あおい満月

あおい満月(みづき)と申します。 現在、詩誌「詩と思想」、同人誌「指名手配」、「カナリ…

あおい満月

あおい満月(みづき)と申します。 現在、詩誌「詩と思想」、同人誌「指名手配」、「カナリア」、「澪」等で詩、エッセイ、詩人論を書いています。 「公募ガイド」等にも詩やエッセイを出すこともたまにあります。 2020年11月20日、第一詩集「風の声 空の涙」刊行。

最近の記事

書きたい言葉を引き出すための 鍵を探している。鍵はある私の 喉の奥底に。喉を今にも突き破 りそうに虎視眈々と三日月の先 が鋭く光る瞬間を見つめている 何かが指に触れた。硝子の破片 皮膚を切り裂き血の叫びを呼ぶ 血は叫ばない。繊細なアリアの 冷たい川の流れが降りてくる。 その冷たさに驚いて言葉になら ないものがあふれて流れ込んで くる。言葉にならないものたち を繋ぎ合わせて詩を書くと記憶 の深淵から聴こえてくる声のな  かに見たことのない世界の息吹 が熱く熱くこの肩を濡らしてい

    • 第二の人生

       2024年10月5日、私とたけさんは晴れて夫婦になりました。私はこの日こそ、幸せに満ちて肩の荷が降りたような安心した日はなかったと思う。入籍から2日経った今でさえ、たけさんは私を大切にしてくれて、「ぷーちゃんが居てくれて良かった」と言ってくれる。でも、もうそんなにゆったりといつまでも過ごしていられないのが現実。護られながらも私は私の時間を動かしていかなくてはならない。今月中には仕事を決めなくては。私は愛知県民になったが、愛知県を知らない。本当は名古屋まで出て、どこかの企業の

      • 現実と倦怠(散文詩)

        読めない現実と倦怠をすべて巻き取って 世界はぐるぐると回っている。私はその 外側にいるがお尻についた尻尾のような ものが巻き取られている先に絡みついて いる。「読む」という行為と「書く」とい う行為は別物だと思い知らされる。読ま れたものは心の別の場所に預けられ書く 気持ちはするすると私の意識なしに世界 に繰り出していく。だから私は言葉を魚 と名付けるのだろう。ひっきりなしに胸 から外の世界に泳ぎ出していく。いつ終 わるともしれない倦怠が前髪を掠めてい く。本を開く頁に指が届

        • 詩の美しさを守るために

           「夢日記」というものを付けている方もたくさんいらっしゃることと思いますが、私は特に付けていません。ですが、最近面白い夢ばかりを見ます。夫の目の前で不倫をしたり、食卓のものがどんどん消えていたり、会社にいて使われている夢とか。  まあ、ただの夢だから気にすることはないのですが、この世界をすべて詩に変えられたら楽しいだろうな、とか思います(笑)   私は一番最初に詩の研究会に通っていた時に、アレゴリーを駆使して詩を書く書き方を習いましたが、その書き方が昔の自分の書き方に一番合っ

          夏の威圧(散文詩)

          静まり返った午後のリビングで 見えない何かが蠢いている。そ れらは目には見えないが空間を 泳ぐ透明で重たい海月のような 威圧が胸を掴む。海月たちのな かにはたくさんの言葉が息づい ている。その一つを書き出そう としても手が動かたない。あと 少しで解放されるであろうこの 身体と心は威圧という圧迫のな かで胎児のように動きまわる。 静まり返った午後のリビングの 夏の威圧は今まで生き抜いてき た時代の壁から聴こえてくる終 わりのない詩になってこの身体 の穴という穴から侵入し呼吸と

          夏の威圧(散文詩)

          詩の熱(散文詩)

          雨が降る。雨が降る。じりじりという 大地に叩きつけて流れていく雨音も、 瘡蓋を捲るような苦々しい痛みの呻き に聞こえる。雨の朝は、切迫で溢れて いる。豊かになりたい心を、雨音に絞 られる。それでも心の耳は声を聴く。 雨には祈りのような言葉がある。幾度 となく繰り返される雨の祈りの言葉に は、生きる願いを絶たれた黄泉の国の 者たちの嘆きのように切なく、切実す ぎる声音に胸が震える。それを詩に変 えようとすると、見えてくるのは生者 である私たちに託される生命の詩。そ の詩が私の身

          詩の熱(散文詩)

          生き甲斐を大切にして

           こんなことを口走るのは年臭いかも知れないけれど、私は昭和、平成、令和と生きてきて、デジタル時代にSNSという、文章を書けるサイトを知ることが出来たことが幸せだと心底感じる。昔は、私たちが中学・高校・短大大学時代はまだSNSなんてなくて、皆原稿用紙に向かって、手書きで原稿を書き投稿していたのに、今ではログイン一つで自由な文章を投稿できる。大賞に応募することも出来る。非常に良い時代だと思う。  人の心の自由さとは何か、そしてそれはどこにあるのか。それは、私は何かを表現する魂のな

