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大型イベントをオンラインイベントに企画し直す際に気をつけたこと

6月7月と3日に渡って、オンラインの大規模イベントを実施しました。自身としてはリアルイベントでも達成したことのないような人数の参加登録(1700近く)と1日の延べライブ視聴者人数(900近く)を実現できました。自分自身だけでなく、企画を叩いて頂いた社内関係者やイベントの実施を支援してくれたベンダーさんのおかげでもあるのですが、今後オンラインイベントが引き続き常態になるとも思うので、企画時に気をつけたことをご紹介したいと思います。

前提:年イチのイベント

元々このイベントは1年に1回実施するイベントで、ユーザーコミュニティ主体のイベントとは別で、僕が所属する会社が予算を投資して実施するイベントです。したがって立ち位置としては、会社として行いたいブランディングメッセージの展開、活用事例やソリューション紹介による見込み案件の発掘、を行うのが主目的です※。これはどこの企業も予算を使うなら同じようなことを考えると思います。

※ユーザ自身がボランティアベースで行うコミュニティ系のイベントではないです

企画開始は2月から

さて、1年に1回実施するイベントで春〜初夏くらいの時期に毎年(2020年が3年目)実施しているので、自ずと半年前の2月頃から企画をはじめていました。2月といえばまだ新型コロナウイルスが日本ではほぼ広がっていない頃で、今後どうなるかもわからない状況だったと思います。

オンライン配信が多くの人に視聴してもらえるという性質(僕はこれをスケーラビリティが効いていると表現してます)を実践から学んでいたので、リアル+オンラインでのイベントを企画していました。ただ、この時点ではリアル中心の思考で、オンラインはあくまでもスケーラビリティを効かせるため、つまり広くの人にリーチすることを目的としていただけでした。

ターゲット聴講者と誘発したい行動

リアルのイベント企画に慣れている方は自ずと実践していると思いますが、イベントを実施する際には上記したような内部的な目的(会社として達成すべきこと)から、外部に目を向ける必要があります。外部に目を向ける、とは<誰に参加して欲しいのか>と<参加したあとにどのような行動をして欲しいのか>を決めることだと考えています。

企画当初はこれらをまず明確にすることからはじめました。そしてここで揉んだ<ターゲット聴講者>と<誘発したい行動>については、オンライン一本にすると決断した3月末にも変えることはありませんでした。

なので、企画については、リアルイベントでの企画と同じように考えればいいということです。ただ、(自分もたまに陥るのですが)やはり内部的な目的に引っ張られすぎて、あるいは、オンラインでイベントをやるからと斜に構えすぎて、<ターゲット聴講者>と<誘発したい行動>の視点をわすれてしまうこともあると思うので改めて整理すると良いと思います。

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オンラインイベント一本に変更

オンラインイベント一本にしなければならない、と決断したのは3月の最終週で、スポンサーを募ったり講演者を募ったりするには少しギリギリのスケジュール感になっていたときでした。まだ3月で先行きが不透明(もしかしたら6月にはリアルイベントをできるかもとも少し思っていた)な頃でした。会社の方針は月1でアップデートされることで、先行きが見えない(=リスク)ことから、オンラインイベント一本にしようと腹を括ったタイミングです。

3月最終週にオンライン一本にしようと決断する際に考えたことが、以下のようなことです。

・オンラインだけになると何が失われるのか?
・オンラインイベントだとリアルと比較して何がより良くなるのか?
・オンラインでもリアル感のあるものにするにはどうするか?

それぞれについて具体的にご紹介してみたいと思います。

オンラインだけになると何が失われるのか?

オンラインに腹をくくらなければならなそうだと思ったとき、まず真っ先に考えたのが、「オンラインだけになると何が失われるのだろうか?」ということです。例えば以下のようなことがあるのではないかと考えました。

しっかり予定を入れなくなる

リアルイベントではわざわざ時間をとって、その場に来て、聴講する。わざわざ時間を取るので、しっかり日程を確認して早めに予定を押さえておく。中には勉強会のようなイベントごとは業務として認められておらず有給を取る人もいる。


当日参加する意識が感じられにくい

「どうせ収録されたやつが後日見れるだろうし、登録だけはするけど、当日参加はいいや」となってしまう。作業しながら聞いたりしやすい(誰の目もない)ので、セッションをちゃんと聞いてくれなくなる可能性がある。

ライブ感が失われる

リアルイベントだと会場の満場感や、拍手などの演出により、「盛り上がっている感」が作れる※。そのため、初参加した人や当事者意識がないような人もモチベートしやすい。他の作業をしながら試聴するということもあり得るので「集中力」も失われやすい。
※もちろん本当に聴講者が感動していることもある

