ふじたにおさむ

小説家です。おもしろい小説を専門に書いています。

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最近の記事

『口訳古事記』にお礼が言いたい

 町田康氏の新作『口訳古事記』の感想が書きたいのですが、うまく書ける自信がありません。なぜなら僕に学がないからです。  日本最古の文書であるところの『古事記』、その現代語訳について何事か書くとなれば、『古事記』について何事か知っていなければならないのは、当然です。  ところが僕は『古事記』のことが、全然判らないのです。  本は何種類か持っていて、何度か読んだこともあるのですが、何が書いてあるのか、理解できたと思えたことは一度もありません。  我ながら情けないと思うのですが、僕

    • 『NOPE』の衝撃

      アマゾンプライムで『NOPE』を観ました。すばらしいっ。 この映画を作った監督のほかの映画は、怖いらしいので観ておりません。この映画も恐そうで観るのに躊躇したのですが、妻が観ろ観ろというので(滅多にないことです)、ガマンして見始めました。 UFOの映画なんで、そこは大好物なんですけど、ボク怖いのホント駄目なんですよ。 実際、最初の方は、なんか怖かった。指のあいだから観ていました。 したっけ、これあんまり怖くないの。 っていうか、腹抱えて笑う映画なの。 っていうか、

      • NHK‐BS『犬神家の一族』を一気に見ましたので、原作も再読しました。

         録画してあったNHK‐BS『犬神家の一族』を一気に見ました。大いに堪能しました。以下、ネタバレを含めて勝手に感想を書いていきます。一方で登場人物やあらすじの説明は思いっきり省略します。つまり以下は『犬神家の一族』については、誰もが充分に知っている、という前提で書かれております。  まず何といっても小林靖子さんのシナリオが良かった。  原作はさまざまに魅力のある小説ですが、今回のドラマでは、小説の「地獄のホームドラマ」とでもいうべき側面を強調している感じでした。  原作の人

        • 2023年5月に『森のバルコニー』を読むという悦楽と不安

           この数日――ゴールデンウイーク、っていうんですってね――は、村上春樹氏の新作をあいだに挟みつつ、しかしほかのことはほぼ忘れて、ひたすらジュリアン・グラックの『森のバルコニー』を読むという、ほとんど法悦と言っていい喜びの時を過ごしました。  グラックを読むようになったのは、50歳を過ぎてからです。調べてみると『シルトの岸辺』と『アルゴールの城にて』の岩波文庫版が出たのが2014年で、それ以来です。 『シルトの岸辺』の衝撃は今でも僕の中で振動し続けています。こんな小説が本当にあ

        『口訳古事記』にお礼が言いたい

          『街とその不確かな壁』のいいところと、なんか変なところ。

           村上春樹氏の新刊『街とその不確かな壁』(新潮社)を読み終わりまして、いろいろ思うところあったので、雑多に書き並べてみます。  村上春樹氏が1200枚の書き下ろし小説を出す、ということは、やはり大きな事件だと思います。1979年のデビュー以来、その小説の影響力は国際的なものだし、愛読者も非常に多い。新作も大いに注目され、売れ行きも悪くなさそうです。  僕も影響を受けました。受けないようにしようと思っても、受けてしまったようです。1979年は僕が16歳になった年です。影響を受け

          『街とその不確かな壁』のいいところと、なんか変なところ。