          生き甲斐を大切にして

          高校時代のこと

           結局眠れないから、昔のことを思い出している。 私が一番、人生のなかで豊かだったのはやはり高校時代だったと思う。私の通っていた千葉県千葉市にある植草学園文化女子高等学校(現・植草学園大学附属高等学校)は、レベルはそんなに高くはないが、制服の可愛らしさと、先生たちの良心的さは千葉県一で、勉強も落ち着いてやりやすく、良い学校だった。私は幼稚園、小学校、中学校と公立だったので 私立校の生活が始まると思うとワクワクして、毎日が楽しくて堪らなかった。私立校だったから、毎日漢字テスト、英

          高校時代のこと

          夜の魅力

           もうすぐ8月が終わる。 けれど、すぐに夏が終わるわけではない。今夏の暑さは異常だ。私は先日たけさんに逢いに都内に出たっきり、一度も家から出ていない。創作意欲さえも止まっていて、佳い詩や興味深いエッセイを書きたくても何を書いたらいいのか分からなかった。唯一、心身ともに動き出すのが、あまり暑さを感じない今ぐらいの深夜の時間帯だ。夜という時間の中には、色々なものが息づいていて、実は眠ってなんかいなくて、活動していることに気づく。テレビの番組なども昼間より深夜の方が楽しい。夜という

          終わらない詩

          明け方のリビングで 明かりのもとでも かざした手のひらに 闇のぬくもりを感じる 闇は優しく、深く 縁どるように 顔の輪郭を撫でていく その心地よさに 身を委ね 夜を編む 白い夜を泳ぐ 黒い星々が 奏でる詩は 生きているという 真実を輝きで 誰かの心を 映し出している 闇の腕のなかで その愛撫を受けながら 光の朝を 迎え入れるために 詩は終わらない 夜明け前の空に 響きわたる

          終わらない詩

          あなたへ(詩)

          歩いて、歩いて、歩き続けて 辿り着いた場所で 胸を宥めるアルコールの 愛撫に眠りに就いても 握りしめていたいものがある あなたは聴いているだろうか 私は聴かせたい この願いが 何かを変える力の根底になることを 願いを世界という地に しっかりと刻み続けていけば 必ず歴史を創ることができることを あなたの姿は見えないが 私はあなたを信じ祈る  そして進む 生きるということ そのもののために

          あなたへ(詩)

          「愛を知る県」で生きること

           暑くてやる気が出ないのだけど、何か書きたい気持ちだけが勝ってくる。9月28日の愛知県入り、そして入籍までの時間、ゆったり過ごしてるけど、やらなきゃいけないこともあって。外は異常な暑さだし、こんな日に平日でも会社やお店や病院で働いている人たちには脱帽です。愛知県に行ったら、派遣のお仕事と、内職でも出来る仕事を探したい。たけさんが働いている間中ゴロゴロ過ごしたくないし、働かなくちゃ!って思っています。あと、詩のお仕事。日本詩人クラブの例会の受付のお仕事も、しっかりやり続けたいし

          「愛を知る県」で生きること

          夏祀り(詩)

          夏祭りの お囃子が聴こえる 楽しそうなので 彼の手を取って歩いて 行ってみる 祭りの出店で 焼きそばやお好み焼きや ポテトフライとビールを買って ふたりで食べながら 盆踊りを眺めていた お互い浴衣ではなかったけど 盆踊りに参加したくなり 彼に断って 盆踊りの方へ歩いていく ところが いくら近づいても 踊りのなかには入れない 中心から少し離れて 踊っても 一人だけで踊っているような 寂寥感が胸を冷やす 盆踊りを踊っている 浴衣姿の人たちは 寒天のように透けていて よく見ると 腰

          真夜中の交差点(詩)

          交差点を渡る ひとつの交差点が ふたつ、みっつと増えていく 私の渡る交差点には 他に人はいない 人々は薄い硝子を隔てた 反対側を歩いている その姿は水族館の 回遊魚のよう 他の人々の目には 私は映っているのだろうか 私には見えない 私の側には無数の人々がいて 皆、回遊魚なのか 海ではない海のような 水のなかで 生きているように 死んでいるのは 私も同じだろう やけに長く続く 交差点の向こうには 光のような 希望はあるのか わからないまま 歩き続けている 真夜中のはずなのに 夕

          真夜中の交差点(詩)

          こたえにならないものに 向かおうとする とりとめのない 止まらない心は 眠りを求めずに 踏み潰す思念と 向き合いながら 暗闇を手探りながら 和解の糸口を探している 心は問いたい どうして自分には 試練ばかりがつきまとうのか 心は問いたい どうして自分は 日向の下で咲けないのか 仲間の美しく 可愛らしい花々には 明るい陽の光があり 優しい言葉があり 心地よい雨の雫があるのに 手のひらのなかの心には いつも冷たい雨ばかり降る 光を得ても その光は雷(いかづち) 降り注ぐ冷

          午後

           陽炎に包まれた窓の外の  時が足を止めている  進むことを止めて  こちらを見ている    唇を指で触れてみる  何度、湿らせても  ザラザラしている  指の踵    窓を開けると  母親の腕のなかの  熱のぬくもりが  頬と唇を浚う    忘れ物を思い出して  ポケットをまさぐる  指に触れた  鍵に付いていた  根付けのリスを取り出して  見つめたとき  買い物を思い出して  サンダルを突っ掛けて  外に飛び出した  風吹き雲が  空一面を走っていた