2023年5月に『森のバルコニー』を読むという悦楽と不安
この数日――ゴールデンウイーク、っていうんですってね――は、村上春樹氏の新作をあいだに挟みつつ、しかしほかのことはほぼ忘れて、ひたすらジュリアン・グラックの『森のバルコニー』を読むという、ほとんど法悦と言っていい喜びの時を過ごしました。
グラックを読むようになったのは、50歳を過ぎてからです。調べてみると『シルトの岸辺』と『アルゴールの城にて』の岩波文庫版が出たのが2014年で、それ以来です。
『シルトの岸辺』の衝撃は今でも僕の中で振動し続けています。こんな小説が本当にあ