大腿筋膜張筋の機能解剖
こんにちは、理学療法士の藤田(https://twitter.com/hiro24439725)です。
学生時代の実習でよく問題視される筋肉が『 大腿筋膜張筋 』
臨床に出ても、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯がパツパツに張っている人が多いです。
ただ、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯のストレッチやマッサージをしても、症状が改善されないことが多いです。
症状を改善するためのアプローチをするには、
大腿筋膜張筋の働きは、何か。どういう状態で問題となっているのか。
を詳しく知っておく必要がある感じました。
なので、
◆大腿筋膜張筋の機能解剖
◆大腿筋膜張筋が問題となる状態とアプローチ
の2回に分けてまとめていきます。
今回は、基本的な大腿筋膜張筋の機能解剖について。
大腿筋膜張筋の基本
まずは、基本的な解剖から。おさらい程度に行きましょう。
【起始】
上前腸骨棘、腸骨稜
【停止】
腸脛靭帯を介して、Gerdy結節、膝蓋骨、大腿骨外側上顆、外側筋間中隔
【作用】
股関節:屈曲、外転、内旋作用、股関節を外側から安定させる作用
膝関節:伸展位→膝伸展作用、内反制動
屈曲位→膝屈曲、下腿の外旋、後傾作用
【腸脛靭帯について深堀しよう】
大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘(ASIS)・腸骨稜から腸脛靭帯を介して、脛骨のGerdy結節に停止します。
これくらいは、基本的なことですよね。
では、
もう少し大腿筋膜張筋につながる腸脛靭帯について深堀してみましょう!
腸脛靭帯は、大腿筋膜張筋以外にも大殿筋や中殿筋からも繋がっています。
さらに、
腸脛靭帯は、大腿筋膜が靭帯様に硬くなったものとも言われており、伸張性には乏しい組織です。
なので、腸脛靭帯が硬くなっている場合は、腸脛靭帯自体が硬くなっているというよりも大腿筋膜張筋、中殿筋、大殿筋の硬さによって腸脛靭帯が緊張しているということになります。
腸脛靭帯だけをマッサージしてもあまり効果はないのは、起始部の筋の影響が大きいからですね。
次に、腸脛靭帯の遠位部の解剖について。
腸脛靭帯は、7つの繊維からなり、3層構造をしています。
浅層 :大腿筋膜張筋、殿筋表層の腱膜 → 膝蓋骨表層、外側
中間層:大腿筋膜張筋、大殿筋の腱膜 → Gerdy結節の前方
深層 :殿筋深層部の腱膜 → Gerdy結節の後方
上記のような3層構造で、浅層が膝蓋骨、中間・深層がGerdy結節に停止しています。
浅層が膝蓋骨に停止しているので、腸脛靭帯の過緊張は、下腿だけでなく膝蓋骨の動きの制限につながります。
また他にも、外側筋間中隔、外側広筋、大腿骨外側上顆(LCLと同部位付近)に停止するともいわれています。
このように、腸脛靭帯は外側広筋やLCLの動きにも関係してきそうですね。
ざっくりと簡単にまとめると大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の解剖のポイントとしては、
◆腸脛靭帯は、大腿筋膜張筋、中殿筋、大殿筋の影響を受ける
◆腸脛靭帯の硬さは、膝蓋骨、外側広筋、LCL、下腿の動きに影響する
ここらへんは、基礎として押さえておきたいですね。
大腿筋膜張筋の機能
次に、大腿筋膜張筋の作用について詳しく説明していきましょう。
【作用】
股関節:屈曲、外転、内旋作用、股関節を外側から安定させる作用
膝関節:伸展位→膝伸展作用、内反制動
屈曲位→膝屈曲、下腿の外旋、後傾作用
大腿筋膜張筋は、股関節と膝関節をまたぐ筋なので2関節筋になります。
なので、股関節にも作用しますし、膝関節にも作用します。
【 股関節に対する作用 】
股関節に対しては、屈曲・外転・内旋作用があります。
さらに、大転子を外側から股関節の中心に向かって抑え込み、股関節を安定させる作用もあるといわれています。
【 膝関節に対する作用 】
膝関節は、肢位によって作用が変化します。
◆伸展位→膝伸展作用、内反制動
◆屈曲位→膝屈曲作用、下腿の外旋、後傾作用
膝関節屈曲・伸展作用は、どの本を見ても明確に何度から伸展作用で、何度から屈曲作用なのかを詳しく明記されているものはありませんでした。
腸脛靭帯は、膝屈曲・伸展に伴って大腿骨外側上顆を乗り越えるようにスライドするといわれています。この外側上顆を境目として、運動軸が変化し、屈曲と伸展作用が切り替わるポイントになります。
この、大腿骨外側上顆を乗り越える膝関節の角度は、股関節の角度とも影響するといわれています。
股関節屈曲60° → 膝関節屈曲50°
股関節屈曲0 → 膝関節屈曲30°
目安として、だいたい上記の角度が外側上顆を乗り越えるポイントになるといわれています。
このように膝関節の屈曲・伸展作用は、股関節の影響を受けるので、詳しく明記されていないことが多いのかもしれません。
ただ、膝屈曲・伸展作用についてきましたが
膝の屈曲・伸展作用は大腿筋膜張筋においてあまり重要ではないです。
どちらかというと、
大腿筋膜張筋の作用としては、
◆伸展位→内反制動
◆屈曲位→下腿の外旋、後傾作用
の方を押せえておくことが大切です。
膝関節伸展位では、大腿筋膜張筋は内反制動として働きます。
膝完全伸展~屈曲30°の範囲では、内反制動の役割を担っているということ書いてある本もあります。
簡単にいうと、外側から膝を支える役割を担っています。
歩行などの動作で、身体を支えるのに重要な役割です。大切ですね。
次に、
屈曲位では、下腿外旋・後傾作用が働きます。
特に、この下腿外旋作用が問題になります。
下腿外旋症候群などの障害があるように過度な下腿の外旋は、膝の回旋ストレスや膝OAの進行リスクなどに関与します。
なので、膝屈曲位での下腿外旋作用は、身体にとって問題になりそうですね。
大腿筋膜張筋の機能を簡単にまとめると、下記のようになります。
◆股関節屈曲・外転・内旋作用
◆股関節と膝関節を外側から支える作用がある
◆膝屈曲位だと、下腿外旋作用が加わる
大腿筋膜張筋は、身体を支えるためには大切な筋です。
ただ、正しく使われないと膝に問題を起こしてしまうよということですね。
今回は、大腿筋膜張筋の機能解剖についてまとめました。
次回は、大腿筋膜張筋がどんな時に問題視されるのかについてまとめた記事を書いていこうと思っています。
次回の記事もあわせて読んでいただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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