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糞フェミでも恋がしたい (その28)

私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミは中学生の男の子が好きだ、いや、それは私だけかもしれないが、とにかく好きだ、好きで好きで死にたいほど好きだ、具体的には綺羅君が好きだ、綺羅君には、綺羅君と、あの綺羅君があるのだが、両方とも好きだ、綺羅君は尊んで慈しんで守り育てたいほど好きだし、あの綺羅君は陵辱され虐待され殺されたいほど好きだ、好きで好きで好きで好きで死にたいほど好きなのだ、頭がおかしいと思うヤツもいるかもしれないが、そういうヤツもだいたい別のところで頭がおかしいから、気にすることはない。

秋はぐいぐい深まる、上着なしでは肌寒くなる、でも、恋する糞フェミの心は、焼けた鉄のように熱いのだ、焼けた鉄は、黙ってじっとしてはいないのだ、ぐいぐいぐいぐい、突撃して、行動して、打開するのだ、具体的には、綺羅君の部屋に突撃するのだ、呼ばれたわけではなく、押し掛けているから、お呼ばれとは言えないが、私にしては少々洒落込んで、お呼ばれっぽい格好を作って、綺羅母の印象を良くしつつ、綺羅君の部屋に突撃するのだ、興味津々だ、綺羅君の身体と同じぐらい興味津々なのだ、綺羅君の左のお尻の下の方にほくろがあるのを知っているのと同じぐらい、綺羅君の部屋の本棚にどんな本があるのかを知っているのは、私にとって重要なのだ、それは、国家的な最高機密だ。

綺羅家に到着して、ご挨拶をして、お土産を手渡して、それは、京都の料亭から取り寄せた、老舗の和菓子なのだけども、また少々世間話などをして、私は危険な者ではありませんよという、メッセージを発信する、ひとつひとつ、とても面倒だが、とても大事だ、そういう諸々の手続きを経て、ゆるやかに、存在を認められていく、女というものが持っている社会は、本来的にこれだ、男の持っている社会とは違う、理屈や、枠組みでは、そこをすり抜けることはできない、もっと、感情的で、直感的で、誤摩化しのきかない、距離の近い世界だ、お互いに、承知しながら嘘を付き合う世界だ、そこを上手くすり抜けられない者には、容赦なく扉が閉められてしまう、そういう世界だ、都合のいい話だが、私は、母親から、そういう世界をすり抜けるための教育を受けてきたこと、好ましく思う、あの雌豚に、感謝する。

綺羅母チェックを終えて、綺羅家のリビングから、洒落た階段を上って二階に行くと、シンプルな木のフローリングの、ちょっとした廊下があって、向こうに綺羅母が現像に使っているスタジオ部屋がある、綺羅母は、デジタル全盛のこの時代でも、フィルム撮影にこだわって、可能な限り、銀塩カメラを使って、現像や焼き付けをして、自分の作品に仕上げる、生粋のアーティスト肌のカメラマンだ、手間ひまかかるが、綺羅母の撮った写真からは、生きる決意や、信念みたいなものが伝わってきて、それは正直、カッコイイなあと思うのだ、綺羅母が綺羅君を撮るときも、もちろん銀塩だと言っていた、一枚一枚、流れる時間の中から、その瞬間を切り取るときの、気持ち良さが違うのだそうだ。

手前に、綺羅君の部屋への扉がある、白い、なんの飾りもない扉だ、ちょっと恥ずかしそうにもじもじする綺羅君のあとをついて、部屋のドアを開けて、綺羅君の部屋に入る、第一印象は、広い、広い部屋だ、広いけども、男の子の部屋だから、ごちゃごちゃしている、片付けることに、あまり興味のない部屋だ、男の子の部屋は、そうでなくちゃいけない、女が世話を焼いて、片付ける楽しみがなくなる、向こうの端に、大きな掃き出し窓と、ベッドが置いてあって、向かいに、大きなテレビと、ゲーム機が置いてあって、そのあたりに、ゲームや、映像ディスクが散乱している、いくつかテーブルがあって、ノートパソコンが散乱している、そして手前の方には、壁一面に本棚があって、本が散乱している、その横には、衣装が散乱している、とにかく、散乱している、私も、綺羅君といっしょに散乱したいと思った、それが、この部屋には、ふさわしい気がする、きっと、綺羅君の心の中も散乱しているのだろう、綺羅君の心の中に、しっかりと収まるためには、私も散乱しなくては。

思うんだけど、好きな男の子の心の中に収まりたいときは、そいつの部屋をよく見るといい、その部屋は、男の子の心そのものだから、その部屋の中で、収まって気持ちがいい自分を見つけることができれば、その女の子は、男の子とうまくいく、もし、どうしても居心地が悪いようだったら、どこか大事なところで、相性が悪いのだ、そういうときは、無理をしないで、諦めたほうがいい、いつでも誰でも、綺羅君と私のように、うまくゆくわけではないからだ。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/n3de05a92fa93

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