアバンドでも活動しており、初リリースのEPも礎(いつもお世話になってる大阪のCD屋)でも人気だったとのこと。
メタリックなパートと2ビートを織り交ぜながら、熱いメロディックなリードギターに拳を掲げずにはいられません。Vo.のプロテイン太郎の力強いボーカルアプローチと聞き手の胸を打つポエトリーリーディング、映像は見ていたのですが生で観ていると圧倒されましたね。特にEPのフィジカル盤のみに収録されていて今回のセットリストの最後に披露した ''Slaves'' は素晴らしいです。あとプロテイン太郎とMasatoは ''Today Is Yesterday's Tomorrow'' Tシャツ着てましたね。
今回のライブでもやりましたが、Misery Signals & 初期Crystal Lakeリスペクトな新曲をレコーディングしているとかしていないとか...。
Oaktails
東京を拠点に活動している激情ハードコアバンドOaktails。Vo. Humのパッショネイトなシャウトボーカルから語り掛けるようなスポークンパートと、Defeater, Touche Amoreあたりの哀愁溢れる繊細なメロディ~ほの暗いアグレッシブネスの対比が美しい「躁鬱を音楽で表現したしたような」楽曲が特徴の美しいバンドです。前回大阪でライブした時、Vo. Humはあらぶり過ぎて膝を断裂して帰ったのですが、今回は五体満足で大阪を出られるのはヒヤヒヤしていました。
火影と言えばゼロ距離のフロアライブで、バンドのパフォーマンスの「生」の部分が脚色なく見えるのが一番の特徴なんですが、Oaktailsとの相性は前述の通りベストマッチでした。Gt./Cho.のIssayがギターを振り回したり、跪いたりするのもOaktailsのライブの見どころなのですが、ゼロ距離の火影ではいつバランス崩して客席に倒れ込んでもおかしくない感じでヒヤヒヤしながら観てました。「今日ここにいることは間違いじゃない」とHumがMCで言ってましたが、今回は伝説残しましたね。
あと、代表曲 ''Unchanged'' 初めてライブで観ました。この曲が一番Oaktailsの上記の音楽性を体現していると思ってますが、その静寂と轟音が構築するドラマは震えます。
bacho
姫路のオルタナティブ/エモーショナルロックバンド・bachoを恥ずかしながら今回初めて生でライブを観ました。ライブを観ている人であれば「今更?」って言うかもしれませんが、このバンドの一番の魅力は楽曲ごとに作詞作曲をされているGt/Vo. 北畑欽也の直球過ぎるストレートな歌詞だと思っており、葛藤や切望感を吐露する自問自答スタイルのそれは、今何かに躓いている方や挫折・苦難を経験した方の心の奥底に響くものがあります。
今回は火影でのライブでしたが、おそらく今日一番人の入りが多かったように思えます。筆者は火影のステージエリアと対角の場所で観ていたのですが、「bachoのライブはいつも3:7くらいで男性が多い」という印象がまさに当てはまるほど男の子の心にグサッとくるようなものがありました。bachoの熱いパフォーマンスに負けないくらいオーディエンスの盛り上がりも尋常ではなく、もう節々で全力シンガロングが聞こえましたね...。特にセットリストの最後(だよね?)で披露した ''Boy Meets Music'' は本当にすごかったです。多分オーディエンスの中には泣いている人もいたとか。
くだらない1日
東京を拠点に活動しており、現在エモ・オルタナだけでなくハードコアリスナーの間でも話題沸騰中のくだらない1日を始めて観ました。2020年頃から先述のIRISとこのバンドと親交があり、その頃から名前は知っていてかねてから気になっていました。アメリカ中西部系のエモ~激情ハードコアあたりの影響を感じる楽曲やポエトリーリーディングなどを取り入れたVo/Gt. 高値のボーカルスタイルが特徴的です。
4/29にリリースされたフルアルバム ''rebound'' を引っ提げて春夏ツアーを回っている最中であり、今回の公演はツアー大阪編になります。今バンド史上一番勢いに乗っているタイミングなので注目していたオーディエンスも多かった印象です。MVにもなった「やるせない」「力水」や、American Footballのインスパイアと思われる「アメフト部」、そしてなぜか治外法権ムーブが発生した「レッドアイズオルタナティブブラックドラゴン」など、ハードコアやポストロック要素も垣間見える楽曲の引き出しの多さには驚きました。
F.P
火影側のトリ前は京都発メロディックハードコアF.P。新曲紹介でも取り上げた通り、先月3rd EP ''I repeat the same question again'' をリリースしたばかりですが、年齢と経験を積み重ねたことで表現力や感情を刺激するドラマ性は繊細かつ深みが増し、さらに前のめりの疾走感だけなく''引き'' や ''タメ'' を活かしたグルーヴィーでメロウな展開を巧みに引き出しているのも、F.Pというバンドが大きく成長したところではないかと思います。先日京都METROで行われたレコ発も盛り上がっていたと聞いています。
