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父が出て行った後のはなし

小学5年生頃に両親が離婚した。
しばらくは寂しかった。
近所の人や同級生のお母さんたちが、ひそひそ声で"可哀想よね"と言っているのが聞こえた。

その度に、"この人たちは家族に困ったことがないんだな"と思うようになった。
我が家の事情なんて何も知らないくせに。
私たちが罵声を浴びせられ続けて、母が殴られ続けることが幸せなわけが無い。
そんなことも知らないくせに、噂だけで"可哀想"なんて言わないで欲しいと思った。
大人のくせにみっともない。

それでも、週末同じくらいの子供がお父さんとお母さんと手を繋いで出かけている姿を見て、母にバレないように時々、涙を流した。
あんなに嫌いだったはずなのに、父がいなくなって心に少し穴があいた。

小学6年生の時、母の体調も以前より良くなり中学校の話になった。成績が良かった私は、母からの勧めと学校の先生からの勧めもあり、家から近い県立の中高一貫校を受験することにした。
今思えば、母が喜ぶ顔を思い切り笑う顔を見たくて受験したような気がする。
それでも、それだけの気持ちで合格し進学したのだから、あの時の私は天才だったのかもしれない。

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