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コミュニケーションを「センス」で終わらせずトレーニングしたい|東京都児童相談所

株式会社フィアレスでは、東京都福祉人材トレーニングセンター様にて研修を実施いたしました!
どうして弊社に研修を依頼していただいたのか、どんなことを目標に、どんなことを実施したのか、などをこちらの記事でご紹介いたします。

※記事内に登場する写真に写っている方は、ファシリテーターまたはアシスタントです。児童福祉司の皆様のお顔は伏せております。

研修概要
対象:児童福祉司として働く皆様
時間:3時間半
ファシリテーター:1名
アシスタント:5名

児童福祉司として必要なスキルを
「センス」で終わらせず、学べる機会を作りたい。

今回、依頼を受けたのは、東京都の児童相談所で働く児童福祉司の皆様に向けたコミュニケーション研修です。

児童福祉司の業務内容とは・・・
児童福祉司は、担当区域内の子供の保護や福祉に関する保護者などからの相談に応じ、必要な調査、社会的診断に基づいて、対応方法の決定、その後の指導に至る一連の過程における家族、関係機関との連絡調整の中心的な役割を担っています。

東京都福祉局より引用

児童相談所とは・・・
児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置される行政機関です。
原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けています。
児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関です。

東京都福祉局より引用

児童福祉司の皆様が普段関わる方の中には、経済的・精神的に追い込まれている保護者さんや子どもがとても多くいるそうです。

そんな保護者さんや子どもたちと日々関わっていくには、相手との繊細なやり取りが必須です。経験を積んでいくと感覚がわかってきたり、できることも増えていくのですが、あまりにも現場で傷つきながら習得するという環境になっており、志半ばで退職してしまう方や、適切なアドバイスができず悩む先輩がおり、ここの部分をなんとかしたい、と相談をしていただきました。

そこで、下記のような目的を置いて研修を実施することになりました。

・人と関わること、言葉掛けや姿勢などを、失敗の許される安全な場所で探求していくこと。
・「センス」や「経験」のみで語られてしまう他者とのやり取りを、理論や視点を持っているインプロのファシリテーターからフィードバックを貰いながら探求していくこと。
・自分たちでも振り返りや練習ができるような視点を手に入れてもらうこと。

様々な観点から、関わり方を体験し振り返る

手を取りたいと思える人になっていますか?

通報があったご家庭に訪問をする時・保護対象となったお子さんに手をとってもらおうとする時・保護者の方とこれからどうしていくかを一緒に考える時。
「この人にならついていっても大丈夫かもしれない」「この人だったら信用できる」「安心してきた」と思ってもらうような、立ち方・近づき方・表情・声の掛け方はできているのかを考えてみます。

<やり方> 手をとって一緒に歩くワーク
2人でペアで行います。
片方は椅子に座り、もう片方は少しずつ相手に近づき手を差し出します。相手が手を取ってくれたら一緒にスタート位置まで戻ります。
座っている人は、少しでも違和感を感じたり、怖いな・嫌だなと思ったら首を振って相手にそのことを伝えます。

ペアの人に近づき、手をとってもらうような関わりを探求

人は言葉ではなく、身体・表情・声のトーン・歩き方など、全部を使ってメッセージを発し、全てからメッセージを受け取ります。緊張していること、不安なこと、優位に立とうとしていること、興味がないこと…。受け手として、相手は無意識でも自分には「こう思っているんだろうな」と、伝わってきてしまった経験はありませんか?
切羽詰まっている状況に置かれている人ならば、相手からの情報を敏感に感じ取り、受け取ってしまうのではないでしょうか。

また、人によっては自然な笑い方が、別の人にとっては嘘っぽい笑い方に見えることなどもあります。一般的に正しいやり方は存在せず、自分の身体・表情・空気感から発されるメッセージは、相手にどんな伝わり方をしているのか理解していく必要があります。

だからこそ、自分が動き、自分がどんなメッセージを発しているのかを教えてもらうという繰り返しがとても重要になってきます。

ワークの後はお互いに印象をフィードバック
体調が悪く、下を向く人と目線を合わせにいくワークもしました


どれくらい相手の話を聞いていますか?

