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離愁

あらすじ
第二次世界大戦 
ナチスの侵攻により出産間近の妻と娘と共に列車による疎開を決意するジュリアン 妻と娘は客室車両に乗る事が出来たがジュリアンは貨車に乗車するように言われる
貨車の中は様々な人で溢れかえっており、その中にひとりの美しい女が乗車している事に気付くジュリアン 

貨車と客室車両が切り離され、家族と別れひとりになったジュリアンと女は少しずつ言葉を交わすようになりお互い惹かれあっていくのだが、女は自らの事を多くは語ろうとはしなかった

列車はドイツ空軍の射撃を受け犠牲者を出しながらも、終着駅であるラロシェルに少しずつ向かっていくのだった


(物語の重要な箇所に触れています)

世界最高の女優と称されるフランスを代表する女優ロミーシュナイダー(彼女はドイツ出身です)と、やはりフランスを代表する俳優ジャンルイトランティニャンの共演作品です
台詞は多くはないけれど佇まいのみで情感が伝わってくるような2人の演技に圧倒されます

この映画はかなり大掛かりなロケーション撮影の作品(CGが無かった時代に凄いと思いました)ですが、登場人物達の人間模様は主に狭い貨車の中や駅のホーム、小さな部屋の中で展開します
疎開とは言え非日常の空間を明るく過ごそうとする人々の描写が一転し、大きな悲劇に変わる瞬間はまさに力強い反戦への想いが込められていると思いました

そしてロミーシュナイダー演じる女性
彼女はユダヤ人であり夫や両親は強制収容所に送られたまま行方がわからず、彼女自身もベルギーの収容所にいた事が彼女自身の口から言葉少なに語られます
当初ジュリアンと女の短い恋は、戦争が終われば何事もなかったようにお互いの記憶の中に埋もれていくように思えました しかしジュリアンは彼女を見捨てる事は出来なかった
女は自身の運命を悟りジュリアンの為に身を引く事を決意します
それがあの痛切としか言いようのないラストに繋がっていく 戦争の愚かさや人が人を愛するという強さをあのラストが全て物語っているとは言え、悲しくてやり切れない想いで一杯になります

男の悲哀を全身から漂わせているジャンルイトランティニャンはさすがとしか言えないのですが、やはりロミーシュナイダーの凄さ 彼女が世界最高の女優である事は今作品を観ても納得の一言しかありません

是非機会があれば観てほしい作品です

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