幽霊の存在を初めて信じたくなった。
私は幽霊の存在を認めたくなかった、先日までは。
ホラーがとにかくダメで、幽霊なんて怖くて信じたくなかった。でも完全に信じないでいることはできず、夜道を歩けば「角を曲がったらいるかも…」なんて考えてはビクビクしていた。
そもそも幽霊とは、亡くなった人の魂がなにか思い残すことがあるなどの理由でこの世に留まってしまい現れる存在のことだ。俗説ではその姿は半透明だとか、真っ白だとか言われていて、物を貫通したり宙に浮いたりといった特性が挙げられることが多い。
ホラー作品では恨みなどを持って襲ってきたりもするが、先立った身近な人が死後も傍にいて寄り添ってくるような見方もある。後者については「幽霊」という考えはなくとも信じている人は多いと思う。
しかし今回信じたくなったのは、亡くなった祖母を近くに感じたいからではない。(祖母を蔑ろにする意図は一切ない。)
私たち人類の文明は文字通り日進月歩で発展している。特に私が身を置くIT分野はたかが50年前後の間に魔法のような進化を遂げており、今なお様々な技術革新が行われている。
生活も、芸術も、風習も、社会の制度も、過去ではアイデアも技術もなく実現できなかったことがどんどん現実化している。
それと同時に問題も増えている。
環境、人権、食料、動物、そして戦争。
これらの変化はいつまで続くのだろうか。
人類はあと何年生存していられるのだろうか。
いつか人類にも終わりが来る。
私は、その最終回を見てみたいと思う。
いや、そんなに大げさじゃなくていい。
例えば、私の愛するゲームは100年後の世界ではどうなっているのか、そもそも存在しているのか、そんなことだって気になる。映画も音楽も、農業も工業も、交通機関もコンピュータも、100年もすればさらに魔法のようになっていると思う。
でも、私はほぼ確実に100年以内に死ぬ。それから先の将来を見たいのに。
ここで、永遠に世の中を観察できそうな方法を思い出した。
幽霊になった後もこの世をさまよい続けることだ。
死後、自身が幽霊となりその特性を生かし数百年、いや数千年と人類の進化を見届ける。私はそれに触れられなくてもいい。何が原因で人類が一丸となり、何が原因で滅びていくのか。一つ一つ見届けたい。
この私の願望を達成するには、幽霊という存在を認めることが前提になる。ここで初めて、未来を永久に観察できるという希望を持つためにも信じてみようかなと思った。あんなに頑なに否定し続けていた幽霊を。
私が死んだら、幽霊として現世にとどめてください、仏様。
さあて、死後が楽しみだ。
…でも、やっぱり怖いから、まだギリギリまで認めないでおこうかな。
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