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『世界"道バタ"紀行』#1 "道バタ"誕生編


2019年12月〜2020年2月のはなし

去年のクリスマス・イブ🎄🎅チェコ共和国南部にあるブルノという小さな町を訪れた。小さいながらも古き良きクリスマスマーケットが素敵だと聞いてかなり楽しみにしていたが、しかし、着いた町はマーケットどころか商店も軒並み閉店。通りは木枯らしばかりが吹き荒び、人の姿もまばらだった。

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ブルノの街並み。

そうだった、カトリック圏のクリスマス・イブや当日は、昭和中期の日本のお正月状態になる、このことは中南米のカトリック圏で散々学んだのに、ペルーでも、メキシコでも、もうイブには絶対に期待しないと誓ったのに。にもかかわらず、ヨーロッパでも同じ愚行を重ねてしまった。

とはいえ、普段ならこれぐらいの失敗は慣れっこで平気なのだか、この日はやけにこたえてしまった。氷点下という慣れない気温も影響したのかもしれないし、ヨーロッパの田舎のクリスマスというキラキラにすごく憧れていたのかもしれない。

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後の祭りのクリスマス・マーケット広場。

行けども行けども、街中は、撤収直後の”後の祭り”感に満ちており、歩きながら「なんか私っていっつもこうなんだよな…」なんて、過去をほじくりかえして、心がシュンシュンと堕ちてゆく。
些細なことほど、突然ネガティブスポットへの真っ暗な口を開く。こうなると、もう止めようがない。頭の中でどうにか心を落ち着かせようとしても、胸は寂しさで張ちきれんばかりで、もはや涙がこぼれおちそうになった、その瞬間、

「この心を大地に吸い取ってもらおう」

という想いが湧き上がり、ちょうど誰もいなかった道にバタッと行き倒れた。

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道バタが生まれた瞬間。

まさかの効き目だった。ほんの30秒程度横になっただけなのに、ネガティブな気配が全身から全て地面に吸い込まれいくような感触を味わい、すっと立ち上がると、心身共にツヤツヤとしたスッキリ感に満たされていた。

この写真は夫が撮ったのだが、私は気づいていなかった。実はこの10分ほど前、寂しさに心がいじけて彼に八つ当たりをしそうだったから、頭を冷やすまで、しばらく別行動を取ってもらうようにお願いしていた。が、こっそり私の後を着いてきてくれていた彼が少し遠目から倒れゆく私を発見して、隠し撮りしていたのだ。

おかげさまで、"道バタ"をしてスッキリしたところに、この一枚を見せられて大爆笑。私は完全に回復した。

この後、2時間だけ開店していた本屋で絵本を買えたり、小さいながらも開いてるクリスマスマーケットを見つけたり、突然轟音とともに現れたバイク集団に遭遇したり、(ブルノはバイクサーキットやバイク用品蚤の市で有名だからだろうか?)

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突然現れたバイク集団。

謎のサムライを見つけたり、

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民家のベランダの上にサムライ。
聞けば地元アーティストのアトリエでもあるとのこと。

地元の教会で灯火を持ち帰る人々に出会ったり、

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教会の火を家に持ち帰る人。

こうしたささやかな出会いに喜びを感じる心が蘇っていることを実感する。

道に倒れたのが効いたのか、あの道がパワースポットだったのか、あまりに馬鹿馬鹿しいことをしたのが効いたのか、なんにせよ、"道バタ"は予想外の絶大な効果があった。

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実物大の木彫りで作られた降誕場面の人形。

こうして"道バタ"にハマった私は、今後、旅先でバタバタと道に倒れるようになり、世界道バタ紀行が始まった。

【チェコ共和国:ブルノ】
チェコ第二の都市で、モラヴィア地方の中心。最近絶景で注目を浴びる”モラヴィア大平原”を旅する拠点にもなる。メンデルが研究活動をしていた修道院があることでも有名。



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