しまだ

フェンリルのブランディング部に所属するコピーライター。文章の師はコピライターなら開高健…

しまだ

フェンリルのブランディング部に所属するコピーライター。文章の師はコピライターなら開高健さん、コラムニストなら山本夏彦さん。

最近の記事

日本語、大丈夫ですか

コピーライターという職業上の習慣で、気になる言葉を収集している。ある日、たまには昼に魚を食べようと近所の食堂に入った。迎えに出てきた20代前半とおぼしき女性店員が言った。 「お客さまは一人で大丈夫ですか?」 何? 「大丈夫」というのは、「立派な男子」のこと、そして「危険や心配のないさま、間違いないさま」「病気やけがのないさま」をいう。 近年は若者を中心に「『お茶はいかがですか』『大丈夫です』」など婉曲的に拒否したり辞退したりするのに使われる。それは承知していた。職場で5

    • あのピトのパナはピクイ

      コピーライターという仕事柄、いつもことばを気にかけている。書きことばだけではない。話しことばもそう。 大阪で創業、その地に本社を置くフェンリルには関西弁を話す人が多い。関東で生まれ育ち働く私はいわば非主流派だ。毎週土曜日の朝、前日夜までウェブ会議で耳にした関西弁の残響が消えないままNHK-FMのラジオ番組「世界の快適音楽セレクション」を聞き始める。司会進行は大阪出身のギターデュオ、ゴンチチ。ふたりの柔らかな大阪弁を聞くと、終わったはずの仕事のムードがよみがえる。午前9時から

      • 第九を聴きながら、考えたこと

        クリスマスが過ぎると、いよいよ年の瀬。私の家ではこの季節に決まってベートーヴェンの第九を聴く。 なぜ日本人は師走になると特定の作曲家の特定の交響曲を聴くのか。検索するといろいろ出てくる。詳しく知りたい方は日経電子版のなぜ年末に「第九」? きっかけはN響のラジオ放送を参照していただきたい。 私がクラシック音楽を聴き始めたのは15年ほど前。入門の手引きをしてくれたのはディスクガイドや雑誌のたぐいだ。たとえば雑誌で「発見、クラシック音楽。」と題する特集が組まれ、ロックバンドくる

        • そういうことにしておこう

          「日本ではクリスマスになると国民全員がケンタッキーフライドチキンを食べるんですよ!」 昨年のこの時期、英国の公共放送BBCのアプリで「BBC World Service」を聞いていたら、リポーターがそう報じていた。何の根拠があってそんな嘘八百を世界中に広めやがるんだ、と思ったものだ。 でも今は違う。そういうことにしておこう。そのほうが面白いから。 この、「そういうことにしておくほうが面白い」を「ストーリーテリング」と読み替えられないだろうか。ストーリーテリングはコンテン

        日本語、大丈夫ですか

          世界で一番正しいスパゲッティの食べ方

          これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 201921日目の記事です。 週に一度、仕事場のそばのスパゲッティ専門店で昼食をとる。飲食店は人間観察のための実験室だ。 お客さんの多くはフォークとスプーンを使ってスパゲッティを食べる。右手に持ったフォークを左手のスプーンに押し当ててスパゲッティを巻き取り、両腕を上げ下げしながら一口サイズの固まりに整えたところで口に運ぶ。よく見かけるあのスタイルである。 ある人は両脇を締め、ある人は両肘を張っ

          世界で一番正しいスパゲッティの食べ方