大腿筋膜張筋は、どんな時に問題となるのか
前回の記事で大腿筋膜張筋の機能についてまとめました。
前回の記事はこちら↓
で、大腿筋膜張筋は、股関節と膝関節を外側から支える機能があり、必ずしも問題とはならないということを述べました。
ではでは、
どんな時に大腿筋膜張筋は、身体に悪影響を及ぼすのでしょうか?
ということで今回の記事は、
どんな時に大腿筋膜張筋が問題となるか、
そしてそのアプローチについて
まとめていきましょう。
可動域制限と大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋は、2関節筋であるため、股関節、膝関節の両方の可動域制限に関与します。
股関節に対する作用は、屈曲・外転・内旋なので
股関節伸展・内転・外旋方向の制限因子
となります。
続いて、膝関節の可動域制限について。
膝関節に関しては、
屈曲制限・伸展制限どちらも制限因子となります。
さらに、膝蓋骨の可動性の制限にも関与します。
まずは、『 屈曲制限 』に関与する理由について
まず、膝関節屈曲には、下腿の内旋運動が伴います。
大腿筋膜張筋は、下腿外旋作用があるため、この内旋作用を制限する要因となります。
また腸脛靭帯は、下記のように緊張が変化といわれています。
●膝伸展位 → 前方部が緊張
●膝屈曲位 → 後方部が緊張
●膝屈曲100° → 全体が弛緩
膝屈曲に伴って後方部が緊張するため、大腿筋膜張筋は屈曲を制限する要因となります。
ただ、
屈曲100°を超えると全体として弛緩するので、深屈曲を行う際はあまり制限因子とならないことが考えられます。
膝関節屈曲100°より前で制限されているのか、後で制限されているのかで大腿筋膜張筋が影響しているかどうかを見分けるポイントになりそうですね!
次に『 伸展制限 』について。
上記でも記した通り、伸展位では前方部が緊張するため伸展制限の要因となります。
もう一つ、伸展制限に影響するのが大腿筋膜張筋など外側組織による下腿の過外旋。大腿筋膜張筋が膝屈曲位で下腿外旋作用があり、過緊張となっている場合、下腿が外旋・後方に変位するともいわれています。
下腿が過外旋していて、伸展が制限されている場合は、大腿筋膜張筋が制限因子となている場合が多いのでチェックしてみるのがいいですね。
最後に『 膝蓋骨の可動性の制限 』について。
前回の記事でも述べたように、腸脛靭帯の浅層は膝蓋骨に停止します。
腸脛靭帯の過緊張によって、膝蓋骨は外側変位、外方斜傾するともいわれています。つまり、膝蓋骨の内側への動きが制限されるということです。
上記のように、大腿筋膜張筋は、膝関節の可動域制限に大きく関与します。
腸脛靭帯炎と大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯が主な要因で生じる障害の一つとして、
『 腸脛靭帯炎 』があります。
膝の屈曲・伸展によって腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の上を乗り越える動作が繰り返されることで、圧迫・摩擦ストレスが加わり脂肪体や滑膜が炎症を起こし、痛みが生じる病態です。特に、ランナーに多いといわれていますね。
腸脛靭帯炎が発症する要因の一つとして、膝のアライメントが関与するといわれています。
その状態が『 knee-out、toe-in 』。
膝関節がknee-outやtoe-inのアライメントとなると下腿が内旋方向に強制されるように力が働きます。この下腿内旋を制御するために腸脛靭帯が過緊張となり、大腿骨外側上顆付近に圧迫・摩擦ストレスが加わりやすく、炎症が起きやすい状態になってしまします。
大腿筋膜張筋が過緊張になっているということだけでなく、上記のような膝のアライメントを呈していないかを確認する必要もありますね。
