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中学生の私

受験にも成功し、なんとか母のために進学できた。
担任の先生は、非常に熱い人でクラス活動にものすごく力を入れていた。
先生は、私のことをじっと見ていつもこう言う。

"人の心を見抜こうとするな"

最初に言われた時は、何のことかさっぱり分からなかった。
先生曰く、私は父と母のやり取りを見て怒られないようにしようと思いすぎたあまり、人の顔色を窺いながら、その人がしてほしい事をしようとしているらしい。
自分では全くそんな意識はないが、ごく自然と身に付けた技だったようだ。

そしてその先生は、
"中学生らしく思った事をやってみろ"といつも言ってくれた。
しかしながら、とっておきの技を身に付けていることに気付いていない時点で、甘えるという事がどういう事なのか、いまいちピンと来ていなかった。

2年生になって担任が変わった。
体育の先生でこれまた熱い先生だった。
そして、その先生は私がこうなる事を予想していた。
"完璧主義をやめないと、いつか壊れる時が来る"
面談の時に必ず言われた。
先生が言った通りになってしまったと今更ながら思う。
今思えば、物凄く気にかけてくれていたんだなとありがたい気持ちでいっぱいだ。

3年生になって状況が変わった。
父が、"母が子供たちを会わせないように仕組んでいる"と訴えたのだ。
裁判で争うかどうかというところまで最終的には話が進んだ。
母は、不安のあまり再び不安定になった。
家庭の事情をよく知っている、1年生の時の担任に母が相談していたので、学校で家での出来事をよく聞いてくれた。
家族以外にも、私を助けてくれる人がいる。
それだけで心がすっきりした。
父は結局、裁判を起こすことはしなかったと思う。
"誕生日ですら連絡を寄越さないくせに父親ヅラすんなよ"と言いながら、一つずつ私は父との楽しい思い出を知らず知らずのうちに消していった気がする。

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