普通で、何も取り柄はなくて、そんなどこにでもいるあなたの独壇場所。
透明に見えたそれには、
深くて青い傷があった。
そんな人に私はなりたかった。
普通で、どこにでもいる普通の人間だからこそ。
何か特別であって欲しくて、
それを望んだ。
誰かとは違う何かを持っているわけではなくて、
ただその現状を認めてしまうには
あまりにも悲しくて。
ただの人間で、何もできなくて
どうしようもなく一生懸命で
でも結局怠けてしまって。
そんな不完全で、どこにでもいそうな自分でもいい気がした。
誰かを見下して、ステータスにこだわって、
みんなと同じステージで戦おうなんて
最初からしなくてよかった。
学歴、見た目、収入、友人
何も手にできなかったかもしれない。
「辞退します」
そう言って、大勢が這いあがろうとしている大きなステージから
私は今逃れた。
そこで自分だけの透明なステージに
たった一人。
もう誰に負けることもなかった。
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