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サブカル好きにはアムステルダム



成田から12時間のフライトを終えてやっと降り立ったアムステルダムは、のどかで平和な石畳みの街だった。屋台には誰が買うんだろうと疑問に思うくらい花が売られていて、その店先には可愛くアレンジされたブーケが並んでいる。私は早速レンタサイクルで、地図を片手に散策を開始した。

アムステルダムといえば飾り窓。男性なら知っている人も多いであろう、日本でいう吉原遊廓のようなもので、昼間なのに下着姿のお姉様が窓越しに拝見できるという貴重な体験ができる。

自転車でカフェや土産物屋を冷やかしながら、目星をつけていた宿に向かう。

私の愛読書、地球の歩き方に載っている宿に到着。教会に併設された宿泊施設は、男女が分かれていて一部屋づつに二段ベットが二台あるドミトリー式だ。さらに教会のミーティングに参加すれば夕食が食べられるという。私はお金のないバックパッカーではないが、教会で夕食という響きが外国っぽいので是非参加させてもらうことにする。

夕食のメニューはミートスパゲティにパンやポテト、アムステルダム色はまるでないが味は美味しかった。しかし、「ただより高いものはない」そのミーティングの熱いことと言ったら。お題は「合法ドラッグ」ヨーロッパ圏の方やアメリカからの旅行者、皆さん発言をするのに躊躇がない。合法だからって良いのか悪いのか。自国にも合法してほしい。犯罪が。自己責任が。私にはとうてい入り込めない、これは日本の教育、身振り手振りから教えないと、この人達に話し合いで勝てるわけない。海外ドラマを見ている感覚で、とりあえずお腹は満腹になった。

すっかり夜も更けて、さぁ今からがアムステルダムの本領発揮。映画に出てきたようなクラブに行くことにする。昼間のうちに手に入れたクラブの情報誌をみて、まずは規模の大きなクラブに入ってみた。大音量のダンスミュージックに身をまかせながら、遠くまで来たもんだと目をつぶる。ビール一杯のんで耳がおかしくなり始めたら早々に退散する。ふた晩しかないアムステルダム、ほかのクラブにも行ってみたい。

二件目は小さめのテクノミュージックのクラブを選んでみる。クラブにアットホームはないが、朝まで隅でまったりと過ごすことにする。

最後は眠さとの戦いになったが、夜が明けるころフラフラになりながら宿に帰る。やっとベッドに横になれると思いきや、この宿、教会だからなのか門限があったらしい。もう朝だけど。

一時間ほど待たされはしたが無事宿で仮眠をとって、さあ二日目。昼間はマーケットでフルーツを買ったり、夜の寒さ対策に手袋を買ったりであっという間に過ぎ、今晩のクラブに体力を温存する。

アムステルダムはクラブの件数が世界で最も多いという。きのうとは別のクラブに繰り出そうと自転車をこぐが、なかなか着かない。気づくと大きな橋を渡ろうとしている。おかしい、地図で言ったら最果てだ。人をつかまえて尋ねてみると、やはり最果ての川の上。きもちよく自転車をこぎすぎた。道が放射状になっているのもよくない。東に向かっているはずがいつの間にか道は北に向かってしまう。たった二日間しかない夜に迷子とは、小雨も降ってきて悲しくなってきた、おまけに雨のせいで地図がクタクタに、もう道も読めない。行きたかったクラブを諦め昨日と同じ大きいクラブに行くが、トランスミュージックが頭に響く。門限のある宿には入れないし、アムステルダムまできて何をしているのやらと泣きそうになりながら、深夜の屋台でポテトフライで暖をとることにした。数人のホームレスとおぼしき方々と店の軒下で小雨を避けてぼーっとしていると、気の良さそうなおじちゃんが声をかけてきた。

ジャパニーズか?旅行か?こんな時間に危ないよ。

ジャパニーズです。旅行です。宿に門限があるんです。

やりとりしているうちにおじちゃんは、自分は昔オペラ歌手だったと言い出して、小雨の中、オペラの独唱が始まった。まったくオペラは知らない私だけど、その声量とビブラートは単純に感動した。雨の中完全に落ち込んでいた私は全力でおじちゃんに拍手をおくった。おじちゃんは私の感動をよそに、目の前に手のひらを差し出して、

マニー

あ、そうゆうこと。あれ?今までのくだり全部前振り?

路上でお金を出すのは躊躇われたのでフライドポテトを差し出すと、

サンキュー

と言って颯爽と去っていった。

たった二泊三日の弾丸旅行だったが、ミニシアター系の映画の一コマのような感覚。アムステルダムをおすすめします。


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