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「分からない」が「分かる」に変わる情報デザイン

正確な事実を伝えるのは大事ですが、それだけでは相手に伝わりにくいものです。事実を相手が理解できるように「翻訳する」作業が情報デザインです。この note では具体例と翻訳するためのポイントを紹介します。

情報デザインは相手の認知を設計する方法

情報整理の技術であり、文字・図解・映像・対話などの手段を用いて相手の認知を設計します。「相手の認知を設計する」という点で、コミュニケーションの方法とも言えます。

情報デザインは、伝える相手にとって「意味を持つ情報」になることが重要です。情報を届けたい相手が知覚可能な手段を用いて、それがインターフェイスとして機能するように設計します。

相手の認知を構成するプロセスは認識と理解の二つです。

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※ 「知覚」とは、感覚器官を通じて、外界の事物や事象を見分け、とらえる働きのことです。

多くの人は文章やグラフィックのような二次元的なものを「情報」のイメージとして捉えるかもしれません。しかし、その情報が認識可能かつ理解可能な状態ならば、形態は二次元とは限らないのです。映像や音だったり、対話やプレゼンテーションかもしれません。ジェスチャーだってありえます。

情報デザインは伝える側と受け取る側のコミュニケーションを設計する方法でもあります。

人はデータではなく意味を知りたい

ソシオメディアが公開しているヒューマンインターフェースガイドラインの中に「データよりも情報を伝える」という項目があります。

ユーザーは数値よりもその意味を知りたい。例えば現在ディスクを何バイト使っているのかよりもあと何割ぐらい残っているのかを知りたい。音楽プレーヤーを買う時はストレージの正確な容量よりも何曲ぐらい入るのかを知りたい。


図解で容量を伝える

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iPhone や Mac の容量を伝えるデザインでは、図解によってあとどれくらい使用可能なのかを優先して伝えています。残りの容量を知ることで、データを整理したり、容量を圧迫しているデータを調べる「行動」につながります。残りの容量に余裕があれば、そのまま使い続ける判断ができます。

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言葉で残量を伝える

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Google Pixel のバッテリーの残量を伝えるデザインでは、言葉によってあと何日もつのかを伝えています。あと何日程度バッテリーがもつのかが分かるので、充電するかどうか必要性の判断ができます。

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どうすれば意味のある情報を伝えられる?

ここまではスマートフォンや Mac における情報デザインの具体例を紹介しました。では、どうすればデータを意味のある情報に転換できるのでしょうか? 少し昔の話になりますが、初代 iPod のキャッチコピーを例に見ていきましょう。

「1000曲がポケットに入る」

iPodには3つの技術革新があります。1つずつ見てみましょう。1つ目は超小型ということです。iPodは1000曲がポケットに入るのですが、どう実現したのでしょうか?

There are three major breakthroughs in iPod. Lets's take a look at each one of them. The first one is it's all true portable, so if we're going to keep a thousand songs on iPod and it fits in your pocket. How do we do this ?
https://youtu.be/kN0SVBCJqLs?t=215

スマートフォンや Mac の例と同じように、「1000曲がポケットに入る」もデータではなく意味のある情報を的確に伝えています。このコピーは、決して奇をてらった表現ではありません。人の認知を設計するために適切にデザインした結果の表現です。

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もし iPod が「5GB の MP3プレイヤー」だと表現されたらどう感じますか?

5GB がどれくらいの容量かピンと来ないでしょう。初代 iPod が発売された2001年当時は、今日に比べて「ストレージ」や物理的制約のない「音楽データ」という概念が普及していませんでした。そのため、5GB が多いのか少ないのか判断できなかったはずです。一方で、音楽好きの人々は何枚もかさばる CD や MD、カセットテープを持ち歩くのを億劫に感じていました。

相手の疑問に応える

意味のある情報に翻訳するには、相手が一番知りたいことを相手が理解できる表現で伝えます。

「自分のお気に入りの音楽をどれくらい持ち歩けるのだろう?」
CD を何枚も持ち歩くのは億劫だ。何曲くらい聴けるのだろう?」
「自分のバッグに収まる大きさなのだろうか?かさばったりしないだろうか?」

iPod が扱うモノは「曲」であり音楽です。人の関心はあくまで音楽や使い勝手に向いているのであって、データそのものではないのです。自分に馴染みのない言葉を使われたとたん、意味のある情報として理解される可能性は一気に低くなってしまいます。

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こうして iPod の概要が理解できると、人々は「買う価値や必要性があるかどうか」を判断できます。つまり、買う・買わないの具体的な行動に繋がるのです。

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5GB のような定量的なデータは正確な事実 (ファクト) には違いありません。しかし、相手がどう感じるかまで踏み込んで考えて「翻訳」しないと、誤解されてしまったり「なんだかよく分からない」で終わってしまいます。

iPod の例では口頭の説明に加えて、実際にポケットから取り出す演出があり、このジェスチャーによって説得力をより一層強めています。ジョブズが取っている手段は二次元的なものではなく、見ること・聴くことを通じて相手の認知を構成しているのです。

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「分からない」が「分かる」に変わる

情報デザインはコミュニケーションの方法だと記事冒頭で書きました。どの手段をとったとしても、わたしたちは「言葉」というインターフェイスを介して情報を伝えています。

目の前の人に何かを伝えたい時は、相手にとって意味のある情報に翻訳してみてください。相手の疑問に踏み込んで情報整理をすることで、「分からない」が「分かる」に近づくはずです。

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