【 評価 】
◆Grasping test
大腿骨外側上顆付近で腸脛靭帯を圧迫しながら、屈曲・伸展を繰り返す。
痛みが出現した場合、陽性。
◆スクワッティングtest
検査側が前で、ランジ動作を行う。その際に、つま先に正面、内側、外側の3方向を向け行い、痛みの変化を確認する。
つま先内側で痛み増強 → 下腿内旋が強制、腸脛靭帯炎など
つま先外側で痛み増強 → 下腿外旋が強制、鵞足炎など
膝OAと大腿筋膜張筋
臨床では、膝OA患者で大腿筋膜張筋がパツパツに張っているなって感じることが多いのではないでしょうか。
なぜ、膝OAでは過緊張となって、なにが問題なのかをまとめていきます。
まず、大腿筋膜張筋が過緊張となる理由です。
膝OAでは、膝OAを有していない人より歩行中、大殿筋や中殿筋の筋活動が低く、大腿筋膜張筋の筋活動が高いといわれています。
ということは、大腿筋膜張筋が代償として働き、大殿筋・中殿筋の働きを補ってるということになります。なので、大腿筋膜張筋は過緊張となってしまいますが、身体を支えるのに大切な働きをしているのです。
では、
「なんで過緊張はよくないのか?」
について考えてみましょう。
それは、大腿筋膜張筋に膝屈曲位で下腿外旋作用があることが関係します。
膝OAでは、下腿の外旋角度が大きく、外旋角度は内反変形が大きくなるほど増加するといわれています。
ということは、下腿外旋が大きくなるとOAも進行していしまうことが考えられます。
膝OAでは、膝屈曲位となっている人がほとんど。
なので、大腿筋膜張筋は下腿外旋作用として働き、下腿外旋を助長するかたちとなり、膝OAの進行リスクとなるのです。
膝屈曲位(伸展制限)で大腿筋膜張筋が過緊張
↓
下腿外旋が助長され、大きくなる
↓
内反変形が大きくなり、膝OAが悪化
このように膝OAが進行する要因となるので、大腿筋膜張筋の過緊張はよくないです。
大腿筋膜張筋に対するアプローチ
上記で、大腿筋膜張筋が問題となる状態について述べました。
最後にどのようにアプローチしていくのがよいのかを下記にまとめました。
◆大腿筋膜張筋ストレッチ
◆膝伸展位とすること
◆股関節周囲筋・体幹筋の機能改善
◆大腿筋膜張筋ストレッチ
実際、大腿筋膜張筋が短縮している場合も多いと思います。
ストレッチは、一つ有効な手段です。
ただ、大腿筋膜張筋の過緊張は、結果として生じていることが多いのでストレッチだけでなく運動療法を一緒に取り入れることが大切です。
◆膝伸展位とすること
屈曲位だと下腿外旋作用が働いてしまうので、膝関節が完全伸展位とすることが大切。
最終的には、立位で完全伸展位をとれるようなアプローチが必要。
◆股関節周囲筋・体幹筋の機能改善
●股関節周囲筋(大殿筋・中殿筋・外旋筋など)の機能不全
●体幹筋の機能不全
これらがあると大腿筋膜張筋が優位に働きやすい状態になるといわれています。身体を保持できないので大腿筋膜張筋で代償して、頑張るって感じですね。
なので、股関節・体幹筋の機能不全があると大腿筋膜張筋はいつまでも頑張っていけないので、なかなか改善しません。
なので、運動療法で股関節・体幹筋の機能を改善する必要があります。
ストレッチだけではダメな理由は、これですね!
今回は、ここまで。
2回にわたって、大腿筋膜張筋についてまとめました。
よく問題に上がる筋の一つとして、大腿筋膜張筋にはどんな機能があり、なぜ問題になるのかを分かったうえで介入することが大切かなと思っています。
なんとなくは、できる限りなくしていきたいですね。
これからも頑張りますw
最後まで読んでいただきありがとうございました。
最後まで読んできただきありがとうございます。(^^♪ 理学療法士・ピラティスインストラクターの身体の専門家が有効な記事を皆様に届けます!!