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【葬送のフリーレン】#2.変わってしまった力関係


「...あぃたたた。。」

「フリーレン様??まだ終わりじゃありませんよ?」

長い事約束付けられ、ようやく止まった掌。
やれやれとベッドを押し返し肘を伸ばすとあるエルフは弟子の魔法使いに小さな溜め息を付かれた所だった。

「もぅ。フリーレン様ったら。勝手に…」

フリーレンと呼ばれる少女は膝は曲げ、伏せていた体は起こし、重心を指先からゆっくりと膝小僧へ戻す。

膝に這う格好から今まさに立ちあがろうとしていた。

「うぅ、痛かったぁ。フェルン...何もそんなに怒らなくてもいいじゃんかぁ」

フリーレンの上体は弟子・フェルンの膝からんっくりと離れていく。

両膝立ちになるまでに既に片方の手は片方の尻へ。
完全に這い上がると今度は両方の手で両方の尻をさする。

「…ひぃぃ、、」

ピリつくお尻の表面。
エルフ特有のピンと立つ耳は残念に垂れ下がり、目は二重線、口はあわあわと疲労の表情。

その姿にフェルンは頬を膨らませていた。

「そりゃ怒りますよ。シュタルク様の誕生日にあんなえっちな薬を渡そうとするだなんて。それに私、あの薬は返品して来るように言いましたよね」

今日は共に旅をする戦士・シュタルクの誕生日。
そのプレゼントとしてフリーレンは旅の途中で手に入れた“服だけを溶かす薬“をあげようと企んでいたのだ。

「だって...。男はこう言うのが喜ぶってせんせぃが」

「絶対ダメです」

「なんでよぉ…」

「ダメなものはダメだから」

「ぇぇ理由になってない」

「だ、だから。だって...。あ、あいつは、、」

「うん?」

「が。。ガキだから...!」

「えなにそれ」

フリーレンは即ツッコミつつ首を捻った。
フェルンはうまく説明できずに悶えている。

「...ぅぅ」

フェルンは頬に手を当てた。
最近シュタルクの事になると変な気持ちになる。

好き...?いやいやありえない。ないない。
好意じゃない、好意だと認めたくない。
でも近づかれると妙に焦ってしまって、体が火照るような。もどかしい気持ち。
例えば雪の中寒さで眠ってしまうフリーレンを背負わせるのさえ妬いてしまう。

「あれフェルン。顔赤い?」

フリーレンに顔を覗かれる。
そんな訳!と慌ててそっぽを向くフェルン。

ベッドに座るフェルンの右側に横付けするフリーレンはよく覗き込む為か背を丸めていた。

向こうをむくフェルンの耳、ほのかに赤い。

「赤いのはフ、フリーレン様のお尻でしょ!...」

まぁそうだよね。と認められる。
フリーレンはまた両手で尻を抑えてみた。
まだ熱を持っている。

膝に置く両手は人差し指同士、中指同士がピタッとくっつけられている。
フェルンの礼儀正しさの表れ。

「あーぁ。私には人間の罰なんて効かないと思ったんだけどなぁ」

「フリーレン様にお尻叩きが効果あって私は良かったと思いますよ?」

「えぇ…」

シュタルクにあげるんだと服だけを溶かす薬をフェルンに見せつけた所、怒りのままに中身を掛けられてしまったフリーレン。
服は溶け、全裸になったフリーレンはムッとしたフェルンに手を引かれてベッドへ連行された。