5月下旬からVo. Juntaroが2年間イギリスに行くこともありライブ活動休止が近い中で初のKEEP AND WALK出演を果たしたF.P、最近の定番曲であろう ''Mold'' ''Misb(ego)t'' や Juntaroのクリーンボーカルも飛び出してくる ''Transcendence'' などは、疾走パートが多い過去作とのコントラストがライブだとより鮮明に映ります ''モッシュできない現状でも楽しめるような、踊れるグルーヴィーな楽曲'' でも作風が大きくぶれない絶妙な匙加減は流石でした。
筆者は今回の公演で当分見納めですが、今週末は5/14@大阪Club Stomp / 5/15@スタジオ246 KYOTOの2公演があるので見逃した方は是非足を運んでみてください。
EDGE OF SPIRIT
新神楽側のトリは1990年代後半から活躍しているハードコアの重鎮EDGE OF SPIRIT、メジャーデビューやオーストラリア・カナダ・アメリカツアーも経験しているベテランメタリックハードコアです。現在はSANDのVo. MakotoのレーベルFurious Recordに所属しております。
筆者は恥ずかしながら初めてEDGE OF SPIRITを観たのですが、最初のVo. Shoの咆哮と楽器隊の爆音で新神楽のビルが倒壊しないか死の危険を感じました。暴力的なビートダウンや単音リフを活用した楽曲陣は今日一の殺気に満ち溢れていました。「(お客には関係ないけど)板の上では必ず勝敗がある」というVo. Shoのインタビューでの発言通り、どのバンドにも負けないくらいの迫力があって怖かったですが、ライブの最後にやった楽曲はエモーショナルなドラマ性を前面に押し出していている一面も見受けられました。
後々知ったのですが、リハーサル無し & サウンドチェックもモニターの注文も外音のチェックも一切無しですぐにライブを始めた様子。爆音ではあるもののそれでも音が悪い様子に感じなかったのは彼らと新神楽のツーカーっぷりが冴え渡っていたからなのでしょうか?
FIVE NO RISK
火影側の大トリはロックンロール、パンク、レゲエ、ブルースなど様々なジャンルの音楽の要素を吸収し、自分たち独自のサウンドに昇華しているFIVE NO RISKでした。全国各地で多いときは年間100本近くライブをしており、その圧倒的なライブパフォーマンスは幅広いジャンルのリスナーだけでなく、バンド/アーティストからの支持も厚いことで知られています。筆者は昨年末にStrandedとRiTTLEBOYがスプリットEP ''flat side'' リリースツアー振り替えで大阪来た時に初めて観ましたが、キャリアだけでなくライブを積みかねている確かなパフォーマンスに圧倒されました。
今回の公演でもそのキャリアとファンベースのアツさゆえに盛り上がりも相当なもので、ロックンロール/ハードコアパンク精神を絵に描いたような爆走チューンはもちろん、中年男性の抱える苦悩や不安や葛藤などをエモーショナルな歌謡メロディに載せて歌ったりなど、永遠にクロスオーバーし続けるFIVE NO RISKの進化も垣間見えます。結成から18年間歩みを止めず活動を続けてきた「KEEP AND WALK...歩き続けることが大事やと、何回でも言おうや!!」と語り掛けるVo. 鉄平のMCはKEEP AND WALKの最後に相応しい締めくくりでした。
末筆
というわけで、若手からベテランまでハードコア/パンクバンドが大集合のKEEP AND WALK 15th Anniversary Osaka Editionは大盛り上がりで締めくくられました。ZOUZANとTHRHを見逃してしまったため、実際にライブを観た12バンドの感想になり大変申し訳ないのですが、個人的には普段なかなか観れないバンドを一気に観ることが出来て大変楽しい一日でした。
自分よりかなり年上のバンドの方々も多く、自分のような若造(30近いですが)が何語ってんねんって話ではありますが、それでもこんな楽しい一日を「ただ楽しかった」とツイートして終わらせたくなかったため、こうして記事にして残させていただきました。
個人的に次回大阪で開催するときはRiTTLEBOY, Stranded, to overflow evidence, Fall of Tears, Outside Her Visionあたりも是非...と思っておりますが、いずれは本拠地の東京編も遊びに行きたいです。
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