人と人の交流

参加者同士はもちろん難しいし(リアルでも難しいのですが)、参加者がブースに立ち寄って話を聞くとか、講演者を見つけて声をかけるとか、そういったことがしにくくなる。

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上記以外にもありそうだが、おそらく主要な内容だと思います。

これらをリスクとして理解し、オンラインではこれらのどこを失っても良いものか、どれは失ってはいけないのかを意識することが重要だと思います。

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オンラインイベントだと
リアルと比較して何がより良くなるのか。

次に、オンラインイベントで良くなることを整理しました。

キャパ制限がほぼない

リアルイベントだと、どうしても会場の収容人数を見て、300名なら歩留まり5割と見て600名までしか登録してもらえない。デジタルだと基本的には制限がない※。

※オンラインイベントでも、システムやサービスによっては制限があるので、実は”ただしお金があれば”の条件付き

情報が拡散しやすい

そもそもオンラインでのイベントなのでTwitterのハッシュタグなどで情報が広がりやすい。

気軽に参加登録できる

直前や当日に知り、たまたま予定が空いていたのでなどの理由で直前に参加登録する人もいる。オンデマンドでの展開をした場合、当日は参加できなくとも、後日試聴という形で一旦参加登録してもらう可能。

オンデマンド配信によるロングテール

オンデマンドで動画を展開することで、ライブ配信時は認知しておらず、1ヶ月後に気づいたという人にもリーチできる。

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オンラインでもリアル感のあるものにするにはどうすべきか

最後に、上述してきた、オンラインになることでのデメリット、メリットを総合的に評価すると共に、企画時に考えていた方向性にあった内容で、オンラインでもリアル感のあるもの、むしろオンラインの方が双方向であることを実現するために以下を考えました。

講演者へのQA時間をしっかり取る

実はリアルイベントだと会場の時間制約などもあり、一方通行になっているイベントも多いと思う。また、日本人の性格の問題か、手を挙げて質問することが難しかったりする。オンラインで仕組みを使えば、匿名で質問もできる。

また、リアルだとなかなか講演者が捕まらないなどの理由で結局質問できずだったり、並んで個別に質問する結果他の人の有用な質問への回答が聞けないなどのデメリットがあったと思います。このことを考えると、オンラインでのQA時間はたとえ10分であっても希少価値高い、当日参加する理由の一つになると感じました。

超インタラクティブな場(Ask the Expert)を裏番組で用意する

QAの時間はもちろんですが、より踏み込んだ質問をしたいというニーズもあるという点、集中力が低くなるならそれを逆手に取り表と裏を行き来できるようにすればいいのではと考えました。たまたま、今回利用したサービスがチャンネルを2つ行き来するようなUIにできたので、Ask the Expertという質疑応答のみ実施する裏番組を用意しました。多い会で100人以上が視聴していたりと非常に有効だったと思います。

参加するモチベーションを作る&離脱対策

登録時に「あなたの自動化ストーリー」という形で自由回答で記入してもらうことで、「自分はこの位置にいて、どこかにいきたい」のような思いをもたせることをやってみた。すべてのコメントは使えなかったが、その内容を休憩時間中の離脱対策のトピックとした。コメントをトピックとする雑談はリアルタイムで配信することで視聴し続ける意味を作った。

振り返りの時間をとる

これは昨年にリアルでも同じことをしたのですが、やはり主催者として参加者(聴講者)には次のアクションへつなげて欲しいという理由からやってみたものでした(これは自社製品を使うだけでなく、様々な気付きがあり何かアクションを取ろうと思って欲しい)。

オンラインではさらに、「ちょうどチャットに返答していて聞いていなかった」などのような”ながら視聴”が多数ありそうだったので、クロージングとして、振り返りをする時間を設けました。振り返りの時間に使ったグラフィックレコーディングが好評だったので、振り返りの時間事態も良かったものと捉えています。

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さいごに

リアルでもしっかりと企画を考えている人は「それやってるよ」という話が多かったかもしれません。ただ、自分自身も期限や予算を意識すると焦った勢いで、内部的な目標だけに気を取られて、何を達成すべきか、何が障壁なのか、何を有効活用できそうなのか、というところを考えずに進めてしまうこともあります。オンラインが常態になりつつある今、改めて企画を丁寧に考えていくことが重要なのではないかなと思っています。

最後に、このイベントを企画する前にちょうど出版され、読んだ『最高の集い方』という本にあった以下がイベントを実施する人々にとって重要な要素ではないかと提示して今回の記事を締めようと思います。

裏方に徹しない

イベント担当者はどうしてもロジ周りの調整が大変ですし、そこにスペシャリティを持った方が多いと思うのですが、イベントを主催する担当者自身が参加者の責任を負っている、と思うと参加者に寄り添ったイベントができると思いますし、それによる効果は絶大なものではないかなと思います。まるで、参加者を仲間のように考えると、自ずと良い企画が考えられると信じてます。短絡的かもしれませんが。

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