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製品の質にこだわり海外からのファンを獲得 する海苔専門店 - 小規模ビジネスの世界への挑戦

パリッとした食感や旨味が詰まった海苔は、日本の食文化を象徴し、おにぎりやお寿司以外にも佃煮のように多様な食べ方で親しまれてきました。世界で和食に注目が集まることで海苔の栄養面での利点も認識され、アジアを越えて様々な国や地域で人気を得ています。

一方で、国内では物価高や若年層を中心とした生活スタイルの変化に伴い、2000年代以降は海苔の市場が徐々に衰退しています。
 
政府の調査によると、2023年の若年世帯の海苔への支出額は全国平均の半分。大学生を対象に行った調査では、最も一般的な海苔の消費形態がレストランでの飲食、テイクアウト、および中食であることが明らかになり、海苔は家庭で常備するものではなくなってきていることが伺えます。
また、近年の海苔の不作も海苔市場と価格に影響を及ぼしました。悪天候と赤潮の影響から、一部の産地では数十年ぶりに低い水準の生産量を経験しています。
 
縮小すると見られている海苔市場で、その質にこだわり、新たなアイデアで海外にもファンを獲得してマーケットを広げている海苔専門店があります。有明海の希少な「初摘み」海苔を専門に扱う「ぬま田海苔」と、四代目店主である沼田晶一朗さんです。

沼田さんは17年間のアパレル業界での勤務の後に家業を継ぎ、高品質で本格的な海苔の味を多くの人に伝えるという使命とともに、ぬま田海苔の店舗を、約160の専門店が軒を連ね、世界中からも観光客が訪れるかっぱ橋へ移転するという戦略的な決断をしました。
 
ぬま田海苔は2018年5月から店舗、SNS、オンラインでの販売で、純有明産海苔のファンを開拓しています。
 
日本で生産される海藻の約60%は九州地域で収穫され、有明海の海苔はその豊かな風味で重宝されていますが、初摘みの海苔となると、同地域の生産量は国内販売全体の1%以下です。これは、生産量の予測が難しいこと、そして破れやすく繊細であることから扱いにくさも影響するためです。
 
しかし、ぬま田海苔はここに小規模ビジネスならではの勝機を見出しました。

品質重視の商品作り

沼田さんは毎年、有明海の各産地で生産された海苔を入念に選別します。
提供する商品のラインナップを常に変化させ、産地による細かい風味の違いを伝えるために、ぬま田海苔では、産地名と海苔の品質等級を商品名に使うというユニークなアプローチをとっています。
また、商品パッケージのラベルには、風味の持つ性格や食感を示す表が記載され、お客様が産地の特徴を理解しやすいようにしています。
 
繊細な海苔は、商品の約10%にどうしてもダメージが発生してしまいますが、沼田さんはそれを活用し、かっぱ橋の店舗で海苔を焼く作業を実演して、お客様に試食として提供しています。

お客様からのフィードバックの重要性

商品開発において、沼田さんはお客様からの意見に耳を傾け、それらを積極的に取り入れています。例えば、従来の乾燥海苔のサイズ21cm×19 cmは、現代の日々の食事では使いづらいというお客様の声に応え、より小さくカットした海苔の商品を導入しました。
 
沼田さんが深めたかっぱ橋の他商店との絆も、ぬま田海苔のビジネスを後押ししています。多くの商店が、海外からの観光客をはじめとするお客様にぬま田海苔を薦めてくれているのです。口コミで評判が広がったこともあり、今では世界各地からお客様が訪れています。
 
沼田さんはその訪日観光客から学ぶことも多いと感じています。
あるイタリアのお客様にゴルゴンゾーラチーズとマッチする海苔の種類があると聞いてから、沼田さんは海苔と他の組み合わせを模索し始め、アイデアが浮かぶと定期的にSNSに投稿しています。

SNSで世界中からファンを獲得

沼田さんのnoteのフォロワーは、約11,000人。海苔や商品はもとより、生産者や生産地の環境に関するコンテンツを紹介しています。
沼田さんは、海外のお客様にSNSをフォローしてもらうことが重要だと語っています。店頭で海苔の味を気に入っていただいたとしても、帰国後にお店の名前を思い出せなくては意味がなくなってしまうからです。
 
そして海外からお客様にリピーターになってもらうために、沼田さんは連絡先とともにオンラインでの購入方法の詳細を渡すようにし、現在までに15を超える国や地域に海苔を出荷してきました。
 
国内市場の変化を振り返り、沼田さんは次のように話しています。
「国内の消費が縮小している今、自分たちの商品に不安を覚えることもあるかもしれません。でも、かっぱ橋で私が感じるのは、伝統的な日本の物品や品質が世界中から注目されていることです。良質かつ貴重な商品を持つ私たちは、日本の外に目を向ける自信を持つべきだと思います」
 
フェデックスは伝統的で繊細な技術を駆使して生産された商品や、日本ならではの商品を開発して海外販売に挑戦する小規模ビジネスを物流面で支えます。お客様や市場の「次」に続いて行く物流ネットワークを構築することで、日本各地の良い物を世界の人々に届けます。