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「魔法の言葉」 / #青ブラ文学部 様


山根あきら様
#青ブラ文学部
お世話になります。

参加させて頂きます。
何卒よろしくお願い致します。

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『大丈夫、大丈夫。は魔法の言葉』

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とある日のコト。
とある日というのは、なんでもない日。
ある人によっては大切な日かもしれませんし、
ある人にとっては取るに足らない日かもしれません。

そんなある日。
紫子(ゆかりこ)は現在、生物が大好きで特に虫が好きな女の子です。
紫子くらいの年頃で虫が大好きな女の子は珍しいため、どうして虫が好きになったか、というキッカケの1つのお話し、お話し…。

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湯河崎学園に通う紫子は最後の5限目の生物学の授業を終え、下宿先である、
「湯河崎民宿〜憩い〜」
へ帰宅途中でした。

「やはり生物学は嫌いですわ…。どうも虫が苦手で…。見ているだけで鳥肌が……。」
((紫子、鳥肌が立つ。))

紫子は虫が大の苦手でした。触ることは勿論のコト、見るのもあまり好きではありませんでした。

下宿先の宿まで後10分程といった中、道に怪我をした1匹のカマキリを見つけました。

(※1 写真参照 : 山根あきら様
本写真に関してはお話しの最後で説明させた下さい。fg)



(この子、大変弱っておりますわね……。このままだと馬車に轢かれてしまうかも知れないですわね……。早く草のある路肩へ逃さないと……。でもわたくし、触れないからどうしましょう……。)

紫子がモジモジとそんなことを考えていると、紫子より少し年上で同じ下宿先に住んでおります冬人(ふゆと)が学園終わりで偶然通りがかりました。


紫子は、
「あゝ、お兄様!助けて下さいまし!カマキリが弱っていて、この子が場所に居ると危ない気がするのですの!」


紫子はやや涙目になりながら兄的存在の冬人にお願いをしました。


冬人は紫子のお願いを聞いて、カマキリを素手で優しく掴み、路肩の草原へ逃してやりました。

(紫子のやつ、昔から虫が苦手で触れもしないのに、助けたい気持ちはあるのか……。)


「お兄様!ありがとうございました!これでなんとかあのカマキリは最悪な事態にはなら無さそうですの……。」
((笑顔では無く、やや曇り気味な表情))

紫子は冬人に感謝をしましたが同時に自分の力だけでは、カマキリを救うことが出来なかった事実に対して非常に悔しく、弱っていたカマキリに申し訳ない気持ちになりました。

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紫子は冬人と一緒に宿に戻ると、宿の女将である千鶴(ちづる)に一連の出来事とモヤモヤとした気持ちを話した。

「お母様、私なんだか悔しくて、でもよく分からなくて……。」

千鶴は、
「冬人君に助けられたカマキリさんも、紫子ちゃんがそう想ってくれてるのは分かってるはずよ。紫子ちゃんは本当に良い子ね。何事も少しずつ、慣れていけば良いのよ。


紫子ちゃんも冬人君もカマキリさんも紫子ちゃんが育てている百合さんも私(千鶴)も同じ生き物。みんな毎日精一杯、今を生きているのよ。同じなの。みんな同じ。」

紫子は終始無言でした。

「紫子ちゃんなら大丈夫、大丈夫。」

千鶴は優しい笑顔で曇り顔の紫子を撫でました。

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翌日。
紫子は学園に行く準備をし、日課である百合にお水をあげている時、ふと百合にテントウムシが付いていました。
勿論、テントウムシも苦手です。

「あらヤダ……。」

しかし紫子は昨日の怪我をしたカマキリの事、千鶴お話しを思い出し、

「わたくしなら大丈夫、大丈夫。

この子もわたくしと同じで生きているのですから…!同じですのね…。」

紫子は意を決し、テントウムシを優しく摘み、震えた手でそっとベランダから放ち、同時にテントウムシは飛んで行きました。

一般的に見れば、なんでもないこの経験が紫子にとっては初めて虫を触ったため、何か目覚めるような、非常に居心地の良い体験でした。

(みんな、生きているのですわね……。)

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時は過ぎ夕刻。
学園から帰宅途中、さくじつと似た付近で2匹のカマキリを発見しました。そして2匹のカマキリは道の方へノッソリと歩いているようです。

(このまま道へ行くと、馬車に轢かれてしまいますわ…!今度こそ、わたくしが触って、安全な場所へ逃して差し上げますわ…!)

カマキリに恐る恐る触れようとしゃがみ込んでいるそんな中、紫子の背中を遠くから同じく帰宅途中の冬人が発見しました。

冬人は
(あれは紫子…? 道の中央でしゃがんで何をやってるんだ?……ってあいつ、前から来る馬車に気づいて無いのか!?)

紫子の前方から馬車が来ておりました。
しかし紫子はカマキリに夢中です。
(この時代、馬車や蒸気機関車による人身衝突事故で亡くなってしまう人が後を絶ちませんでした。)

冬人は急いで紫子を呼び止め、馬車の存在を教えようと全速力で走り出しましたが、紫子と冬人の距離よりも、前方から迫り来る馬車の方が圧倒的に速いのでした。

冬人が走りながら最悪のことを考えて背筋がゾッとしたその時、遠くにいる紫子が立ち上がり道の端の草原へ移動したようです。

紫子は2匹のカマキリを移動させることに成功しました。

「あなたたち、これで安全ですわね!私もあなたたちも同じ生き物…。助け合って生きていきましょう…。

……あら!お兄様!お帰りですのね!聞いて下さいまし!わたくし、虫を触ることが出来るようになりましたの!」


紫子は冬人に虫を触ることが出来た体験を伝えるコトに興奮しており、馬車の存在があったことに全く気がついておりませんでした。

冬人は、馬車のコトや紫子自身が危ない状況下であったコトを伝えようとしましたが、それを伝えることは今の紫子にとって意味の無いコトだと思い、伝えずに、紫子のお話しをただ聞いているのでした。

この体験は、紫子が虫好きになる1つのキッカケに過ぎませんが、紫子の中で何か大切な事を学んだ事は確かです。

「お兄様、わたくし、虫を素手でしっかりと触れるようになりましたの!

わたくしならもう、大丈夫、大丈夫ですの!」

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【あとがき】
「※1」に関して、#青ブラ文学部 様の「写真de妄想」に参加予定でしたが、作成途中で期限に間に合わず、しかし写真から色々ヒントを頂けたため、本物語にて使用させて頂きました。ご了承頂けますと幸いです。

fg

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