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顧客離れの原因は「ブランドの記憶」の無視にあった

こんにちは。FICC BXクリエイティブ事業部の小林です。

みなさんは、顧客が離れる原因はどこにあると思いますか?

1.接触頻度の低下
2.消費者が持つ商品のイメージとの不一致
3.代替となる競合商品の出現

などその原因はさまざまですが、ブランドの概念から考えるとその要因は概ね一つになります。それは「商品の意味 / 記憶」が顧客の中で蓄積していないからです。本記事では、なぜブランドの顧客が離れるのか「商品の意味 / 記憶」という観点から考察し、具体的な失敗パターンと共にその原因を探っていきます。

顧客離れを防ぐのに、なぜ「商品の意味 / 記憶」の蓄積が大切か?

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FICC BX事業部では、ブランドとは消費者の頭の中の「商品の意味/記憶」と考えています。

例えばカップヌードルなら、王道・定番の味・手軽などの意味が消費者によって付与されています。しかし、もしその意味/記憶が消費者の頭の中から失われた場合、ブランドとしてのカップヌードルは存在しなくなり、消費者に見向きもされなくなるでしょう。

一方、その「商品の意味/記憶」が好意的で強力なものであれば、競合が自社と同じだけプロモーションを行なっていたとしても、自社のブランドが選ばれる可能性が高まると言えます。

つまり、顧客離れが起きるときは往々にして、

1.接触頻度の低下
…「商品の意味/記憶」が十分に蓄積されていない
2.消費者が持つ商品のイメージとの不一致
…消費者に一度定着した「商品の意味/記憶」を変える
3.代替となる競合商品の出現
…「商品の意味/記憶」が他のものに入れ替わってしまう

など「商品の意味/記憶」の存在を考慮していないことが原因によるものが多いのです。

顧客が離れる失敗パターン 3例

では、顧客が離れてしまう代表的な失敗パターンを「商品の意味 / 記憶」の観点から具体的に考えてみましょう。 

1.有名人の起用が短期的すぎて蓄積した「商品の意味 / 記憶」が十分に生かされない

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認知獲得のために、有名人やキャラクターの知名度や好感度を活用することは、戦術の選択肢の一つです。また有名人当人が持つエクイティによって、ブランドのメッセージや世界観をより直感的に伝えることができます

通信キャリアのソフトバンクやauは、それぞれ「白戸家」、「三太郎」といったキャラクターを超長期的に活用し続けています。それにより、サービス/料金的には同質化している市場において、機能や性能で勝負することなく、ブランドへの好感度やロイヤリティの獲得を行なっています。

さらにもうひとつ工夫が。彼らは俳優を「そのままに出す」ということはしていません。独自の世界観のなかで役割を演じさせています。そうすることにより、俳優のエクイティをCMにつなぎ、好感を引き継ぐというはたらきが生まれます。

「白戸家」のようにブランドの顔を生み出すことはもちろん容易ではありませんが、長期的な視点で見た場合、話題の有名人を短期的に起用している他のブランドのCMと比較すると、蓄積される「商品の意味・記憶」の差は明らかでしょう

2.リニューアルによって既に蓄積していた「商品の意味 / 記憶」を失ってしまう

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ブランドのリニューアルを図ることは必ずしも悪いことではありませんが、それによって消費者の中にある「商品の意味 / 記憶」が失われるリスクを十分に考慮する必要があります。

コカ・コーラは、リニューアルが失敗したエピソードを自社サイトで紹介しています。1985年4月、彼らは売り上げ低迷へのテコ入れのためにレシピやパッケージを刷新、従来のコカ・コーラを終売して「ニュー・コーク」を発売しました。すると、従来製品の買い占めが発生、コカ・コーラが失われることへのクレームが最大で1日/1500件にまで跳ね上がるという記録的な騒動に。最終的にコカ・コーラは同年の7月に味とブランドを戻すことを決断し発表しました。

このエピソードは、ブランドが消費者の頭の中にある「商品の意味 / 記憶」と密接に関わっていること、そして消費者の「意味を思い出させるためのラベル」であるロゴ / パッケージ、消費者の中にある「意味 / 記憶」を構成する商品の機能・性能を安易に変更することのリスクを実感させます。

コカ・コーラの場合は、リニューアル前の状態に戻すことで、なんとか顧客離れを防ぎましたが、ブランドによっては売上20%減や株価急落など大きな打撃を受けている会社もあります。その他の事例についてはこちらの記事でご紹介しています。

3.価格 / 機能という代替が現れやすい領域で「商品の意味 / 記憶」を蓄積してしまう

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価格 / 機能 の訴求は、競合に真似されやすく、同質化されてしまう恐れがあります。

価格の訴求といえば、記憶に新しいのが2000年頃から10年以上もの間繰り返された牛丼チェーン店による価格競争。競争が激化した結果、一時は各社の牛丼並は1杯250〜280円程度で販売されることになりました。その後は、各社の売上、客数ともに苦戦が続き、市場全体の成長も減速していくことに。こうした苦難の時を経て、現在は「豊富なメニューの松屋」「ファミリー層向けのすき家」など、各社で価格以外の強みを活かした道の模索が進んでいます。

この例からも分かるように、価格 / 機能の勝負は消費者のニーズを満たしますが、「商品の意味 / 記憶」という点では代替が現れやすく、消費者と持続的な関係性を育むことは難しくなります。

こうした価格 / 機能の勝負から抜け出すための方法として、FICC BXではベネフィット(=ターゲットがなりたい自己像)というブランドの概念を活用したコミュニケーションを重視しています。ベネフィットについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

「商品の意味 / 記憶」を蓄積するためには、ブランドが持つ資産を明らかにすること

では、「商品の意味 / 記憶」を蓄積するためには、どうすればよいのでしょうか。

FICC BX事業部では、まずブランドがもつ資源を明らかにすることが大事だと考え、クー・マーケティング・カンパニーの音部大輔氏によって考案されたブランドの設計図「ブランドホロタイプ®︎・モデル」というフレームワークを活用しています。(詳しいサービスはこちらから)

ブランドホロタイプ®︎・モデル

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このフレームワークでは、ブランドを構成する要素を8つに分けて整理をし、ブランド戦略を設計します。

ブランドの社会における存在意義(=パーパス)を明確にし、ブランドがもっている資源を整理することで、ブランドを成長させるために、ブランドとしてどんな意味 / 記憶を一貫して伝えながら、新たなターゲットを獲得するためにどんなアクションを取るべきかが見えてくるのです。

ブランドの資源を明確にすることで、一貫したブランドメッセージを届けられるようになれば、10年以上に渡るブランドの発展のベースができます。

ブランドホロタイプ®︎・モデルの各要素の説明はこちらのブログで紹介しています。みなさんもこの機会にブランドが持つ資産を整理してみてはいかがでしょうか。

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