お子さんが保護者さんに対して言っているその言葉に、違和感はないか。質問した内容に答える時に、抵抗を感じていないか。家が綺麗に片付いていてしっかりされてそうなお母さんが、本当は頑張りすぎて精神的に追い詰まってはいないか。様子を見に行ったご家庭でお子さんを抱く様子にぎこちなさがないか。
言葉、環境、行動を情報として処理せず、身体で発しているメッセージや裏にある意図をしっかり受け取ることについて考えてみます。

<やり方>
①連想ゲーム
2人〜5人で行います。
「赤→りんご→フルーツポンチ→給食」など、誰かが行った言葉や単語から連想されるものを繋げていきます。その中で「どうしてその連想になったのだろう?」と疑問に思うものや、「聞きたいな」と思ったものに対して「なんでそうなったの?」と聞いてみます。

②トークコピー
2人ペアで行います。
片方が思い出に残っているエピソードを2分ほど語ります。その後、聞いていた人は相手が話してくれた通りにコピーして話します。できるだけ口調やその時の身体の動きまで意識してコピーしてみます。

人は基本的に、相手が伝えてくれている話をそのまま受け取ることはできません。多かれ少なかれ自分の解釈が入ったり、言葉通り受け取って身体が発しているメッセージを取りきれなかったりします。

自分がどこをキャッチしてどこを逃したのか、そんなことを体験し発見するワークです。

相手の話をよく聞いてコピーしていく


予想外のことが起きた時、どんな反応をしていますか?

世界には色んな人がいますし、色んな感情があります。訪問したご家庭の方が突然大きな声を出してきたり、泣き出したり、むしろあっけらかんとしていたり。
そんな想定外の反応を示した時に、固まってしまうのか、狼狽えてしまうのか、はたまた焦らず対応できるのかで、その後の信頼関係も変わっていくといいます。

<やり方> オーバーアクセプト
2人ペアで行います。
1人がなんの変哲もない言葉(おはよう・ただいま・ひさしぶり・ありがとうなど)を相手に伝えます。それを受けたもう1人は、全力で感情的に反応します(怒る・泣く・笑うなど)。その状態で2人はやり取りを1分ほど続けます。

予想外の反応に対応できるようになるにはさまざま方法はありますが、自分が対応できる範囲、コントロールの効く範囲からはみ出てみる、という形を今回はとってみました。

予想外のことが起きた時に、目の前のことをスルーしてしまうのか、怒りが湧いてくるのか、恐怖を感じて固まってしまうのか、まずは体験すること、知ることが必要だと考えています。

固まってしまう自分を知ったら、それに対処するために深呼吸をするなどの方法を考えて試していくことができます。しかし、そもそも自分がどうなってしまうのかわからないままでは、対処のために試行錯誤することもできません。

また、自分のコントロール外を外れる経験を何度もすることで、そのこと自体に慣れて対応できるようになっていくこともあるでしょう。
予想外のことは必ず起こる前提で、どう身体を作っていくのかを考えていきます。

参加者の感想

自分には思い込みがあると思った。相手の反応を予想して構えていたけど、実際には大きく違う反応を示していて笑ってしまった。ケースワークでも思い込みを持って接している瞬間もあると思ったので気付けてよかった。楽しい気付きだった。

自分の緊張は相手に伝わるんだなと思った。緊張の取り方も少しわかった。面接などで相手にどう伝わっているのか、自分の感情とどう繋がるのかなどが自分の仕事と親和性が高いと思った。

手を取るワークなどで、相手からNoの反応をもらっているが、実際は自分自身が先に相手に壁を作っていて、目を合わせられなかったり手を出せない瞬間があるなと思った。仕事中でもうまく行かなかった時に同じような癖が出てきていると思った。今日はそのことに気付けてよかった。

感情をバーっと出す体験を久しぶりにできた。とてもストレス発散になった。普段は感情を抑えたり、すました態度をとっていることも多いなと感じた。たまには枠を外れるような、感情を思いっきり出すようなことをした方がいいんだと感じた。

非言語的なやりとりをするのが多かったかなと思う。面接とかする中で、言葉でどう言おうと考えることが多いが、非言語の言い方、気持ち、態度、姿でうまく伝えられる方法はないかなと考えるきっかけになった。

研修は、楽しく笑いながら進んでいきます。

様々な観点を持って研修を行いましたが、研修は全体として「笑い声」が溢れる時間になることも意識して行っています。それは、「失敗すること」「うまくできないこと」を罰するような雰囲気では試行錯誤が生まれず、結局成長も阻害されるからです。

うまくいかないことも楽しみながら、研修はいろんな失敗ができるような場を提供しています。

繰り返し体験・トレーニングしていくことが大切です。

私たちが提供している研修は、「知識を提供」だけではなく「実際にできるようになること」を目指しています。何かを習得するには回数と時間が必要です。また、コミュニケーションにおいて「完全にできるようになった」ということはありません。常にアップデートが可能な分野だと思います。

そのため、定期的に研修をはじめとした練習の場を設けること、普段の業務でも振り返りを通して改善していけるような体質を作っていきます。

人に関わる職業の方のお力になりたいです。
ご相談ください。

今回は児童相談所の皆様に向けた研修をご紹介しました。
この中で、人と密に関わるお仕事をされる方(教育関係者・看護介護福祉関係の方など)にとても意義のある時間を提供できるなと感じました。

ご興味を持った方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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