そして息もつかぬまま膝へ乗せられると、嫉妬の中に路銀を無駄遣いした罪で、つい数分前まで弟子からお尻のお仕置きを受けていたのだ。

世に言う、お尻ペンペンだ。

「とっ...とにかく。まだお仕置きの最中ですので!部屋の隅でお尻を出して立ってなさい!」

フェルンは向いている方と反対の方を指さす。

元から何も履いてないし。と毒付いて床に片足を下ろす全裸のエルフ。
机とベッドしかない宿の隅に行くと、今までで何回目かのコーナータイムに勤(いそ)しみ出した。

「...はぁ。。」

フリーレンは壁を向き、フェルンはようやく膨れた顔を戻す。

頬はまだ桃色。唇はきゅっと締められる。

伏せていた目を上げてフリーレンの背を見た。
当然だか尻も視界に入る。

本当に世話のやける人。
フェルンはそう伺える小さな溜め息をついた。

「フリーレン様、手は頭の後ろですよ?」

指摘されてフリーレンはだらっと両手を浮かせた。
前にここで無視してまた膝に戻されたことがあったからか、口では「えー」と言えど、行動は素直だ。

なんでこの人は懲りないのだろう。
お尻を叱ったのは一度やニ度じゃない、無駄遣いや寝坊の度にフェルンはフリーレンを膝に乗せて相応に罰した。

きちんと反省してるのかな。。
まさか、コーナータイムが短い?

フェルンは全裸の後ろ姿を見つめた。

「今日は10分にしましょうか」

「ふーん。いつもよりも5分多いね。ま、エルフの私からしたらどっちも一瞬だけど」

フリーレンの後ろ姿は割れ目の始まりから膝裏まで満遍なく赤い。
フェルンの手形も幾つか見られる。

フェルンは時間を告げると目を伏せ、少し昔を思い返した。

出会った頃、お仕置きする側はフリーレンだった。

まだハイターの元に居て、ハイターに心配かけまいと一人前の魔法使いを目指していた頃だ。

フリーレンに魔法を教わっていた8年ほど前。
病弱していくハイターへ成長した姿を見せるためにフェルンは雨の日も魔法を猛特訓した。

そしてフェルンはそれにより、頑張りすぎで倒れてしまった事があった。

小さな身体はフリーレンによって看病され、無事に回復するが、その直後に待っていたのは幼いフェルンにとってとても厳しいお尻叩きだ。

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「心配したよ。あんな無茶して」

「...ご、ごめんなさぃ。フリーレンさま...」

「気を張りすぎても魔力は安定しないと何度も伝えたはずだ。休息も大事だとあれ程。覚えてるよね」

「はぃ。仰られました。...」

「ハイターもフェルンが病に倒れることは望んでいない」

「…ぅ」

「反省してる?もうしない」

「ど…どりょく、、します」

「努力ね、また1人で頑張るつもりなんだ」

「……ぅぅ」

「ねぇ、フェルン」

「は…はぃ」

「お仕置きしようか」

「えっ?おしおき?…ですか?」

「今のフェルンに必要なものは自分を甘やかすこと。でもフェルンはきっとそうしない。だから一度、厳しくしておこうと思う」

「…そんな」

「ハイターから聞いてるよ。フェルンはお尻が一番よく効くって」

「うっ…」

「さぁ後の話は膝でしよう。フェルン、パンツを脱いで膝においで」

「...っ」

「お尻ペンペンするよ」

「...ぃ、いやぁ!!」

「フェルンの悪いお尻。今スグここに乗せなさい」

「ごっ!ごめんなさぃ!!おしりやだ」

「駄目。悪い子。動かないなら強制送還かな」

「きゃあっ!…ごめんなさぃ、ゆるしてくださぃ!!」

「こぉら!お尻」

「...あぁーん!!!」


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思い出されるフリーレンの膝の上。
あの時はとても広くて、痛くて、怖かった。

