青い椿
月が照らす砂浜の
その片隅で
君はひっそりと咲いていた
君は
一輪の青い椿だった
月のなみだの雫が
君の睫毛を濡らして
その滴る雨で
君は美しい詩を書いていた
君の詩は
夜風に乗って
色々な人や他の
花たちの耳に届いた
人も花も
皆君の詩に心打たれた
*
健気に咲く花のように
あなたはずっと
詩を書いていればよかった
純粋さは時に狂気になる
あなたはいつから
見えない狂気に気づいたのか
見えない狂気を
持たせたのは誰なのか
本当は、誰でもない
自身の美しさを知りながら
自ら闇の蜜の味を知って
溺れていったのは
あなた自身
**
朝の海岸に
何人かの人々の姿があった
小さな子どもが
砂浜の片隅で
目を閉じて
静かに横たわる君を見つけた
萎れて小さくなった
青い椿
「ママ、きれいなお花!」と
子どもが母親を呼び
あとから来た母親は
「きれいだけど、しおれてるね」
と悲しそうな声で話す
「なんだか、悲しいね」
母親が呟いた
「お墓を作ってあげようよ」
母親の言葉に
無邪気に子どもが言う
***
月が照らす砂浜の
その片隅で
君は今は
静かに眠る
青い砂のベルベットの下で
目を閉じながら
瞳にはうっすらと
透明なものが
滲んでいる
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