それが反転した現在の体格差。
今では師匠のだらしなさを咎めるのさえ簡単になった。

人間は成長していいよね。と皮肉を言われる。
越した背はフリーレンの体を抑え込むのに役立っている。

「フリーレン様。少しは反省出来ましたか?」

戦場では最強の魔法使いも一度膝に抑えられたら普通の子。
懲らしめられるお尻を痛がっては許しを請うどこにでもいる女の子になっている。

指を揃えたフェルンの掌で丁寧に50も打てばフリーレンは次第に弱って半泣きになる。

それを基準に、罪の重さによってはわんわん泣かせるか、ぎゃんぎゃん泣かせるか。

それだけなのだ。

「私の手も痛いんですからね」

「...じゃあしなきゃいいのに」

「フリーレン様?」

「...」

「フリィレン様?」

「...ごめんて」

じっとり向けられる視線の圧に負け、フリーレンはしゅんと謝る。

時計を見たフェルンはコーナータイム終了までまだ後5分あると知り、さっきのフリーレンの反省具合を思い返した。

今日のお尻ペンペンは結構暴れられた。
ひねっては戻し、ひねっては戻し、痛い痛いと呻きながら膝の上でばたついていた師の姿。

腰は抑えてバチッ。バチッ。バチンッ。
キツくキツくお尻をペンペン。

まだ終わっても無いのに余りの痛さに勝手に終わりにされてしまった所に反省点があるのは否めない。

お仕置きする方される方は今や完全に逆転しているようだ。

「あの。私前々から思ってたんですけど」

コーナータイムも終盤に差し掛かるフリーレン。
フェルンはこの時間が気まずいから、手持ち無沙汰なのか、適当な話題で話し掛けた。

「フリーレン様はどうして下の毛が生えていないのですか?」

「下の毛って?」

フリーレンは体ごと振り返った。

「あの。...せ、性器の事です...」

「俗語で言うと?」

「え?.…..あっ!おまんk、...ちょっと?!フリーレン様!!怒りますよ?」

フリーレンは笑っていた。
フェルンは顔が赤らんだ。

「簡単な事だよ、フェルン。エルフは人間の十倍以上生きる分、繁殖能力が著しく低くてね。人間のしたがる恋愛やらセックスやらはしないんだ。だから生殖器を守る必要性はそれほど高くない。ゆえの結果かな」

「ふーん」

フェルンはフリーレンの股下を注視する。
お尻を突き出さない限り割れ目の下なんて見えないけれど、お尻を叩いてる時にバタつけば直ぐに見える、白く綺麗なおまんこだ。

「じゃあフェルンはどうなの?たくさん生えてるの」

「は、、生えてますよ!!ぁ...」

フェルンの顔がボワッと火照った。
二度同じ様な誘導尋問に引っかかる。
不意をつかれたとはいえ、自分から身体のことを教えてしまうだなんて。。

にたっと笑うフリーレンが憎たらしい。

恥ずかしさと相まってフェルンの頬はぷくっと膨らんだ。

「ま、私が寝てるふりとも知らず、隣で夜な夜なひとり遊びしてるもんね」

お尻を叩かれた恨みか仕返しか、フリーレンはフェルンを煽る、いじる、面白がる。

「なっ何でそれを...っ?!」

フェルンは思わず立ち上がる。
顔はカッと赤くなった。

「思い浮かべる相手はシュタルクだよね。私、実はみてるんだ、フェルンの想像している頭の中。ぎゅっと抱き締められるシーンとか、頭撫でて貰ってるシーンとか、はだかのまま舐...」

「あーー゛!それ以上はだめぇーーー!!」

フェルンの顔は真っ赤っか。
恥ずかしくて頭から湯気が出ている。

「あーぁ。感知魔法仕掛けられてる事。あんな間近でも気付けないなんて。そんなに一生懸命なんだ。フェルンもちゃんと動物なんだね」

「ど、どういう意味ですか!」

「ふふ。“えっち”ってこと」

「もおーーーぉ!怒りましたよ!!!」

真っ赤な顔のままフェルンはズカズカとフリーレンに近づく。

フェルンの怒りは心頭。
フリーレンの元にたどり着くや否やフリーレンを小脇に抱えた。

「フ・リ・ィ・レ・ン・様ぁ???」

「うわぁ!やめてよフェルン!私は地に足が着いてないと落ち着かないんだ!」

「空飛ぶ魔法使いが何言ってるんですか。これは反省タイムを怠けた罰です!」

「もう10分経ったじゃん!!」

「ぎりぎり経ってません」

お尻を前に小脇に抱えられたフリーレン。
手脚はジタバタと一周巻かれ、フェルンの腕の中で焦り慌てふためく。

しかしどんなに暴れても蹴るのは空気。

フェルンの右手はすぐに降ってきた。

ばちぃん!ばちぃんッ!!

「わっフェルンごめんって!痛ッ!!...もうお尻はやめてよぉ...」

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